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今日は、兄ルイスの卒業式だ。
兄ルイスとフローラ様は文通により心を通わせてきている。
そして、私とルイ王子もとても仲良しカップルとして周囲から受け入れられていた。
兄ルイスは次期国王として卒業式でお言葉をいうことになっていた。
強制力によりイザベラを求める気持ちを抑え込んで、卒業式の言葉だけでもしっかりと表に出て語りたいと彼は主張した。
イザベラがアカデミーに入学して以来、彼はイザベラを求める強制力に苦しみ部屋を出ていない。
王族として数々の式典でのお言葉も彼自身が表に出ていくことが難しく、ルイ王子が代わりを務めていた。
本来、誠実で真面目な人柄の兄ルイスにはとても辛いことだ。
「俺は、イザベラ・バーグと結婚する。イザベラの生まれながらの可愛さに嫉妬し虐めたフローラ・シュガー、お前との婚約は破棄する」
お色気たっぷりの淫猥な雰囲気を漂わせた、兄ルイスが開口一番に宣言した言葉に周りがざわつき出した。
「ルイス王太子殿下、私はイザベラ様を虐めてはおりませんわ。彼女と私は姉妹のように仲良しですのよ」
フローラ様は兄ルイスの宣言に落ち着いて優雅に対応した。
思わぬ事態が起きた時こそ、落ち着いて対応する珠子力を彼女は持っている。
私は、兄ルイスにフローラ様に強制力で苦しんでいることを伝えるようアドバイスしたのだ。
普通の人間ならそのような事を信じないかもしれないが、彼女のモデルが私ならありえない告白ほど勇気を出して言ってくれたものだと思い聞くと思ったのだ。
「フローラ様のおっしゃる通りですわ。王太子殿下、私はフローラ様を実の姉のように慕っております。私が生まれながら可愛いというのは誤解ですわ。私の可愛さは日々の鍛錬とメイク技術で作られたものです」
周囲に笑いがおこる、このままこれを卒業式を盛り上げるための演劇だったことにしてしまえないだろうか。
私とフローラ様が気が合うのは同然だ、珠子のハートを2人は持っている。
バァン!
突然、後ろの扉が開いて黒髪に黒い瞳をしてタキシードを着た20代前半くらいの男性が入ってきて、フローラ様の前まで颯爽と歩き出した。
彼は確かアツ国のルドルフ・アツ王太子殿下だ。
私が世界を旅しているときにアツ国は王族がパレードしていた。
男性の王族はイケメンなのに女性の王族がブスだったので、この世界はイケメン好きの女性によって創られたものではないかと疑ったのだ。
ルドルフ・アツ王太子殿下もその時、遠目で見たが優雅にお手振りをしていて美しい正統派王子様だと思った。
「フローラ・シュガー公爵令嬢、1年ほど前レオ国であなたをお見かけした時から、ずっとあなたをお慕いしておりました。私と結婚してください」
優雅に彼女に跪きプロポーズしているルドルフ・アツ王太子殿下は、来月国王になる戴冠式と同時に結婚予定だったはずだ。
「ルイ王子、私の年季の入った信者の創作した世界でした。カルロスに頼んで、一旦ルドルフ・アツ王太子殿下を会場外に出してもらいましょう」
私は隣にいるルイ王子にそっと耳打ちした。
ルイ王子とカルロスはツーカーな関係なので、アイコンタクトだけで話が通じる。
この世界の創造主は私が『美少女戦士の恋人は大学生のタキシード。』というアニメの大学生に憧れていることを知っている。
中学の時、「付き合うなら絶対大学生、同年代とかありえない。」と私が言っていたことを知っている信者の創作だ。
実際に、中学生の年齢に相当するフローラ様を見初めたとか堂々と宣言する、良い大人のルドルフ王太子を見たら寒気がした。
カルロスはアツ国のルドルフ王太子を捕獲すると会場外に連れ出した。
「何をする無礼な」
ルドルフ王太子は怒りの声をあげた。
確かに他国の王太子に対してする行動としては無礼だが、正気に戻った時には感謝されるだろう。