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短編集「夢」

10 - 第10話 新サービス・あなたの夢を正夢に!③

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2025年06月10日

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side a  島田隆(27)・会社員

 

“テレビの前のそこのあなた!こんなことを考えたことはありませんか?


「今朝見た夢が現実に起こればいいのに」

「現実の世界より、夢の世界に居たい」

そんなあなたに、MDC社が提供する新サービス![あなたの夢を正夢に!]


利用は簡単!我が社が提供するヘッドギアをつけて夢を見るだけ!

お客様が現実にしたいと思った夢がありましたら、その夢を我が社の社員が現実で再現します!


今ならなんと、寝る前に飲んだら幸せな夢を見ることができるサプリメントもお付けします!


ぜひ新サービス・あなたの夢を正夢に!をご利用ください!

*続けてのご利用は一日間に限ります。”


 

 今朝入社前、朝食の菓子パンを食べつつテレビをつけると、こんなcmをやっていた。最近はこんなサービスもあるのか。正夢にしたいような楽しい夢なんてしばらく見てないが。 

てか、もう出ないと。はぁ、毎日朝から満員電車に乗るの嫌だな。

 

 会社に着くと俺のデスクに山積みの資料が積まれていた。俺が呆気に取られていると部長が近づいてきてこう言った。

「いやいや、島田くん仕事速いからさ。後輩たちの分もやってあげてよ。今月ボーナスも出るしさ、頑張ってくれ!」

いやいや、何で俺が後輩の分までやらんといけないわけ?意味がわからないんだが。後輩たちの仕事減らしたいんならあんたがやれよ! 

って口に出して言えない俺は渋々仕事を始めようとした時、後ろから話しかけれた。

「部長も意地悪だよねー。島田くんだって自分の仕事があるってのに。私手伝ってあげようか?」


正直、この会社に入ってからストレスは多い。だが一つだけこの会社に入って良かったと思えることがある。それは同期の設楽桜の存在だ。

設楽さんは女優をやってると言われても納得するぐらい可愛い。それでもって性格もいい。俺みたいな地味男でも仲良く話しかけてくれるもんだから、俺に気があるのかと錯覚してしまうほどだ。

噂によれば彼氏はいないらしい。だから俺は彼女のことを密かに狙っているのだが、俺には彼女を遊びに誘うような勇気は無い。俺は彼女の気遣いにこう返す。

「設楽さんだって自分の仕事あるでしょう?俺頑張るから大丈夫。ありがとね。」


こう言うと彼女は「無理はしないでね」と言い、自分のデスクに戻っていった。はぁ、いい子だなほんとに。俺なんかには勿体無いよ。そう思いながら山積みの仕事をやり始めた。

 


 仕事を終え一人暮らしのアパートに帰宅すると、散らかったテーブルにストロングチューハイを置いた。

田舎から上京してはや6年。毎日学校から帰宅したら夕食を作って待ってくれていた母の偉大さを感じながら、コンビニで買った弁当とおつまみを食べ始めた。


俺はこれからどうすれば幸せな人生を歩めるのだろう?最近不安でいっぱいである。やりたいことも見つからない。せめて寝ている時ぐらい幸せな夢を見れたらな。それでそんな幸せな夢が現実になったなら。

そう言えば今日の朝に見たcm、本当に見た夢を現実にしてくれるのだろうか。何だか急に興味が湧いてきた。

ヘッドギアの料金だけで30万と結構するが、お金はたくさん余ってるし、憂鬱な気分を変えるために利用してみようかな。

俺はネットでサービスのことを調べ、電話で注文することにした。

 


~数日後~


 今日もキツい仕事を終え帰宅すると、玄関前に荷物が届いていた。例のヤツである。

包装された箱を開けると、ヘッドギアとサービス品のサプリメント、そして説明書が出てきた。このヘッドギアをつけて夢を見ることによって、サービスを提供している会社に夢のデータが行き、こちらが夢を現実にしたいと頼めば、一日の準備期間の後、次の日の一日間の間サービスが受けれるというシステムらしい。

そしてこの同封されていたサプリメントを飲んでから寝れば、良い夢が見れるようだ。説明書には他にも注意書きなどがいろいろ書かれている様だが、疲れているし明日でいいだろう。

俺はサプリメントを飲み、ヘッドギアをつけた状態でベッドに横たわった。 


 〜〜〜


 こんな夢を見た。朝起きると朝食が準備されていた。

バターが塗られたパンに目玉焼きとサラダと味噌汁。いつも菓子パンや野菜ジュースで朝を済ましている俺にとっては豪華すぎる朝食である。 


アパートを出るとリムジンが止まっており、俺はそのリムジンに乗り込み会社に向かう。会社に着くと部長が俺にこう言った。

「今日は島田くんの仕事は俺がやるから、後輩の指導よろしくね!」

部長に言われた通り後輩たちに仕事を教えていると、設楽さんが俺に近づいてきてこう言った。

「島田さんさすが!後輩たちも島田さんみたいな優秀な先輩に教えてもらえてラッキーだね!」

俺は照れながら「大したことじゃ無いよ」と返し、後輩たちの指導を続けた。

仕事が終わり、ジュースを買おうと自販機に行くとそこには設楽さんがおり、俺と目が合うとこう言った。

「その、私たち同期だし、島田くんのこともっと知りたいというか。もっと仲良くなりたいというか。」

俺は彼女に「夜一緒に食事でもどう?」と誘い、ビルの最上階にある高級レストランへ向かった。

普段なら食べれそうも無い高級料理を設楽さんと楽しみ、高級ワインを二人で開けたところで、設楽さんはこう言った。

「私、実は島田くんのこと気になってたの。島田くんが良ければ私と付き合って欲しいなって。」

俺は「俺なんかで良ければ」と返し、美しい夜景をバックに彼女にキスをする。


〜〜〜

 

 というところで目が覚めた。サプリメントの効果なのか、とても素晴らしい夢だった。まるで俺の夢や願望を全て叶えたような。

これを本当に正夢にしてもらえるというのか?俺は早速、ヘッドギアのデータを企業に送った。


明日が楽しみだ。

 


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