TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

朝が来た。雨は……ますますひどくなって、

もう川がどこなのかすら分からない。

木も流されたのか地崩れか、いくつも倒れている。


テレビで他の土地の災害とか観てきたけど、

生きている間に、こんなことが起こるなんて。

想像すらしていなかった。


スマホを見るけど、相変わらず圏外。

僕らは会議室で、膝を抱えて座っているだけだった。


あ……音……?


雨が叩きつける音に混じって、

静かな旋律が聞こえてきた。


そうか。会議室の隣は、ピアノのある音楽室だ。

僕らは立ち上がって、そっと隣の部屋を覗いた。


先生がピアノを弾いていた。


確か……ショパンのノクターン。


先生からピアノを習っていたリンリンが、

ぽつりとつぶやいた。


「夜想曲第2番、Op.9-2……」


僕らは立ったまま、

雨の音に混じるショパンを聞いていた。


先生は、僕らの方を見なかった。

ただ、鍵盤の上で指を滑らせながら、

ゆっくりと微笑んでいた。


外の雨音が、ピアノの旋律と混ざって、

まるで世界が呼吸しているみたいだった。


白い指先と、濡れた黒髪。

頬に残る泥の跡もそのままで、

先生は、何かを確かめるように弾き続けた。


僕らは、誰も声を出せなかった。


やがて、音が止んだ。


最後の音が消えても、

しばらく誰も動けなかった。


リンリンも、僕も、

息をするのを忘れていた。


先生は静かに立ち上がると、

こちらを見て……

微笑んだ。


その笑顔は、昨日の先生と同じだった。

……同じ、はずだった。


「お腹、空いたでしょ?」


そう言って、

先生は会議室に戻り、

乾パンの袋を開けて、

ぽりぽりと食べ始めた。


僕らはまだ、

音の余韻の中にいた。

永遠にそれが続くかのように。

この作品はいかがでしたか?

24

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