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夕焼けはとっくに沈み、街灯の下で遥の影は頼りなく揺れていた。耳の奥では、さっきの笑い声がまだ生きている。
「必死に探してんの」「空気読めない」「殴っても反応薄い」——言葉が、脳の奥をゆっくりと締めつけてくる。
足元のアスファルトに靴音が乾いて響くたび、背後で誰かが忍び足でつけてきているような気がする。振り返っても、そこには何もいない。それでも心臓は早鐘を打ち、喉が渇く。
信じたことが間違いだったのか。
役に立とうとするほど、嘲笑の餌になるのか。
答えは、もう聞かなくてもわかっている。
途中、電柱の陰から数人の同級生が現れた。制服のまま、コンビニ帰りの袋をぶら下げて。
「お、まだ生きてたんだ」
「なんでこっち見んの? 気持ち悪」
笑い混じりの声に、遥はうつむき、歩幅を小さくした。何かを投げられる。ペットボトルだった。中身がまだ残っていて、足元で鈍く転がる。
「走れよ。走んないとまたぶつけるぞ」
背中にぶつかる声。走れば追われ、立ち止まれば狙われる。結局、選択肢なんて最初からない。
街灯の間隔が広がり、闇が濃くなる道へ入る。後ろの笑い声は、遠くなっても消えなかった。
それは、帰宅して布団に潜り込んでも、まぶたの裏で明かりを灯し続ける。