テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
中学の頃仲の良かった友人の話。
友人の名前をAとする。
Aは元々霊感持ちで、度々霊の存在を感知している人だった。現在はあまりその手の話をしなくなったので、出産と共に霊感が薄れたのかもしれない。
中学の頃、よくAの家に遊びに行くと部屋にアクセサリーボックスが飾られていて、中でもアンティークなデザインの古めかしいロザリオのネックレスがお気に入りだったらしく、身につけるというよりインテリアとして扱っていた。
私もロザリオは好きだが、Aの持つロザリオはなんだか嫌な雰囲気があって触ったことはない。
Aも怪談話が好きで意気投合したのもあり、遊びに行くとしょっちゅう怪談話をして盛り上がっていた。
ある時、話の途中でトイレを借りようとしてAの自室から出ると、トイレの目の前に白い服装の女の子が体育座りの姿勢で顔を伏せて座っていた。
髪は肩より下で、肌の色が真っ白で生気はなかった。Aには姉妹がいる。生霊かと思ったが、姉妹もこんな外見ではない。
ならばただの浮遊霊か、もしくは地縛霊かと思って放置しトイレを済ませてドアを開けると、女の子が顔を上げていた。
白目のない真っ黒な空洞になった目で、真上を向いて大きく口を開けている。もはや顎が外れたような、規格外の開け方をしていた。
目が合うこともなく、ただひたすら真上を向いて大きな口を開けているだけなのだが、時折「あ゛ーーーー」と低めの声を発していた。
どうやら家の中は好きに移動するようで、色んな場所でその女の子を見かけるようになった。
見た目的に気味は悪かったが、特に害はないので度々視えても放置していた。
ーーー時は流れ成人して、お互いに出産を経験した頃、たまたま電話で近況報告をしていたAがふとこんなことを言った。
「なんかさぁ、息子(長男)が何もないところを指さして怖がっててさ、怖いお姉ちゃんがいるって言ってるんだよね」
この時もう霊視もお祓いもある程度できるようになっていたので、テレビ通話に切り替えてもらい、長男くんのことを霊視する。
すると、いつしか視たあの女の子の霊が家の中を徘徊している映像が視えた。長男くんはそれを目撃して慄いた様子だった。
Aはもう昔のあの家から引っ越していて、この時は旦那さんと子供達とアパートに住んでいた。
正直あの女の子は家に憑いていたと思っていたので、面食らった。
誰に憑いているのかを霊視すると、パッとロザリオのネックレスの映像が浮かんだ。
「……なんか……物に憑いてる可能性が高いみたいなんだけど……ねえ、もしかして今もまだ家にあのロザリオのネックレスあったりする?アンティークなやつ」
訝しげに聞けば、Aは「あるよ!」と言った。
「え、あれに憑いてるの?」
「あくまでも可能性の話だけど。そのロザリオ、もし神社にでも持って行くなら一緒に行くよ。何かしらの対処をした方が良い感じがするから」
そう提案した時、テレビ通話の画面越しに女の子が立ち止まってこちらを向いた。
いつしか見た、あの白目のない真っ黒な空洞の目がこっちを向いた。大きく口を開けたまま、閉じることもなく逆腹話術のような感じで「邪魔するな」と言葉を発した。
少女の声ではなく、まるで老婆のような嗄れた声だった。
彼女はそのままこちらに向かって勢いよく近寄り、画面から這い出でるように私の部屋にワープしてきた。
どうやら電波に乗った移動が得意らしい。
そのまま這い出でると、私の首に手をかけてきた。細い腕なのに、ガタイのいい男より力がある。ミシミシと私の首の骨が軋む音がした。
だが、ワンテンポ遅れて乱入してきたS兄の拳が彼女の顔面に当たり、女の子は文字通り吹き飛んだ。
画面越しにAの部屋に戻った女の子は、怒りの形相で今度はS兄目掛けて這い出てくる。
何度来ても結果は同じで、危害を与えてくる奴に容赦のないS兄は連続で3回ほど、女の子を殴り飛ばした。
3回目くらいでS兄が拳に妖気みたいなのを纏わせていて、こりゃ次は本気の一撃だなと悟ると同時に、彼女の心臓あたりにその重い一撃が放たれた。
「ギャッ」と短く鋭い悲鳴が上がり、彼女は四散した。
もうお祓いの必要がなくなったかもしれない、と内心呟くと、その呟きを拾ってS兄が「媒体になる物があると戻れることもあるぞ」と言った。
「媒体は早く手放した方がいい」とS兄は腕を組んだままそう言った。
その間、Aが「うーん、お祓いねぇ……あんまりにも長男が怖がって酷いようなら行こうかな」と考え込むように返答している。
S兄と女の子の戦闘は僅か1分ほどのことだった。S兄が俊敏に動くので、彼より弱いとものの1分で戦闘が終わることも多い。
AにS兄は視えていないようなので、私も目の前の出来事には一切触れず、「分かった、とりあえず様子見だね」と返した。
それから1ヶ月くらいして、あれから長男くんはどうかと聞けば、Aは「ああ!」と思い出したように声を上げた。
「あの電話の後さ、一応ロザリオ探してみたんだよね。そしたらさ……ないの。何処探しても出てこなくて。捨てた記憶もないし、引っ越してから出して触ったりしたこともないし、何処行っちゃったんだろ?」
そう言って首を傾げる。
実態のある媒体が消えた……?
「あれってさ、そもそも何処で買ったの?」
ふと疑問が湧く。
Aはなに食わぬ顔で「あれね、拾ったんだ」と続けた。
「昔父さんとスーパーで買い物した時に、駐車場に落ちてたのを見つけて、綺麗な状態だったから拾ったんだよね」
つまり、駐車場に落ちている時から女の子が取り憑いていたのだろう。
拾うということはその物に魅力を感じているからで、目を引くのも霊障のひとつだ。
Aは知らないうちに魅入られていて、それを20年以上持ち続けていたのだろう。
詳しく聞けば、A自身には何も影響はなさそうだが、浮気癖のある夫と何故か長男くんには霊障があったらしく、もしかしたら男性に対してのみ何かしらの恨みが向いていたのかもしれない。
現にこちらから何もしなければ、Aの家に遊びに行った際、遭遇して至近距離にいても危害はなかった。
それからAの長女と次女、またよく遊びに来るAの姉妹にも影響はなかったそうだ。
あれ以来、長男くんは怖がる素振りをすることもなく平穏な日常に戻ったらしい。
事の真相は伝えていないので、Aの中では不思議な体験になったようだ。
私は絶対に落ちてる物はどんなに惹かれても拾わないようにしている。
だって、何が憑いているか分からないから。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!