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その頃良輔は、ラブホテルにいた。
今日は珍しく残業も飲み会もなかったので、
久しぶりに平日の夜を凪子とゆっくり過ごそうと思っていたのに、
凪子は帰りが遅いという。
先日の土曜の夜、良輔は久しぶりに妻との熱い夜を過ごした。
その際、良輔は改めて凪子の良さを再認識していた。
だから今夜も凪子を抱こうと思っていたが予定はパーになる。
お預けを食らった良輔は、下半身をムラムラさせたままつい塩崎絵里奈へ連絡をしてしまった。
良輔と絵里奈が知り合ったのは、二ヶ月前の第一営業部での飲み会の席だった。
営業部にいた女子社員と絵里奈がたまたま知り合いだったらしく、
その女子社員が声をかけて連れてきた。
その日まで、良輔は絵里奈の事は知らなかった。
もしかしたら社内のフロアで絵里奈とすれ違っていたかもしれないが、
普段精力的に動き回っている良輔は、絵里奈の顔には全く見覚えがなかった。
飲み会は、掘りごたつ形式の和風居酒屋で行なわれた。
その時絵里奈は良輔の隣に座った。
そこで二人は初めて会話を交わす。
最初は当たり障りのない会話をしていた。
しかし酒が進むと、絵里奈は際どい話を始める。
絵里奈の話は、恋の悩み相談という形から始まり、
男性から見たそそる女の身体についてや、男性が理想とするセックスの話など、
その可愛らしい顔とは裏腹に次々と大胆な質問を投げかけてくる。
女性が男性に下ネタを振って来る時は、大抵女性がその男に興味を持った時だと言われている。
良輔もそのくらいの豆知識は知っていた。
もしかしたら絵里奈は自分に気があるのではないか?
段々とそう思い始める。
そして次第に絵里奈は掘りごたつの中で、自分の腿を良輔にグイグイと押し付けてきた。
凪子と一ヶ月近くもレスだった良輔は、ついその行為に敏感に反応してしまう。
良輔がまんざらでもなさそうだったので、絵里奈は次第に大胆になり、
第三ボタンまで外したブラウスの胸元が見えるように良輔にしなだれかかったり、
話の途中で良輔の太腿に手を乗せるなど、積極的アピールを始めた。
そこまでくれば、絵里奈の意図は明白だ。
10歳も年下の女性にそんなアプローチをされたら、良輔だって嫌な気はしない。
しかし、相手は凪子と同じフロアで働く派遣社員なので迂闊に手を出す事も出来なかった。
良輔がどうしたものかと考えあぐねていると、途中、絵里奈が席を立つ。
絵里奈はトイレへ行った際手帳から破った紙に文字を書き込むと、それを握りしめて席へ戻って来た。
そして、誰にも見られないようにそのメモを良助の腿の上に置いた。
「ちょっとトイレ……」
良輔はそのメモをしっかりと握りしめると、そそくさとトイレへ向かった。
そしてすぐにメモを開いてみる。
【この会社に来た時からずっと朝倉係長の事が好きでした。今日の帰りホテルへ誘って下さい♡】
良輔は思わず二度見した。
心臓の鼓動が激しく音を立てている。
良輔は、独身時代はかなりモテていた。
凪子と知り合う前の良輔は二股三股は当たり前で、別れ際に女性から恨みを買った事も多々ある。
しかし、凪子と知り合ってからは凪子一筋だった。
当時、凪子は社内で大人気だった。
以前モデル業をしていた事もあり、容姿は抜群で性格も良い。
おまけに聡明で行動力もあり、生まれ持ってのセンスにより仕事も有能だった。
そんなハイスペックな凪子を射止めたのだ。
その瞬間、過去に付き合ってきた女達がすべてゴミ屑に見えた。
もちろん良輔は過去の女は全て清算し、それ以降凪子だけに尽くすようになる。
その努力が実り、今こうして凪子の夫になる事が出来たのだ。
しかし結婚して一年が過ぎる頃から、燃え上がるような二人の関係は家族という日常になる。
ちょうど互いの仕事も忙しくなり、すれ違いの日々が続くようになっていた。
もちろん、夫婦関係は上手くいっていた。
しかし良輔は心のどこかで物足りなさを感じていた。
そんな時、10歳も年下の絵里奈に告白されたのだ。
つい昔のように浮足立ってしまう自分がいる。
妻以外の女を抱いたら、どんな感じがするのだろうか?
良輔の頭の中にはふとそんな考えが過る。
そして、次の瞬間、
「駅の反対側の出口で待ってて」
そう絵里奈だけに聞こえるように囁くと、
すぐに仲間との賑やかな会話へと戻っていった。
その夜二人は待ち合わせの後すぐにラブホテルへ入った。
絵里奈を抱く前に、良輔は聞いた。
「俺は既婚者だから、君とは結婚できないし、公の場で親密に接する事も出来ないんだよ。それでもいいのかい?」
「もちろんです! 朝倉さんに抱かれるだけで幸せなんです。それに私、この事は絶対に誰にも言いませんから」
すがるような切ない表情の絵里奈を見ると、良輔の胸がキュンと疼く。
次の瞬間、良輔は絵里奈を押し倒していた。
何年振りかで妻以外の女を抱いた時の興奮は、言葉には出来ないほど大きなものだった。
絵里奈の若い肌は、しっとりと手に吸い付きどこまでも艶めかしい。
思わず全身をなめ尽くしてしまうほど愛おしかった。
聞き慣れた妻の喘ぎ声とは違うその甘い声は、
良輔が忘れていた「オス」としての本能を呼び覚ましてくれる。
その夜、良輔は無我夢中で何度も何度も絵里奈を抱いた。
それからの良輔は、絵里奈にのめり込んだ。
次の週からは、週二回のペースで絵里奈と逢瀬を重ねた。
ホテル以外の場所、つまり会社でもその関係は続いた。
例えば、人気のない会議室や資料室などへ絵里奈を呼び出しセックスをする。
時には椅子の上で、そして時には机の上で、良輔は絵里奈の身体を貪った。
いつ誰に見つかるか分からない危険な場所でのセックスは、
二人を燃え上がらせる。
おまけに、絵里奈は良輔が望む事にはなんでも応えてくれるので、
良輔は優越感に浸りながら激しい快感に溺れていく。
そして、次第に男性としての自信も取り戻していった。
しかし、そんな日々も長くは続かなかった。
出会って二ヶ月が経った頃、次第に絵里奈とのセックスにも飽きてきた。
やはり刺激的な関係というのは最初だけなのだ。
慣れてくると、マンネリ感が否めない。
そんな時、久しぶりに妻との燃え上がるようなセックスをした。
(やはり愛おしいと思えるのは、何もかも知り尽くした妻なんだよな…)
良輔はそんな事を考えながら、目の前でアンアンとよがっている絵里奈に向かって、
最後の一撃を打ち込む。
その瞬間絵里奈の大きな声が部屋中に響き渡った。
「アア―――ッ!」
絵里奈は満足のいく快感を得られたので、恍惚とした表情を浮かべてぐったりとしていた。
一方良輔はというと、かすかな罪悪感と後悔の念で複雑な表情をしていた。
(そろそろ潮時かな……)
良輔はそう思いながら、ぐったりした絵里奈の隣りへゴロンと横たわった。
コメント
1件
絵里奈みたいな狙いを定めて良輔を誘う女が飽きたってだけで別れるはずがないって気づけよ‼️ つまみ食いの気分で関係持ったんだろうけど、凪子さんはもう決断してるし、若き日の独身気分での遊びの代償はとてつもなくでかいと覚悟しとくべき‼️