テラーノベル
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翌日、大学のサークル生たちがロッジに到着し、カフェ担当の流星と瑠奈は挨拶を交わした。
瑠奈は岡本家の母屋に泊まるが、流星はアパートで生活するので、顔を合わせないわけにはいかない。
サークル生は男女合わせて五人。
サップボードのサークルらしく、アルバイトの合間には青木湖でサップボードを楽しむらしい。
皆、爽やかで人当たりの良さそうな学生たちだったが、流星はその中の一人の男子学生が、瑠奈を舐めるように見ているのに気づいた。
人の視線や空気の変化に敏感な流星は、こういうことにすぐ気づいてしまう。
その日から、カフェでの仕事が始まった。
普段は岡本の妻と、パートの主婦二人が交代で店を回している。
メニューはコーヒーマシンで淹れるコーヒーやカフェラテ、サンドイッチ、外注のスイーツなど、都会のカフェとほとんど変わらない。
若い二人はすぐに仕事を覚え、数日経つ頃には、まるで昔からの友人のように自然に会話を交わすようになっていた。
「流星くん、テーブル拭きお願い」
「了解」
店内が落ち着いた頃、流星が空いたテーブルを拭きに行くと、旅行で訪れていた女子大生四人組が、しきりに流星を見ていた。
背が高く、野性味のあるイケメンの流星を、値踏みするように眺めている。
流星が彼女たちのテーブルのそばを通ると、そのうちの一人が声をかけた。
「君、アルバイトで来てるの?」
突然の質問に、流星は驚いて振り返る。
「はい、そうですけど」
「地元の人?」
「いえ……」
「じゃあ、どこから来たの?」
「信濃大町です」
「そうなんだ~」
女子大生たちは楽しそうにキャッキャと声を上げた。
「ねぇ、今夜、隣のロッジでパーティーやるんだけど来ない?」
突然の誘いに流星は驚いたが、すぐにこう返した。
「せっかくですが、遠慮しておきます」
「どうして~? 少しくらいいいじゃない」
「そういう行動は、禁止されてますので」
もちろん、そんな規約はない。だが、流星はもっともらしく言った。
「え~、つまんな~い! じゃあさ、バイト終わったら外にご飯行かない? それならいいでしょ?」
その瞬間、瑠奈がつかつかと近づいてきて、女子大生たちに言い放った。
「すみません、彼、今夜は私とデートなんです」
「「「「えっ?」」」」
「だから誘っても無駄ですよ。ほかの人を当たってください」
そう言い切ると、瑠奈はまたカウンターへ戻っていった。
驚いた流星は、ぽかんと立ち尽くしている。
すると、女子大生たちは口々に文句を言い始めた。
「何よあれ~」
「ずいぶんお高くとまってない? ちょっと若いからってさぁ!」
「ほんと、感じ悪~い」
「明らかに喧嘩売ってたよね。むかつく~」
流星は気まずさに耐えながら、「すみません」とだけ言ってその場を離れた。
カフェは午後六時までの営業だ。
閉店後の片づけを終えた二人は、カフェの戸締りをして外に出た。
「さっきは助けてくれて、ありがとう」
「別に助けたわけじゃないし」
「でも、助かったよ」
「…………」
瑠奈は黙ったまま歩いていたが、急に立ち止まり、流星の方を向いた。
「嫌ならちゃんと断らなきゃ!」
「え? あ、うん……」
「優柔不断な男って、私、大嫌い!」
「そ、そうだね……ごめん……」
「流星君を好きな女の子があれを見てたら、きっと嫌な気分になるよ」
「……そうだね。今後気をつけるよ」
「…………」
瑠奈は返事をせず、ぷいっと顔をそむけて岡本宅へ歩き出した。
夕食を終え、アパートの部屋で寝転んでいた流星は、窓から見える夜空を眺めた。
街の明かりが少ないせいで、信濃大町の自宅よりも星がいっそう鮮やかに見える。
降るような星空を見上げながら、流星は頭の下に手を組み、先ほどの瑠奈の言葉を思い返した。
(俺って……優柔不断なのか?)
自分ではそうは思っていなかっただけに、ショックだった。
リーダーシップがある流星は、高校ではかなりモテていた。
山岳部という地味な部に所属していたが、流星目当てで入部する女子がいるほどだ。
その中で、付き合った子も何人かいたが、どれも可愛らしいままごとのような恋愛だった。
そんな流星でも、瑠奈に投げかけられた言葉は、思いのほか胸に深く刺さっていた。
(女心って、分かんねぇ……)
そう呟き、面倒くさそうに体を起こすと、受験用の参考書を手に取った。
コメント
5件
流星君を助けた瑠奈ちゃんだけど…🤔 きっと流星君が気になっているのよね…💓 妹もそうだけれど、流星君は強🤭い女の子と縁があるようで…💕
男子は直球、女子は変化球だよね〜🙂↕️わからないのもわかる👍 でもかよにゃさんの言う通り瑠奈ちゃんパパがそうだから嫌なのかも🤢
流星くん大丈夫(。-`∀・)b゙ その年で女心を理解出来たら、マリコイケメンズ最強伝説。