TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

大輔の手術は午後4時半に終わり瑠璃子と新人の田中が患者を迎えに行った。患者を高度治療室に移すと大輔がすぐに来て患者の術後の容態をチェックする。


その後瑠璃子は夜勤組に引継ぎをしてから病院を出た。

瑠璃子は年末から買い物に行っていなかったのでバスを降りるとスーパーへ寄った。

店内で買い物をしていると突然携帯が鳴る。大輔からのメッセージだ。


【お疲れ! 今夜夕飯を食べに行ってもいい?】


瑠璃子はびっくりしてすぐに返信する。


【今日は早く帰れるのですか?】

【術後の患者さんも落ち着いているから帰れそうだよ。もし作るのが大変だったら外で食べてもいいけど?】


瑠璃子は手術で疲れている大輔を外へ連れ出すのは可哀想だと思いこう返信する。


【うちで大丈夫ですよ。何時頃になりそうですか?】

【8時には行けると思う】


あと2時間弱あるなら大丈夫そうだ。


【では8時にお待ちしています】

【よろしく】


瑠璃子は急いで買い物を済ませると、マンションに帰ってすぐに料理を作り始めた。

大輔は家庭料理が食べたいと言っていたので、得意料理のピーマンの肉詰めと家庭料理の定番である肉じゃがを作る事にした。それにサラダと味噌汁があればバランスはいいだろう。

手際よく料理を仕上げると瑠璃子は部屋の中を少し整理整頓する。そこで急に大輔の事を意識し始める。


(この間キスして今日は部屋へ? まさかね)


瑠璃子は少しドキドキしながら「それはないでしょう」と笑うと、いつもは開けたままの寝室の引き戸をきっちりと閉めた。


約束の時間の5分前になると瑠璃子は鏡の前で身なりを整える。その時インターフォンが鳴った。


「先生いらっしゃい」

「急でごめん。これ、ケーキ」


大輔はケーキの箱を瑠璃子に渡す。


「わぁ嬉しい。ありがとうございます」


リビングへ行くと大輔のダウンを受け取って瑠璃子がハンガーに掛けた。


「美味しそうな匂いがするなぁ」

「もう準備は出来ているのですぐに召し上がりますか?」

「うん、お腹ペコペコだよ」

「じゃあすぐに用意します」


大輔がダイニングチェアに座ると瑠璃子は出来立ての料理を運び始めた。

味噌汁は冷めていたのでもう一度火を通す。


「先生が家庭料理がいいっていうのでごく普通のメニューですが」


テーブルの上に並んだ料理を見て大輔が目を細める。


「美味そうだね。こういうのが食べたかったんだ」


そして二人は向かい合って食事を始めた。


大輔は美味しいと言ってどれも残さずに食べてくれた。

食事をしながら瑠璃子は今日大輔が手術をした患者の予後について聞く。すると経過は順調なようだ。


「さすが先生、『神の手』は絶好調ですね」

「いや、早めに処置出来たからラッキーだったんだよ」


大輔は謙遜する。


食事中、大輔はキッチンカウンターの上にあるスノードームに気付いた。大輔が瑠璃子にプレゼントしたものだ。

そして目の前では瑠璃子の胸元にラベンダー色のペンダントが揺れている。それを見た大輔は満足そうに微笑んだ。


食事が終わると大輔が片付けを手伝おうとしたので慌てて瑠璃子がそれを阻止する。


「先生は手術で大変だったんですから座っていて下さいっ!」

「食器洗いくらい大丈夫だよ」

「だーめー」


瑠璃子が聞く耳を持たないので大輔は、


「ハハハ、参ったな」


と言っておとなしくソファーに座った。


「棚の中の本を見てもいい?」

「どうぞ」


そこで大輔はリビングボードの扉を開けて本を物色し始めた。


瑠璃子が後片付けを終えてソファーの近くまで行くと大輔は熱心に本を読んでいた。

大輔が手にしている本は北海道在住の元医師が書いたものだ。この本は昭和に出版された本で元々は瑠璃子の母親が持っていたものだったが瑠璃子がどうしても欲しくて譲ってもらったものだ。


「その本面白いですか?」

「うん。この作家の本は若い頃全部読んだんだけど、これは今手元に残っていなくてつい……」

「北海道出身の作家さんですよね。昔は先生と同じお医者様だったみたい」

「そうだね」


そこで大輔がふと聞いた。


「君みたいな若い子がこの本を持っているって珍しいな」

「これは母の本だったんです。でも私が気に入ったので貰っちゃいました」

「そういう事か」


そして瑠璃子がコーヒーの用意を始めたので大輔は本を元の場所に戻した。

本を棚に戻す際、一番隅に表紙がボロボロの本を見つける。その本は『不思議の国のアリス』だった。

大輔はその本を手にすると何かを考えながらじっと見つめていた。


その後二人はケーキを食べ始めた。

食べながら瑠璃子がオセロゲームを出して来たので二人で勝負する。

しかし瑠璃子は無残にもあっさりと負けてしまった。


「先生、多少手加減をするのがレディーファーストの基本ですよ」


瑠璃子が頬をプクッと膨らませて抗議すると、


「いや、闘いというのは常に相手に失礼がないように全力で勝負するのが基本だろう?」


大輔はそう言って笑った。


「ずるーい」


そこでまた大輔が声を出して笑う。


あっという間に時間が過ぎて夜の11時になろうとしていたので大輔が立ち上がった。大輔は一度病院へ戻り患者の様子を見てから帰ると言った。

その言葉に瑠璃子は拍子抜けする。


(本当に夕食を食べに来ただけだったんだわ。余計な心配をした自分が馬鹿みたい)


瑠璃子は変にあれこれと考え過ぎた自分が恥ずかしくなる。


その時大輔が玄関へ向かったので瑠璃子は慌ててついて行った。

靴を履いた大輔は振り返るとこう言った。


「今日はごちそう様。どれも美味しかったよ」

「こんなものでよければ、またいつで……」


瑠璃子が言い終わらないうちに大輔は瑠璃子の頭を引き寄せ素早く唇を重ねる。

二度目のキスはうっとりするような優しいキスだった。


大輔が唇を離すと瑠璃子は頬を染めて動けずにいた。


「寒いから出て来なくていいよ。じゃあまた明日」


ドアがパタンと閉まる。

そのドアの音で瑠璃子は急に我に返った。そして慌ててベランダへ向かうと窓を開けて外に出た。


「先生! お気をつけて!」


瑠璃子は手を振りながら大きな声で叫んだ。

すると車に乗り込もうとしていた大輔が瑠璃子を振り返る。そして大輔は優しい笑みを浮かべながら言った。



「瑠璃ちゃん、愛してるよ!」



瑠璃子は大輔からの突然の愛の告白を聞き、びっくりして動けなくなる。

しかし大輔はもう一度瑠璃子に微笑んでから軽く手を挙げると病院へ戻って行った。

ラベンダーの丘で逢いましょう

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

920

コメント

25

ユーザー

きゃー!きゃー🥳とうとう言葉で伝えたんですね🩷油断していた瑠璃ちゃんにある意味サプライズ🥰大輔先生やるぅ~🤭

ユーザー

「瑠璃ちゃん、愛してるよ!」 キャアー(///ω///)♡♡♡ 不意打ち&言い逃げ.... もぉ~大輔先生ったら~( 〃▽〃)♥️♥️♥️

ユーザー

きゃー!!きたきたー!「瑠璃ちゃん、愛しているよかっこ」の一言に、こりゃー瑠璃ちゃん大パニックよ😍ボロボロの本とお母さんの呟き繋がるかなぁ?ドキドキワクワク♡

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