テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
448
564,917
Ren .
2,504
「一人にしてくれ」
その言葉のあと、笑いが残る。
すぐに消えない。
形を変えて続く。
「一人にしてくれ、だって」
誰かが繰り返す。
面白がるような声。
「なんで?」
すぐに重なる。
「ばかだから?」
別のやつが言う。
軽く。
だが、そのまま刺さる。
「なあ」
前にいるやつが言う。
距離が詰まる。
「自分で分かってる?」
視線が外れない。
「お前、普通に頭悪いよな」
断定される。
笑いが広がる。
「だからじゃね?」
重なる。
「話通じねえし」
「ズレてるし」
「何回言っても同じだし」
言葉が重なっていく。
逃げ場がない。
遥は何も言わない。
「ほら」
軽く肩を叩かれる。
「否定しろよ」
試すみたいに。
「違うって言えよ」
視線が集まる。
遥は口を開く。
だが言葉が出ない。
「出ないじゃん」
すぐに拾われる。
「認めてんじゃん」
笑い。
「ばかですって」
重ねられる。
「なあ」
低い声。
「ばかならさ」
少し間。
「余計なこと考えんなよ」
詰められる。
「言われた通りだけやれよ」
視線が刺さる。
「それすらできねえの?」
逃げ場がない。
遥は息を吸う。
うまく入らない。
それでも出る。
「……やってる」
小さく。
それでもはっきり。
一瞬、空気が止まる。
そのあと、すぐに崩れる。
「やってる?」
繰り返される。
笑いが混じる。
「どこが?」
詰められる。
「結果これだろ」
重なる。
「できてねえじゃん」
言葉が落ちる。
肩を押される。
一歩下がる。
すぐ後ろに壁。
逃げられない。
「なあ」
前のやつが言う。
顔が近い。
「ばかなのはいいよ」
軽く言う。
「直んねえし」
笑い。
だが続く。
「でもさ」
間。
「ばかなりに考えろよ」
視線が外れない。
「どうすれば邪魔にならねえか」
詰められる。
遥は黙る。
答えは出ない。
「止まんな」
すぐに言われる。
「考えろ」
強制される。
頭が回らない。
それでも、何か出そうとする。
「……」
言葉にならない。
「遅い」
即座に落ちる。
肩を押される。
「ほんと使えねえな」
重なる。
「なあ」
別のやつが言う。
「今、何考えてんの?」
視線がまた集まる。
逃げ場がない。
遥は口を開く。
止められない。
「……何言っても無駄だって思ってる」
出る。
一瞬、静まる。
そのあと、笑いが漏れる。
「出た」
誰かが言う。
「被害者ぶるやつ」
重なる。
「無駄なのはお前だろ」
言い切られる。
逃げ場がない。
遥は何も言えない。
だが、口が止まらない。
「……どうせ変わんねえし」
続けてしまう。
「何やっても同じだし」
呼吸が乱れる。
「だったら」
一拍。
「もういいだろって思う」
出る。
完全に。
教室が静かになる。
一瞬だけ。
そのあと、ゆっくり崩れる。
「もういい?」
低い声。
「何が?」
詰められる。
遥は答えない。
答えがない。
「なあ」
前のやつが言う。
距離が詰まる。
「それ、自分で決めていいことじゃねえから」
短く言われる。
「お前が“もういい”って思うかどうかじゃなくて」
一拍。
「周りがどう思うかだろ」
断定される。
笑いが戻る。
「分かる?」
誰かが言う。
「ばかでも分かるよな」
重なる。
逃げ場がない。
遥は何も言えない。
ここでは、“ばかだから”という理由は理由として成立しているわけじゃない。ただ、止めないための言葉として使われているだけで、どこに当てはめても同じ形になる。否定しても肯定しても、その場で都合よく使われて、外れることはない。
コメント
1件
あ〜、読んでて胸がギュッてなったわ…。遥が「何言っても無駄だって思ってる」「どうせ変わんねえし」って口にしちゃうとこ、もう逃げ場がない感じがすごく伝わってくる。否定も肯定も全部その場で都合よく使われて、形だけ変わるだけって地の文が特に刺さった。笑いが消えないで続いてるのも、なんかリアルで嫌な空気がビリビキってきた。短い会話の重なり方が上手いなって思った。続きが気になる話だからこそはちゃんと遥の声が届いてほしい。応援してる。