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Ren .
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「選ばれてんだよ」
その言葉が残る。
笑いはすぐに消えない。
むしろ、形を変えて続く。
「じゃあさ」
誰かが言う。
「選ばれてる自覚あるならさ」
間を置く。
「それっぽくしろよ」
意味は曖昧なまま落ちる。
だが周りは分かっている。
「どういうことか分かる?」
視線が集まる。
逃げ場がない。
遥は何も言わない。
「分かんねえの?」
肩を押される。
よろける。
「分かるようにしてやるよ」
腕を掴まれる。
強く。
そのまま引かれる。
机の間を通される。
周りが道を空ける。
だが逃がすためじゃない。
前に出すため。
「ほら」
教室の前。
黒板の前。
立たされる。
背中に視線が刺さる。
「ここでいいじゃん」
誰かが言う。
「見えるし」
笑い。
逃げ場が完全に消える。
「向け」
顎を掴まれる。
無理やり正面を向かされる。
教室全体。
全員の視線。
「なあ」
前にいるやつが言う。
「さっきの続きな」
距離が詰まる。
「なんで嫌われてるか」
また戻される。
「もう一回言えよ」
逃げ場がない。
遥は口を開く。
声が出ない。
「ほら」
軽く叩かれる。
頬。
「聞こえねえ」
圧がかかる。
喉が動く。
「……遅いから」
出る。
小さく。
「あと?」
すぐに続く。
「ズレてるから」
出す。
「あと?」
止められない。
「……邪魔になるから」
言い切る。
間。
そのあと、笑いが広がる。
「それだけ?」
誰かが言う。
「浅くね?」
重なる。
「もっとあるだろ」
詰められる。
答えを引き出す形。
遥は黙る。
頭が回らない。
「なあ」
低い声。
「本音で言えよ」
顔を近づけられる。
「どう思ってんの?」
視線が外れない。
逃げ場がない。
「……」
沈黙。
その瞬間、腹に拳が入る。
息が抜ける。
体が前に折れる。
だが掴まれている。
倒れられない。
「止まんな」
上から落ちる。
「続けろ」
強制される。
遥は息を吸う。
うまく入らない。
それでも出る。
「……怖いからだろ」
漏れる。
一瞬、空気が止まる。
「怖い?」
繰り返される。
「何が?」
詰められる。
「……何しても、文句言われるから」
続く。
止まらない。
「どこにいても、目つけられるから」
呼吸が乱れる。
「避けても、関わっても、どっちでも言われるから」
言葉が出る。
自分で止められない。
「だから」
一拍。
「どうしていいか分かんねえんだよ」
出る。
完全に。
教室が静かになる。
一瞬だけ。
そのあと、歪む。
「はは」
誰かが笑う。
「出た」
軽く言う。
だが目は笑っていない。
「怖いって」
繰り返される。
「かわいそうじゃん」
別の声。
「じゃあさ」
前のやつが言う。
距離が詰まる。
「今、何が怖いの?」
詰められる。
逃げ場がない。
遥は答えない。
「言えよ」
頬を掴まれる。
強く。
「今」
強調される。
喉が動く。
「……ここ」
出る。
小さく。
「何が?」
さらに詰められる。
「……この感じ」
言葉が曖昧になる。
それでも続く。
「囲まれてるの」
息が浅い。
「逃げられないの」
出る。
「全部見られてるの」
最後まで出る。
間。
そのあと、笑いが広がる。
さっきより軽い。
だが冷たい。
「へえ」
誰かが言う。
「ちゃんと分かってんじゃん」
重なる。
「じゃあさ」
続く。
「その状態でどうすんの?」
また戻される。
逃げ道がない。
遥は何も言えない。
言葉が尽きる。
その沈黙に、すぐに手が出る。
頬。
横から。
音が響く。
体が揺れる。
「止まるなって言ってんだろ」
低い声。
「続けろ」
強制される。
遥は息を吸う。
喉が痛い。
それでも出る。
「……やめてほしい」
小さく。
それでもはっきり。
一瞬、空気が止まる。
そのあと、崩れる。
「無理」
即答。
笑い。
「それは無理」
重なる。
「他」
押される。
肩。
逃げ場がない。
「別の答え出せよ」
詰められる。
遥は言葉を探す。
ない。
何を出しても同じになる。
それでも、出る。
「……せめて」
止まりかける。
押される。
「続けろ」
声が落ちる。
「……一人にしてくれ」
出る。
完全に。
教室が静まる。
一瞬だけ。
そのあと、すぐに崩れる。
笑い。
大きく。
「それ一番ダメなやつ」
誰かが言う。
「つまんねえじゃん」
重なる。
「それやったら終わりだろ」
笑い。
逃げ道が潰される。
肩を押される。
バランスが崩れる。
それでも立たされる。
「なあ」
低い声。
「ここで一人になれるわけねえだろ」
言い切られる。
視線が刺さる。
遥は何も言えない。
出した本音が、そのまま潰される。
ここでは、弱音は逃げ道にならない。出した瞬間に、それが一番塞がれる場所になる。どこに逃げたいかを言えば、その場所だけ先に潰されて、残るのは同じ位置だけになる。
コメント
1件
うわ……読んでて息が詰まった。冒頭の「選ばれてんだよ」から始まる、あの空気の描き方がすごく生々しい。教室じゅうがひとつの圧力になっていく感じ。遥が「一人にしてくれ」って出した本音が、即座に「それ一番ダメなやつ」で潰される場面は、読んでるこっちまで逃げ場がなくなるようだった。地の文が最小限で、動作と台詞だけで畳みかける演出がこの閉塞感を完璧に成立させてる。続きが気になる。