コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
真剣そのものだ。
探求心に火がついたのか、手を動かしながらじっと俺の反応を見ている。
見つめられている、というよりも、がっつり観察されている。
ぎこちなく、ゆっくり擦ってみたり、くすぐるように揉んでみたり。
もう、今すぐ全部脱いで、直接触って欲しくなる。
だが、さすがにそれは俺のプライドが許さない。
何でもないことのように表情を作り、彼女に口づける。
「椿……が感じてくれたら、俺も気持ちいいんだけど?」
「ですが、やはり俗に言う『マグロ』では、男性に飽きられてしまうのも早いと聞きました。それに、私自身、成されるがままというのは落ち着きませんし。以前、あらゆる技を習得すると宣言した以上、練習を重ねることが必要かと! ですが、彪さん以外の男性で練習した場合、彪さんのお好みの技を習得できるかは――」
「――ストップ!!」
まるで、スポーツか楽器の練習でもするかのように話す椿。
これは、きっちり納得させる必要がありそうだ。
「椿。まず、第一に、俺以外の男のモノを触ってはいけません。不貞行為というやつだから。浮気だから。普通にナシだから!」
思わず興奮して口調がきつくなり、椿がしまったと言いたげに唇を結んだ。
「第二に、俺は椿が嫌がっていないのであれば、マグロでもカメでも構わない。好きな女に触れてるだけで興奮するし、椿の気持ち良さそうな表情や声で十分気持ちいいから。技とか、必要ないから」
「ですが――」
「――第三に! 俺、今は、一刻も早く椿を抱きたいんだよ。わかる? もう、爆発寸前。こんな風に触られたら暴発するから」
「暴発……」と呟きながら、彼女の視線が指先を追う。
興味津々だ。
暴発するところを見てみたいと言われる前に、俺は自身から彼女の手を引き離した。
「そういう小技は、俺とのセックスに慣れてからにして」
「な、慣れますか……ね?」
「慣れるくらいスルから。そこはちゃんと覚悟しておいて」
ある意味、自分に向けた言葉だった。
椿からの愛撫に耐えられるように、彼女を抱くことに慣れなければ。
触れる度に暴発寸前状態では、格好がつかない。
キスをして、舌先で彼女の唇をノックし、開いた奥へと突進する。戸惑い気味な彼女の舌を遠慮なしに絡めとる。吸い付くように加えると、椿の腰が揺れ、俺のモノを刺激した。
本気でヤバい。
椿の腰を掴んで浮かせ、両膝を割って開かせる。スカートの中に手を突っ込んで、ストッキングをずるりと引き下げた。
ビリッと繊維が裂ける音がしたが、構わず裂け目から指を突っ込む。
「彪さ――」
「――本気でヤバいから、色々、ごめん」
なにがヤバいかも、なにがごめんかも椿にはわからないだろう。
いや、わかる。
数秒後には。
脱がせたんだか破いたんだかわからないが、とにかく椿の肌を隠す全てを取り払った。
スケスケの下着を楽しむのは、今後の楽しみにしよう。
真っ赤に勃ち上がった胸の尖端を口に含み、舌で転がしながら、腰や腹を撫でてゆく。
「ふっ……ん」
椿が自分の手の甲を唇に押し当て、声を殺している。
思う存分に啼かせたいところだが、手が足りないために諦めた。
片手で胸を揉み上げ、片手で潤んだ秘部を撫でる。
「むぅ……っん」
濡れた指先で入口から柔らかい膨らみまでを何度も擦り上げると、彼女の腰が揺れ始めた。
「あんっ、あ――!」
吸い付いていた尖端から口を離し、口を押えている手にキスをすると、椿からその手を動かした。顔の横でシーツを握る。
俺は無防備になったその唇を食むように口づけた。
腰を抱えるように持ち上げ、俺の熱を彼女の入り口に押し当てる。
彼女の口内に舌を挿し入れ、どうしていいかと戸惑い気味の舌に絡ませる。
くちゅっと水音が響く。
自身の猛りが彼女の蜜に濡れ、軽快に滑る。
熱く、柔らかく、わずかに刺すような痛み。
