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短編集「夢」

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短編集「夢」

9 - 第9話 新サービス・あなたの夢を正夢に!②

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2025年06月09日

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~次の日~


 プランの実行日、私はチームのメンバーを集めてこう伝えていた。


「今回の仕事はかなり大変なものとなるだろう。だがこのサービスは我が社の未来を担っている重要なものと理解していただきたい。必ずクライアントに満足していただけるよう、チーム一同で全力を尽くそう!」 


まぁ、このサービスに配属された彼らは正直運が悪い。そんな彼らを勇気づけるための言葉である。

私たちは昨日の段階で、今日のプランに必要なサービスを提供している企業や人材と連絡をとっていた。

朝ごはんを用意する調理師。リムジンサービスを行なっている企業。クライアントが勤めている会社。クライアントが夕食を取る高級レストラン。

彼らの協力があってこそ今回のプランは実現するのだ。


そして今回のプランにおいて一番重要なのは設楽桜の存在である。昨日、彼女に協力を依頼するためにクライアントが勤めている会社で呼び出し、交渉は三原くんと私で行った。

依頼内容を伝えると彼女はこう言った。

「その、私彼氏がいて、このことを知ったらどうなるか…」

私はあらかじめ用意していた依頼料25万円を彼女に見せ、こう言った。

「こちら依頼料の25万円になります。心配なのは承知しておりますが大丈夫です。一日間だけ島田様にご好意があるよう演じて頂けば良いですから。その後のことは我々にお任せください。我々MDC社はアフターサービスも充実している企業ですので。」

25万を見た彼女は依頼を引き受けてくれた。帰り道三原くんは私にこう言った。


「結局金なんですね。25万はでかいですよ。」

私はこう返した。

「お金があれば好きなことができるからな。我々が行なっているサービスだって、クライアントからの支払いがあってこそ成り立つものだ。」

まぁ、お金さえあれば夢を叶えるなんて容易いものだ。無論、我々一般人には限度があるが。


 現在、朝の5時。あらかじめクライアントから部屋の鍵は預かっているので、調理師に鍵を渡せば良いのだが、まだ来ていない。

するとチームの一人である真田くんが慌てた様子でやってきてこう言った。

「主任大変です!調理師の田中さんが急遽体調不良で来れないとの連絡がありました!」

なんだって?!まずいな。今から代わりの調理師を呼ぶのは時間がないし、誰か代わりに朝食を作らなければならない。

私が慌てた表情をしていると、三原くんがこう言った。

「僕が代わりに作りますよ!こう見えて料理得意なんです。」

正直心配だが、仕方がない。三原くんに頼むとしよう。私は三原くんと一緒に材料を持って、クライアントを起こさないよう静かに部屋へと入った。そこから三原くんだけ調理場に立ち、私は散らかったテーブルの上を片付けながら、遠目から三原くんを見守ることにした。 


調理を始めた三原くんだったが、確かに手際がよく、音もあまり出していない。彼にこんな一面があったとは、感心した。まさか初っ端から新人が頼りになるなんてな。良い後輩に恵まれたものである。

その後三原くんは、クライアントの起床時間である6時までに調理した朝食をきれいにテーブルへと並べ終わった。私は部屋を出た後、三原くんにこう言った。

「いや、感心したよ。やる時はやれる男だったんだね。三原くん!」

三原くんは「大したことないですよ」と照れながら返した。6時になると部屋から目覚まし時計の音が聞こえてきた。

クライアントが起きたのを確認すると、私たちは手配していたアパートの駐車場に停めているリムジンの元へと向かった。

 

 リムジンを運転するのは、チームの一人である畠山くんだ。彼は車好きで運転が上手いらしいので信頼できる。彼がクライアントをリムジンで会社に送っている間に、私達は別の車でクライアントの会社に向かっていた。すると畠山くんから連絡が来た。

「やばいです!多分タイヤがパンクしました!スペアはありますが一人でやってたら出勤時間まで間に合わないかもしれないです!至急応援頼みます!」

なんだって?!今回はトラブルが起きすぎだ!

