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心恋～uragoi～

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心恋～uragoi～

第24話 - 第24話

663

2024年12月27日

#ヤクザ

#裏社会

#極道

#大人の恋愛

#ハッピーエンド

#大人ロマンス

瑠璃マリコ

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663

瑠璃マリコ

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レストランはイタリアンの店だったので、二人はパスタを食べながら話を続けた。

「楓のスマホを買い替えないとな」

「え？　買い替えなくてもまだ使えますが」

「電話番号を変えた方がいい。妹の居場所を知りたくてきっとまた電話をかけて来るだろうから」

「…………」

楓は戸惑う。兄と縁を切りたいと思ってはいたが、たった一人の家族だ。そこまでする必要があるのだろうか？

「そこまでしなくては駄目でしょうか？」

「うん。実はちょっと悪い噂も耳にしたしね」

「悪い噂？」

「知りたい？」

「教えて下さい！」

「実は君のお兄さんには借金があるみたいなんだ」

「…………」

「驚いたか？　まあ俺はそんな事だろうと思っていたけどね」

「わかってたんですか？」

「俺は今まで金に困った奴をわんさと見てきたからな」

「そうなんですか？」

「ああ。俺は下っ端の頃サラ金の取り立てをやってたんだ。だから金に困っている奴は臭いでわかる」

「臭いで？　それはどういう？」

「楓の中では借金をしている奴のイメージってどんな感じだ？」

「……ギャンブルにはまっているとか、お金を無計画に使っちゃうとか？」

「まあ普通はそうだよな。でも君のお兄さんはエリート商社マンだ。高給取りなのにおかしいと思わないか？」

「思います」

「お兄さんはギャンブルをする？」

「しないと思いますが……」

「という事はギャンブルによる借金ではない。でも何かで金が必要だった。だから妹を売った」

「一体何に？」

「俺の考えでは投資の失敗だろう。これはまだ調査中ではっきりとは言えないが、おそらく投資に多額の金をつぎ込んで全てを失ったんだろう」

「そんな……」

「最初は少額だった。でも損を取り返そうとするうちにどんどん深みにはまり多額の損害を出す。それでもまだ諦めきれずに借金してまで取り戻そうとする。それでサラ金に金を借りた」

「サラ金で？　まさか……」

「そのまさかだ。うちの店にも以前来たらしい」

「……それで兄にお金を貸したんですか？」

「いや……うちが初めての客に金を貸す時は他店での返済状況を一応チェックするんだ。で、君のお兄さんはブラックリストに載っていた。だから審査が通らなかった」

「じゃあ他でも借りていたのですか？」

「そう。それも一ヶ所じゃない。何ヶ所もだ」

「…………」

「それだけじゃない。その後違法賭博場にも出入りしてたみたいなんだ」

「……なんでそんな事を……」

楓はショックで言葉を失う。

「つまり君に稼がせた金で借金を返済したかったんだろう。でも金は一部しか入らなかった。だからお兄さんはなんとか君に連絡を取ろうとするだろう。だから電話番号は変えた方がいい」

「でも、兄が借金を返さなかったら？　兄はどうなるのですか？」

「おそらく勤め先に取り立ての電話が行くだろう。で、会社にサラ金の事がバレる」

「そんな事になったら兄は会社をクビになるかもしれません」

「そうかもしれない。だがな、楓！　そこでお兄さんを助けようなんて思うんじゃないぞ」

楓は自分が兄と決別した事をすっかり忘れて動揺していた。

そんな楓に一樹はきっぱりと言った。

「今君が助けたとしてもお兄さんはまた同じ事を繰り返す。だから君が手を差し伸べる事は決してお兄さんのためにはならないんだ。わかるか？　楓！」

「でも……」

楓は涙ぐんでいた。

そんな楓に一樹は続ける。

「お兄さんが自分の力で立ち直る事が出来ればまた会える時は必ず来る。だからその時まで待つんだ」

「…………」

一樹の言う事はもちろんわかっていたが楓は複雑な気持ちでいっぱいだった。

その後一樹は話題を変え、明日から楓が働く会社の事について色々と話してくれた。

その話に耳を傾けるうちに、楓の心は少しずつ落ち着きを取り戻していく。

（お兄ちゃんが立ち直るまでの我慢よ……もう決して会えないわけじゃないんだからそれまで待つのよ……）

楓はそう自分に言い聞かせると、窓の外に広がる海をじっと見つめた。

マンションへ帰る途中、二人はショッピングモールに寄った。

そこで楓の新しいスマホを一樹が買ってくれた。

その後スーパーで食材を買ってから二人はマンションへ戻った。

夜は楓が煮物やお浸し等の和食を作った。

楓が作った煮物を一樹は美味しいといって褒めてくれた。

美味しそうに食べる一樹を見ながら楓は思う。

（この人、本当にヤクザなの？）

楓は今日一日一樹と一緒にいて、一樹がヤクザだという事をすっかり忘れていた。

初めて会った時の一樹の目に浮かんでいた鋭い眼光は、今はすっかり消え失せている。

（新しい会社にはどんな人がいるんだろう？）

今はあえて兄の事は考えないようにして、明日から始まる新しい生活に集中する事にした。