テラーノベル
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健吾と理紗子が乗った車は、まずはホテルから近い御神崎灯台、そして琉球観音埼灯台を目指した。
両側に草木が生い茂った道をしばらく進んで行くと、突然景色が開けて牧草地が現れた。
空はどこまでも青く広く続き遮るものは何もない。
その澄み切った青空は、見る者にパワーを与えてくれるから不思議だ。
しばらく進むと右手に海見えてきた。
そして真っ直ぐ10分ほど進んだ所で健吾は車の速度を落とすと、ピンク色の建物の前で車を停めた。
「ここにのジェラートは美味いんだよ。パイナップルのもあるんだ。食べるか?」
「食べる!」
間髪入れずに理紗子は答えた。パイナップルと聞いたら食べるに決まっている。
その店では石垣島産のフルーツを使いフレッシュジュースやジェラートを提供していた。
理紗子は迷わずパインを、そして健吾はマンゴーのジェラードを選んだ。
二人は車に戻ってから早速ジェラートを食べてみる。
すると食べた瞬間理紗子はたまらないといった表情をして言った。
「美味しいっ! パインそのまんまって感じ!」
それを聞いた健吾がふいに理紗子のジェラードを一口かすめ取っていく。
「ずるーい! 私にもマンゴー頂戴っ!」
理紗子があまりにも悔しそうに言ったので、健吾は笑いながらマンゴーのジェラートを差し出した。
マンゴー味を食べた瞬間、理紗子はほっぺたが落ちそうと言って嬉しそうに笑った。
その後、灯台を目指してドライブを再開する。
灯台に近づくにつれ緩い上り坂が続いた。
その道をひたすら真っ直ぐ進んで行くと、道の突き当りに灯台が見えてきた。
車を駐車場へ停めると、二人はすぐに灯台の傍まで歩いて行った。
そして脇にある小さな階段を上り始める。
灯台からの景色は絶景だった。
灯台から見下ろした海は、入江近くは澄んだエメラルドグリーン、そしてその先は深い青色に染まっている。
「なんて深いブルーなの! とても美しいわ」
理紗子は感嘆の声を上げると、スマホを取り出して写真を撮り始めた。
「ここは春になるとテッポウユリが咲くらしいよ。夕日の絶景スポットでも有名みたいだね」
「石垣島は夕日が綺麗なスポットがあちこちにあるから贅沢ね」
理紗子は羨ましそうに微笑む。
その穏やかな笑顔に健吾は思わず見とれていた。
景色を堪能した後、理紗子はバッグから手帳を取り出すとなにやらメモを取り始める。
きっと小説に必要な情報を書き留めているのだろう。
理紗子は今までこうやって小説を作って来たのだ。
取材先で情報を集めそれをメモに取る。そしてその資料を元にこれまでいくつもの小説を書き上げてきたのだ。
健吾は今、理紗子の恋愛小説が生まれるまでの舞台裏の一部分を見る事が出来て感動していた。
彼女の熱狂的なファンでさえも知らない自分だけが知る彼女の一コマ…そう思うと健吾は大きな充足感に満たされた。
その後二人は琉球観音埼灯台へ移動した。
こちらの灯台には観光客の姿はほとんどなかった。
灯台の周りには草木が生い茂り海を臨む事はできない。
「ここは観光スポットにはあまり載っていない灯台なんだけど一度来てみたかったの。こういう渋ーい場所ほど小説の舞台にしたくなっちゃうのよねぇ」
理紗子はそう呟くと更に続けた。
「確か東屋が近くにあったはず。どこだろう?」
「こっちにあるみたいだよ」
健吾が示した場所には赤瓦の屋根にシーサーが乗った沖縄らしい東屋があった。
そこからは海が一望出来た。絶景だ。
理紗子はまたスマホで写真を撮り始める。
東屋の上にちょこんと乗っている可愛らしいシーサーも、もちろんしっかり写真に収めた。
灯台の観光が終わると、次に二人はみんさー工芸館を目指した。
工芸館は市街地の中にあった。
二人は車を降りると、まずは工芸館の展示スペースへ行ってみた。
みんさー織というとバッグや小物類のイメージしかなかったが、展示スペースにはパリコレにも出展したというミンサー織りのロングドレスが展示されていた。
二人は展示物を興味深げに見て回った後、工房で織物体験にチャレンジする事にした。
健吾は「俺でも作れるのかな?」と若干不安そうだったが、いざ織り始めるとその規則正しい動作にすっかりはまってしまったようだ。
指導してくれる年配の女性も健吾の事をまるで息子のように扱い、
「ほらほら上手上手、お兄ちゃんやるねぇ」
などとおだてられ健吾もまんざらではない様子だった。
理紗子も以前からやってみたかった織物を体験出来たのでかなり満足気な様子だった。
健吾と理紗子はそれぞれ短時間で正方形のコースターを完成させた。
二人はそのコースターを旅の記念に交換する事にした。
健吾と理紗子はそれぞれ短時間で正方形のコースターを完成させた。
二人はそのコースターを旅の記念に交換する事にした。
理紗子は健吾が織ったコースターを見て、これを使う度にきっと今日の事を思い出すのかもしれない…そんな風に思った。
コメント
2件
とっても楽しそうで自然な恋人同士の2人💞 風景が見えるような細かい描写は理沙ちゃんの小説にも活かされるんだろうな✨ お手製のそれぞれのコースターを交換して石垣島の旅の記念になったね😊👍❤️
こちらまで楽しいデート気分になっちゃう( *¯ 罒¯*)イー( *¯ ロ¯*)ナー 2人はとっても自然で、健吾の理紗子ちゃんへの気持ちが溢れてる〜🫰🏻🤍 ̖́- 交換したコースター記念第1号だ✨