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部屋に戻ると、アリサが腕を組みむくれていた。


「あんた、なにかいうことあるでしょ?」


こういう時、どのような反応を返すのが正解なのだろう?

まったく心当たりがない俺は首を傾げる。


「あんたが綺麗な女の子と酒場に入ってくのをみたって聞いたんだからね」


「ああ、そのことか!」


俺は何故アリサが不機嫌なのか理由を知ると、


「実はその子なんだけど――」


説明を始めた。







「なるほど、他国からの勧誘ね……」


サリナから聞いた話を伝えると、アリサは難しい表情を浮かべた。


「確かに来ていてもおかしくないんだけど、思っているより早いわね。偽の情報も流しているのに……」


「そうなのか?」


「ええ、国の連中も無理やりミナトに契約を迫るようなことはできないからね。他国に取られないように情報操作には協力的なのよ」


神殿や貴族と仲違いをしなければ、本来ならこの国に所属していた可能性もあった。だが、この国の腐の部分を見せられてしまい、終身雇用を蹴ったので他国の人間が続々訪れているのだという。

普通なら、あっという間に他国の間者が接触してきてもおかしくないのだが、国が情報操作や偽の人物を放っているらしく、今のところ俺に接触してきたのはサリナだけということらしい。


「にしても、ミナトが色々情報を引き出したのは良かったけど、それって結果論よね?」


アリサは辛辣な目で俺を見てくる。


「そ、そうだけどさ……。流石に野宿した上、重労働をして金ももらえず飯を抜なかきゃいけないなんて言われたら放っておけないだろ!」


飢えたサリナがお腹を抱えて路地裏に座り込む姿を想像しただけで罪悪感が湧いてくる。自分が満ち足りているのだから、その程度の施しはしても良かっただろう。


「でも……その娘、可愛かったんでしょう?」


俺が説明をするも、アリサは口元をすぼめると、いじけたような態度をとった。


「そりゃまあ、召喚者の娘ということらしいから見た目まんま日本人だし、大和撫子みたいな守りたくなる容姿だったな。でも、俺が一番大事に思っているのはアリサだから」


この世界で何より優先するのは彼女一人。それが根本にあるからこそ、他の女性にも優しく接することができるのだ。

アリサは俺の目を覗き込み、言葉に嘘がないことを確認する。


おずおずと近寄ってきて、裾を掴むと。


「ごめんね、面倒くさい女で」


瞳を潤ませ、上目遣いをすると謝罪を口にした。


「いいって、俺はどんなアリサも好きだからさ」


俺が笑いかけると、アリサはポッと顔を赤らめる。そう、アリサから向けられるならどんな感情も好ましい。

嫉妬してくれているということは愛されているということなので、俺は彼女を抱きしめ喜びを表現した。


「それで、今後はどうするつもりなの?」


俺の腕の中で甘えると、アリサは腕に手を乗せ聞いてくる。


「建設現場の仕事はまだ一週間あるからな、流石に途中で放棄するわけにもいかないし……」


アリサから頼まれて引き受けているからには彼女のメンツが掛かっているので、途中で止めることは考えていない。


「そっちはまあ、偽名だし大丈夫なんじゃないかな? その娘も気付いてないんでしょう?」


「まあな、たとえ本名でもあれは気付かないかもしれないぞ」


よく考えれば目の前で魔法まで使っているのだ。噂の凄腕召喚者がいると情報を得てきているのなら、多少は疑いそうなもの。それを完全にスルーしている時点でアホの娘ということが確定している。


「あまり、その娘と仲良くしないでよ?」


アリサは顔を俺の方に向け、唇を重ねてきた。俺は彼女のしたいようにさせてやる。

貪るように唇を舐め、舌を絡めてくる。まるで不安を押し殺したいかのように映った。


「ぷはっ……はぁはぁ」


一端口を離し、正面から抱き着かれふたたび口を塞がれる。

アリサの目がとろんと蕩け、胸を近付けスリスリと上下に動かす。


「ミナト……して欲しいの」


アリサのおねだりには脳を溶かす成分が含まれているのだろう。

俺は彼女をお姫様抱っこすると、


「まったく……人を挑発するのが上手いやつだ」


彼女をベッドに組み敷くのだった。

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