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放課後、教室の隅で椿が笑顔で声をかけた。
「おい、ちょっと手伝ってくれない?」
「え……うん、いいよ」
遥は嬉しそうに頷く。椿は何でもない頼みごとのように振る舞うが、内容はクラスの資料整理や荷物運びなど、パシりの要素ばかりだ。
「ここ、机の並び替えもお願い」
「う、うん……」
遥は必死に椅子を持ち上げ、机を移動させる。椿は横で笑いながら、他の友達と話しているように見せつつ、指示を出し続ける。
「もっと端っこに揃えて、あ、そっちじゃない、逆」
遥は息を切らしながらも、笑顔で応えようとする。頭の中では「俺、ちゃんとできてない」と自己否定が渦巻く。椿の優しい声と、実際の指示の厳しさが入り混じり、混乱と羞恥感が増す。
「ありがと、助かるわ」と椿は言う。声は穏やかで、友達らしい。だが、その言葉の裏には「お前、できなかったら面白い」という冷たさが隠されている。遥は気づかず、嬉しさと期待だけが先に立つ。
「ついでに、プリントもまとめてきてくれる?」
「う、うん……」
また重い荷物を抱え、遠くの机まで歩く。椿の目は微笑んでいるのに、遥の肩は痛み、背中には羞恥感が張り付く。自分がこんなに弱いこと、他の人には見せられない。
放課後の帰り道、椿は何気ない会話を続ける。
「今日も手伝ってくれて助かった。お前、意外と頼りになるな」
遥は顔を赤くして微笑む。
「そ、そうかな……」
自分を褒められたと思い込み、嬉しい気持ちに浸る。しかし、実際には椿の言葉も巧妙に利用の一部であり、次の命令や頼みの布石になっている。
遥は少しずつ疲れを感じながらも、心のどこかで「こんなに構ってくれる人がいるんだ」と錯覚している。その裏で、椿は巧みに遥を操作し、心理的にも物理的にも追い込み続けるのだった。