仕方なく私達はリムジンの元へと向かった。リムジンへ着くと畠山くんがスペアのタイヤを取り出していた。クライアントはどこにいる?私が辺りを見回していると畠山くんがこう言った。

「島田さんは寝ています。多分パンクしたことにも気づいてないかと。」

不幸中の幸いというわけだ。畠山くんの運転が丁寧な証拠だろう。

私達は急いでタイヤを取り替えた。そして取り替えが終わるとすぐにリムジンを出発させた。裏道を通れば、なんとか出勤時間には間に合いそうだ。

 

 その後なんとかクライアントを出勤時間内に届け終わり、私達は会社の外で待機していた。この時間は設楽さん次第なので、正直私達はすることがない。見張りをチームの一人である城戸くんに任せて私達は彼らがレストランに向かうまで待機していた。

昼時になり、昼食を取ろうと話していると、城戸くんから連絡が来た。

「今、会社の受付付近にいるのですが、ちょっとトラブルが起きてるようで。男が受付係に桜(設楽)に会わせろって言ってます。」

誰だその男は。私は詳細を知るために設楽さんに電話をかけた。すると設楽さんはこう言った。

「多分私の彼氏の翔太くんだと思います。昨日メールで今日のことを伝えたのですが。彼、束縛するタイプなんで、許せないんだと思います。」

全く、今回の仕事は大変すぎる。私が受付に行って直接彼に話をするしかないだろう。

私が受付に行くと、確かに男が受付と揉めている。私は彼に近づきこう言った。

「すみません。私MDC社の清水と申します。設楽桜さんのことについて何かご相談があるのでしょうか。」

彼はこう返す。

「あんた例のサービスのやつか?相談も何も早くサービスを中止させろ!桜が他の男とキスをするなんて許せるはずがねぇ!」

まいったな。どうにかして彼を説得しなければならないのだが。このままではこの会社にも迷惑がかかる。そうなれば我が社のサービスの評判も…。

私が悩んでいると、後ろから城戸くんが近づいてきた。そして私にこう言った。

「この男を追い返せばいいってことですよね?俺に任せてください。」

城戸くんは設楽さんの彼氏に近づいていき、こう言った。

「別に設楽様は島田様にご好意がある訳ではありません。設楽様にはあくまで今日だけプラン通りに動いてもらうだけです。それはあなたもご存知ですよね。どうかお引き取り願います。」

彼はこう返す。

「知るかそんなこと。俺がダメだと言ったらダメなんだ。そもそもあんたらがこんなサービスやってっからこうなってんだろ?あんたらに腹が立ってきたわ!」

設楽さんの彼氏はこう言うと、城戸くんに殴りかかった。すると城戸くんは彼のパンチを交わしつつ腕を取り、彼を背負い投げで投げ飛ばした。

そういえば城戸くんは柔道の有段者だったな。城戸くんは投げられて呆然としている彼にこう言った。

「先に手を出したのはあなたです。さぁ、お引き取りください。」

彼は起き上がると「覚えてやがれ!」と言いながら去っていった。私は城戸くんに「ナイスだ!」と言うと、城戸くんは「柔道頑張ってて良かったです。」と返してくれた。トラブル続きの今回だが、その分部下にも恵まれているらしい。

 

 夜になり、クライアントが設楽さんとレストランで夕食をする時間となった。レストランは会社の近くにあるビルの最上階にある高級な店を予約している。

私達もレストランへ移動して、夕食をとっている二人を見守っていた。クライアントは調子に乗っているのか、今回のプランより高いコースを選んでいる。そして高いワインを開けるのを見た三原くんが私にこう聞いてきた。


「その、今回のプランってどのくらいクライアントは払わないといけないんですか?今開けたワイン、かなり高そうですけど。」

私はこう返す。

「確定の請求は後日だからな。クライアントもまだ一日のプランに幾らかかっているかは分かってないかもしれないが。まぁ、ざっと190万くらいかな。」

三原くんは驚いた表情をし、こう言った。

「ひゃっ、ひゃくきゅうじゅうまん?!そんな金額彼に払えるんですか?」

彼の問いにこう返す。

「まぁ、分割払いOKだし払えるだろう。これでも今日のプランならかなり抑えてるほうだよ。」


当サービスの注意書きにはちゃんと書いてある。”前日にご案内する金額はあくまで目安ですので、後日の請求金額が増額する可能性があります。あらかじめご理解をよろしくお願い致します。”とね。


彼は食事の最後に顔を赤らめながら笑顔で設楽さんにキスをした。その光景を見ながら、私は三原くんにこう言った。

「見なよ。あのクライアントの幸せな表情を。私達も頑張った甲斐があったと思わないか?この仕事も悪い物ではないだろう?」

三原くんは笑顔で「確かに良い仕事ですね。」と返した。


クライアントは、この夢にまで見た一日間を、180万というお金と私達の仕事によって実現させたのだ。無論、明日からはこれまでの現実に戻る訳だが。最後にクライアントはこう叫んでいた。


「正夢、サイコー!!!」





side aに続く…

 


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