少し角度を変えるだけで挿入ってしまうとわかりながらそうしない。
「やっ……、あんっ……」
隙間から漏らす嬌声が、腰の動きを加速させる。
気が緩むと、勢いよく発射してしまいそうだ。
「椿……」
彼女の頭を抱え込むように抱き締め、耳元で囁く。
「気持ちいい……か?」
「あ、あっ! んっ、ひょ――さん……は?」
「気持ちいいよ」
耳朶を咥え、持ち上げるように乳房を揉む。
首筋に歯を立て、尖端を捏ねる。
「はっ……、ん……っ!」
「なぁ、椿」
「ん……、んっ――」
「――このまま挿れていいか?」
言った自分に驚いた。
これまで俺は、慎重に慎重を重ねてきた。つもりだ。
避妊せずにセックスしたことはないし、余裕のある時はゴムをしていても発射時には抜いたりする。いや、基本はそうだ。
それもできないほど我を忘れたセックスは、椿とだけ。
だとしても、だ。
子供が欲しいなんて、思ったことはない。
望まれずに生まれた子供である自分だ。子供を愛せる自信などない。
それ以前に、結婚したいと思ったのですら、つい最近のこと。
有り得ない。
理性を取り戻した俺は、椿の顔を覗き込んだ。
軽率な男だと、思われたかもしれない。
だが、椿は目をまん丸に見開いていた。
「椿? ごめ――」
「――彪さんは子供が欲しいですか!?」
食い気味に聞かれ、またも甘い空気が冷えていく。
もちろん、股間は熱いままだが。
「私は欲しいです! ですが、今はダメです」
「え?」
「私には、借金がありますので、今は仕事を辞めるわけにはいきません」
なんて冷静な判断。
真っ裸で、汗ばむ身体を密着させていても、彼女はいつも通り。
それが、なぜか無性に気に入らない。
「結婚をOKしてくれたのに?」
ゆっくりと腰を引きながら聞く。
「先ほどは、その、こ、興奮のあまり求婚いたしてしまいましたが、い、今すぐということではなく――」
「――俺は、今すぐ椿と結婚したい」
乱したい、と思った。
わけがわからなくなるほど、蕩けさせたい。
身体を起こすと、椿の両足を脇に抱え、蜜口に熱を当てた。
ゴムはしていない。
「彪……さん?」
椿が不安そう、というよりも不思議そうに俺を見上げる。
先端がクチュと音を立て、椿の蜜に濡れる。
温かくて柔らかな彼女の膣内《なか》を思い出すだけで、吐息が震える。
彼女の熱に、包まれたい。
思いっきり突き上げて、彼女を悦がらせたい。
けど、今は――。
「一人用のダイニングテーブルを買おうと思ったんだ」
はぁ、と肩で息を吐きながら、呼吸を整える。
ほんの少し腰を揺らせば天国が待っていると、わかっているのにそうしない自分の理性を褒めたい。
椿は戸惑いがちに、自分で自分の肩を抱いた。無防備に晒された胸を隠したかったのだろう。
俺は椿の足を抱えたまま、じっと彼女の瞳を見つめて言った。
「東京から戻ってこのマンションを買った時、今より少し小さなテーブルとイス一脚か、カウンターテーブルとイス一脚のどちらを買おうか迷ったんだ」
「……はい」
俺が何を言いたいのかわからず、椿は小さく頷いただけ。
「けど、店員がしつこく薦めるんだよ。後で同じイスをもう一脚買おうと思っても、廃番になっていたり、そうでなくてもセットで買うよりも割高だって。俺は……、一人暮らしだし、人を部屋に招くことはないって言ったのに」
本当は、イス四脚のセットを薦められた。テーブルも今のものの倍の大きさだったはずだ。
独身の男に家族向けのダイニングセットを薦めるなんてと、苛立ったのをよく覚えている。
「来客が絶対ないなんて言いきれないし、そうじゃなくても、二脚あれば一脚がダメになった時に即買い替えなくてもいいからって」
ダイニングの椅子がダメになるなんて、どれほど脆い作りなのかと思った。
「イスって……そんなに簡単にダメになりますか?」
椿の言葉に、思わず吐いた息が弾む。
「同じことを思ったよ、俺も」