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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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情報?どこからそんな……。


「ねぇ。今日の話は本当?私がカフェメニューの監修をするって。説明なんて全く受けてないんだけど!」


「ホント。これからしばらく俺の会社が経営しているカフェで働いてもらう。新メニューに悩んでるって話は事実だしな。それに……。これで出かける理由ができただろ?」


「えっ?」


「これで俺が美月を呼び出しても、不自然ではないし……。さっき、連絡先も旦那の前で正式に交換しただろ」

彼の口角が少し上がった。

悪い顔。確かに仕事に行くって家を出ても、特別不自然じゃなきゃ怪しまれることもない。


「監修と偽って、また私を呼び出すの?」


「それが一番の目的だけど。監修はあくまでその次」

彼の返事は即答だった。


彼がチラッと時計を見た。

「もうこんな時間だな。今日は疲れただろ?早く休めよ」

そう言って玄関に向かった。


「待って!」

私は彼の後を追う。

すると彼が振り返り、私の両肩を掴んだ。


「明日の十六時。俺のアパートに来て。久し振りなんだ。覚悟しとけよ?」

唇が耳に当たるんじゃないかと思うような距離で囁かれた。


「えっ!ちょっと!」


「じゃあ、おやすみ」

玄関の扉がパタンと閉まった。


「なによ、それ……」


寝室に戻り、孝介の様子を確認する。

いびきをかいて寝ていた。


急展開すぎて、考えることが多すぎて……。頭がパンクしそう。

加賀宮さんと出逢ってから、そんなことが増えた。


シャワーを浴びた後、リビングのソファで一人今日の出来事を振り返る。

加賀宮さんって何物なの?

やっぱり九条グループがお願いするほどの会社の社長だっていうことがわかった。それ以外何も……。

孝介の言葉を思い出した。洋服のサブスク、カフェ、BARの経営。

ネットで検索すれば、何か手がかりがあるかもしれない。


私は携帯を取り出し、彼の苗字と孝介が言ったワードを入れ、検索した。


すると――。


「あった!」

思わず声を出してしまった。


「加賀宮……迅《じん》……。代表取締役社長……。会社名は、シリウス」


私は、会社概要を食い入るように見た。

わかったことは、会社《シリウス》のこと。

私が知りたかった彼の情報については、名前くらいしかわからなかった。


「かがみや……。じん。かがみやじん。かがみやじん……」


彼は私を知っている。初対面ではないと言っていた。

小学校や中学校、高校、大学、同級生の名前や何か手がかりはないか一生懸命思い出す。

下の名前を聞いたら、わかると思ったのに。


加賀宮迅《かがみやじん》。


彼は一体、誰なんだろう――。


気付いたら、ソファで寝ていた。


「寝ちゃったんだ」

ベッドで寝るより、よく眠れた気がする。


自分の身なりを整えていた時だった。

孝介の携帯のアラームが鳴っている。

寝室を見に行くと、彼が上半身を起こし、目を擦っていた。


「おはよう。朝食はどうしますか?」


朝食って言っても、美和さんが作ってくれたものは何もないけれど。


「……。朝食は要らない。俺、昨日……」

昨日のことを思い出したみたいだった。


「おい、加賀宮さんは何か言ってたか?お前はなんで起こさないんだよ!」


朝から怒鳴られ、その声にビクっと反応してしまう。


「加賀宮さんは、あの後すぐ帰りました。特に何も言ってませんでしたけど。何度か起こしたけど、あなたが起きなくて……」


私の言葉を聞き、彼はバッと布団を跳ね除けた。

ヤバい、また殴られる。

身体が萎縮してしまったが――。


孝介は携帯を持ち、誰かに電話をかけている。

たぶん相手は……。


「あっ。おはよう。父さんに聞いてほしいことがあるんだ。昨日、加賀宮さんと《《仲良く》》なってさ、実は美月を……」


昨日の出来事を父に報告していた。

仲良くなったって、変なところでプラス思考なんだから。

お義父さんは、何て言うんだろう。


私はリビングに戻ったが、寝室から聞こえてくる孝介の声はとても明るく、笑っている。


「うん!これで会社もまた大きくなる……!俺、頑張るからさ?とりあえず、父さんに報告。今日、加賀宮さんと会うんでしょ?俺のこともよろしく伝えておいて」


声が大きくてほとんど聞こえていた。お義父さんの反応も良いみたいだけど……。


電話が終わった後、彼は私には何も言わず、シャワーを浴びるため浴室へと向かった。


あっ。今日、加賀宮さんに呼び出されていること、伝えなきゃ。もしかしたら孝介より帰るのが遅くなるかもしれないし。加賀宮さんの自宅に呼び出しとは言えないけど、カフェメニューのことで……と伝えれば良いよね。


孝介が出勤の準備を終え、カバンを持った。


「あのっ」

私から話しかけようとしたが

「おい。絶対に失敗するんじゃないぞ。たまたま加賀宮さんに気に入られたからって、あんな粗末な料理、来客に出すなよ。恥ずかしい。彩りも悪かったし。まぁ、今回のことは父さんも喜んでくれたし、プラスに動いたけど。今度からあんな出しゃばったマネするなよ。それと、加賀宮さんの会社に迷惑だけはかけるな?俺の評判まで落ちる。今日は帰らない。父さんと今後のことについて話し合うから、実家に泊まる」


長い嫌みと脅しを交えた言葉を私に伝え、出て行こうとした。

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