コメント
1件
理紗子ちゃんの闘争本能発揮したねー‼️🐟🎣 2人共にめちゃくちゃ楽しんで側から見ればフツーのカップル💕にしか見えないんじゃないかな〜。 素の姿を肌で感じ取れた時間でもあっただろうな✨
その巨大魚を見た瞬間、理紗子の闘争本能に更に火がついた。
(私も絶対に釣ってやる!)
理紗子は呪文のように何度も心の中で呟くと、先程の位置に戻ってから再びキャスティングを繰り返した。
すっかり釣りにはまっている理紗子を見て、健吾は後ろから楽しそうに見ていた。
その時健吾の隣にヨシが来て言った。
「健吾さんが女性を連れて来るなんて初めてですよね。彼女、すっかり釣りにはまりそうですね」
ヨシがニッコリと笑ったので、健吾も微笑みながら頷く。
その時、理紗子のロッドがヒットした。
何かはわからないが、確実に釣り糸の先端に何かが食らいついている。
「キャーッ、なんか来たー!」
理紗子が叫んだので、健吾とヨシと美也子は慌てて理紗子の傍へ集まる。
その竿先の動きを見たヨシが、
「間違いなくGTですね。健吾さんアシストよろしくです」
ヨシはそう言うと、エンジンをかけて船を獲物の近くへ移動させる。
そうする事で釣り糸にたるみを持たせて糸を巻き上げやすくするのだ。
大物との勝負は体力を持っていかれるので、特に女性が釣り上げる場合にはこうした配慮が必要だった。
その間に健吾は背後から理紗子に身体をぴたりとつけると、後ろから両手を伸ばして理紗子のロッドに手を添えた。
「一度グイッと引き上げるぞ!」
健吾は合わせに入る。
こうする事により釣り針を確実に獲物の口へと食い込ませるのだ。
理紗子はキャーキャー言いながら、ただ健吾の指示に従うだけだった。
健吾はロッドを大きく上に引き上げた瞬間、糸を素早く巻き取るよう理紗子に指示した。
健吾が力を込めて竿を持ち上げては理紗子が巻き取る。
二人は二人三脚でその作業をしばらく続けた。
それを20分程続けた頃、漸く海面に魚影が見えてきた。
「理紗子さん凄い! GTよ! それも大物!」
美也子が興奮して叫ぶと、ヨシが網でその獲物をすくい上げた。
その時やっと理紗子は重労働から解放された。
「やったな!」
健吾が理沙子の頭を撫でながら褒めると、
「疲れたーーーーー!」
理紗子は力を入れ過ぎて感覚がなくなってしまった両手を振って言った。
しかしその表情は達成感に満ちていた。
「初釣り、初ルアーフィッシングでここまで大きいのを釣り上げた人は今まで見た事がないですよ。それも女性でですから
ね!」
ヨシは興奮を隠しきれない様子だった。
それから魚のサイズを測ってくれる。
理紗子が釣りあげたロウニンアジは、100センチ、20キロだった。
ヨシは理紗子にスマホを貸してくれたら写真を撮りますよと言ってくれたので、お願いする事にした。
ビッグサイズのGTと共に理紗子は何枚かの写真をドヤ顔で撮ってもらった。
ヨシが健吾さんも入って下さいと言ったので、健吾とのツーショット写真も撮ってもらった。
それから理紗子は脇にいた美也子も呼んで、今度は三人で写真を撮ってもらう。
写真を撮った後、理紗子は美也子とは連絡先を交換して後で写真を送る事にした。
そしてその日の闘いは終了した。
日没まではまだだいぶ時間があったが、海は徐々に黄昏始めている。
燦々と降り注いでいた太陽は徐々にその威力を失い、今は穏やかに海面を照らしていた。
波に反射した光の粒は、船の航路にキラキラとこぼれ落ちていく。
その光の絨毯を縫うように船は港へ向かって走り続ける。
健吾と理紗子が海を眺めながら座っていると、美也子がアイスコーヒーを持って来てくれた。
理紗子はコーヒーを受け取りながら美也子に言った。
「楽しかったー! ほんと、美也子さんのお陰です。今日は本当にありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそ。まさか初日であんなに大きいのを釣り上げるなんて、理紗子さん才能ありです! 健吾さんもうかう
かしていられませんね。いつか理紗子さんに追い抜かれそう」
美也子が笑いながら言ったので、
「やばいな! 理紗子に内緒でこっそり通って練習しないと」
健吾の言葉に女性二人は声を出して笑った。
二人が釣ったGTは、釣った後すぐにリリースした。
あまりにも大きいので、さばいてもらってもとても二人では食べきれない。
健吾が投資家仲間達と釣りに来る時も、いつもキャッチ&リリースするらしい。
(今日釣ったGT君にまたいつか会える日が来るのかな?)
理紗子はそんな事をぼんやりと考える。
それほど初めて釣りあげた魚が愛おしくてたまらなかった。
船が港へ到着すると、健吾と理紗子は二人にお礼を言ってから港を後にした。