テラーノベル
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一方その頃、瑠奈は夕食後、森をひとりで歩いていた。
さきほど流星に怒鳴ってしまったことが、自分でも信じられず、胸の奥がざわついていた。
(どうしてあんなこと言っちゃったんだろう……)
理由も分からないまま、ただ悶々と歩き続ける。
森の奥の開けた場所に出ると、瑠奈はふと立ち止まり、夜空を見上げた。
(……すごい! 東京の空と全然違う……)
降るような星々が、心のざわつきを少しずつ溶かしていく。
自然が作り出す圧倒的な美しさに触れ、瑠奈の表情も次第に柔らかくなっていった。
木々の香りを胸いっぱいに吸い込み、ようやく深く息ができる気がした。
そのとき、背後に気配を感じた。
振り返ると、ロッジでアルバイトをしている男子学生が立っていた。
「こんばんは。たしか、瑠奈ちゃん……だったよね?」
「……どうも」
「こんなところで一人で何してるの?」
「別に……」
「せっかく会ったんだし、俺とドライブでもしない?」
「ドライブ?」
「そう。俺、車で来てるんだ」
男子学生はポケットから車のキーを取り出し、にやりと笑った。
その顔を見た瞬間、瑠奈の背筋に冷たいものが走る。
本能が告げていたーーついて行ってはいけない、と。
「いえ、結構です」
きっぱり断ったが、男は気にした様子もなく距離を詰めてくる。
「ちょっとくらい、いいじゃん。君を見たときから、二人で話したいと思ってたんだ」
そう言うと、瑠奈の手を掴んで引き寄せた。
その瞬間、ふわりとアルコールの匂いが漂う。
(……お酒飲んでる?)
飲酒運転のドライブなど論外だ。
いや、そもそも『ドライブ』というのは嘘で、ただ車に連れ込もうとしているだけかもしれない。
そう考えた瞬間、瑠奈の体を恐怖が襲った。
「ちょっと、離してください」
「いいじゃん、少しだけだから。さ、行こうぜ」
「いやっ、やめて! 離して!」
「大丈夫、大丈夫。楽しいよ、きっと」
「いやっ! 離してっ!」
揉み合いになったそのとき、背後から鋭い声が響いた。
「瑠奈の手を離してください!」
二人が振り返ると、流星が険しい表情で立っていた。
「はっ? なんだお前」
「離せって言ってるんです」
「俺たちは今からドライブに行くんだよ。お前の指図なんて受けねーから」
その言葉に、瑠奈は大きな声で叫んだ。
「行かないわよ、ドライブなんて!」
「嘘つくなよ。行くって言ったじゃん」
「そんなこと、ひとことも言ってません! それに、あなたお酒飲んでるじゃない」
瑠奈の言葉を聞き、流星は男子学生に向かって低い声で言った。
「手を離してください」
「なんだと?」
「俺は瑠奈と、この森で会う約束をしていたんです。だから先約は俺です」
男は驚いた顔をしたが、すぐに舌打ちし、面倒くさそうに瑠奈の手を放した。
自由になった瑠奈は、流星の背後へ逃げ込む。
「受験生が森でいちゃついてんじゃねぇよ! けっ! 盛りのついた犬か!」
吐き捨てるように言い残し、男はアパートの方へ戻っていった。
コメント
5件
瑠奈ちゃん、危なかったね!!😱😱 流星君が間に合って良かった…😌💓
盛りのついた犬はお前だよ💢💢 酒飲んで運転なんてほざくな❗️❗️ 流星くん、瑠奈ちゃん救出できて良かった✨ 危ない目に遭ったけどこれで2人の距離が急接近👩❤️👩👍🥰
犬はお前だろ、酔っぱらい。 犬のおまわりさんに連れて行かれてしまえ。 流星くん、ヒーローの子供は、やっぱりヒーローなのね(*¯𖥦¯*)