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「とりあえず、私はいただきましょう」
ポッポがようやく出て来た。
鳩山健吾。
親父は、役場で勤めている。公務員こそ世の仕事、とか言ってたな。ただ決め事には消極的で、いつも多数意見の方に流れていく。自分の意見なんてどうでもいいように。
「ポッポ、食えよ!」
愛想笑いでごまかしてる。手のひらに乗せたおにぎりを抱えて、元の場所に戻り座った。
ルートが言ってた。三時間以内……
僕は、生き残る。誰かが死んだら……食べる。
落選寸前の政治家が、ここ一番で賭けに出た。
「私はですねぇ、はは。今は食べませんよ。なにをやるにも時期ってありますからねぇ…」
ふぅーー
大きくひとつ、息を吐きながら出て来たのは、シノセイだ。ずっと後ろで腕組みをして見ていた。
篠原整。あだ名は、シノセイ。細かいところをやたらと気にする女子だ。この会議室に移動した時も、マットの位置やロウソクの置き場など細かく指示をしていた。父親は宮大工で、小さい時からそういう細かいところを見てきたんだろう、と思う。
シノセイは先生のお盆から、ひとつおにぎりを取る。
「私のおにぎりに、毒は入ってない」
そう言い切ると、シノセイはガブリッッとおにぎりをほおばった。
「うん、おいしい」
「あ、先生」
「なに?篠原さん」
「先生も…………食べてよね」
「ええ……もちろん」
雨は緩やかになり、この夜を雲に隠れる月が僅かに照らす。