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わざわざお見せする規模でもないので」」 ←カギカッコ 」が二重でした
↓そう〜っ!ノルノルさん❣️2人はお似合いよねー💕 とにかく俊さんのさり気なくね、話を進めていくテンポが心地いい。 なんでもいいんじゃない!じゃなくてダメな所はちゃんとダメ出しも出来るしね👍 この後の雪子さん宅訪問🚪俊さん色んな意味でドキワクしてるじゃないかな〜(๑´ლ`๑)フフ♡
雪子さんのカフェの参考にするのに2人でモーニング☕️🍰🍞なんてステキ😊♪♪ 俊さんの誘い方や話の流れが雪子さんにあってる🤭 カフェのプランニングの意見交換も肩肘張らずでさりげなくがとてもいい‼️ これからご自宅チェックも自然でやっぱりお二人お似合いです🥰✨✨
俊と雪子は切り通しを歩き始めた。
「この間のお礼が言えて良かったよ」
「はい。でもちょっと恥ずかしかったです」
「モーニングへ行くのが恥ずかしいの?」
「いえ、そういう訳じゃないけれど」
雪子はまた顔を赤らめる。そして俊に聞いた。
「今日はどこのモーニングへ行くのですか? 私モーニングってあまり行かないのでこの辺りの店は知らなくて」
「調べたら駅周辺には色々あるみたいだね。今日はその中の一つに行ってみようか」
俊はそう言って微笑んだ。
しばらく歩くと右に入る道があった。
「あっ、前に言っていた鰻屋さんはここを右に曲がるんです」
「おっ、という事はモーニングの店に近いな」
二人は右に入る道を進む。
雪子の行きつけの鰻屋を過ぎて30メートル程歩いた所に、カフェの看板が見えてきた。
『cantare』(カンターレ)
その店の名はイタリア語で『歌う』という意味らしい。
看板の右手の階段を上がって行ったところにカフェの入口があるようだ。
「俺も初めて来るからどんなカフェか楽しみだな」
俊は微笑むと階段を上り始めた。雪子もそれに続く。
階段を上り切ると平屋の古い民家があった。
カフェはその民家で営業しているようだ。
外観は古い普通の家だが、入口付近は店主がセルフリフォームしたような痕跡がある。
古い壁は白の漆喰で塗られ、扉はアンティーク風のものに付け替えられている。
ドアの左上にはレトロな外灯があり、入口にはイタリアの国旗が掲げられていた。
その隣りには大きなオリーブの鉢植えがシンボルツリーとして置かれている。
「素敵! ここにこんなカフェがあるなんて知らなかったです」
雪子は目をキラキラさせて言う。
「道路からは一段高い場所にあるから俺も気づきませんでしたよ。看板がなかったら素通りしちゃうよね」
「はい」
そこで雪子は入口の脇から庭の方を覗いてみた。
庭に面した部分には縁がが見える。そこにもテーブルが置かれていた。
そして芝生に覆われた庭にも、パラソル付きのガーデンテーブルがいくつか置かれている。
庭の植え込みには、ガーデンライトや素敵なオブジェが並んでいた。
夜はきっとライトアップするのだろう。
風に乗ってほんのりハーブの香りが漂ってくる。
庭にはハーブも植えられているようだ。
「この店の営業はモーニングとディナーだけなんだ。夜のイタリアンも期待出来そうだから今度夜にも来てみようか?」
雪子はうんと頷く。
それから二人は店の中へ入って行った。
店内は、壁や天井は昔のままの古い造りで、床だけが土足で入れるようシャビーな木材に張り替えられている。
古い柱時計や蓄音機が飾られ、昭和の懐かしい空気を感じる。
テーブルと椅子はそれぞれが形もテイストも異なるデザインで、ちぐはぐなのになぜか落ち着く。
テーブルの上にはアンティークのインク瓶に可憐な花が一輪挿してあって素敵だ。
店内にはイタリアのミュージシャンが歌うカンツォーネが流れている。
とても耳に心地よい。
平日の朝なのに、席は半分以上が埋まっていた。
客層はほぼ40代以上だろうか?
昔はカフェと言えば若者しかいなかったイメージだが、最近はどこも熟年層が多い。
この店も同じだった。
庭に面した縁側のテーブルが空いていたので、二人はそこへ案内された。
早速メニューを開いてみる。モーニングは一種類だけのようだ。
俊がモーニングセットを二つ頼んでくれる。
窓から見える庭は思っていたよりも広く、道路よりも一段高いので見晴らしがいい。
向こう側に見える駅前の雑居ビルが、ちょうど庭に植えられたサルスベリやハナミズキの木で目隠しされ、
プライベート感を増している。
ゆったりと落ち着けるカフェだ。
そこで俊が言った。
「こういった店も参考になるよね」
「?」
「自宅カフェのだよ」
俊が笑ったので、雪子は「あっ、そうか」という顔をした。
「この前ちょっと考えたのですが、父の鉱物類をカフェに飾るのはどうかなって…」
「いい案だね。あの辺りを通る地層や鉱物好きの人達が来てくれそうだよね」
「はい。あの鉱物類を何かに生かせないかなってずっと思っていて急に閃きました。でも、もしカフェを作るなら、本当は雑貨屋さんみたいに可愛らしい店が憧れです。可能なら店の隅っこで雑貨とかも売ってみたいし」
「いいんじゃない? 例えば鉱物好きのご主人が散歩がてら奥様と来れば、男は鉱物、女は雑貨ってそれぞれが楽しめるしね」
「あ、あとは昔流行った委託販売とか? 主婦のハンドメイド作品を販売出来るコーナーがあるとか? あとはミニ個展を開いたり、演奏会も開催したら楽しそう!」
雪子の口からは次から次へとアイディアが出てくる。
「色々発想が湧いて来たね。もしかしてやる気になった?」
「うーん、かなり興味は湧いていますがやっぱり初期費用がネックですね。一体いくらかかるのか? 想像だけだとなかなか現実味が…….」
そこへモーニングが運ばれて来たので話は一時中断した。
モーニングセットは、ミネストローネに自家製手作りパン、そしてサラダと目玉焼きとソーセージ、それにコーヒーがついていた。
パンは外がカリッとして中がモチモチで絶品だった。
そしてコーヒーを一口飲んだ雪子は、俊に聞かれる前に自ら答えた。
「これはモカね!」
「うん、正解! バッチリだね」
俊に褒められたので雪子は嬉しそうに笑った。
「俺の大学時代の同期が自由が丘で自宅カフェをやっているんだ」
「自由が丘で? うわぁ素敵! あの街は雑貨で有名だから私も昔何度か行きました」
「そいつさ、元々は君のお父さんと同じで教師だったんだ、地学のね。でも身体を壊して教職を辞めてね、それで奥さんとカフェを始めたんだ。それこそ最初は右も左もわからない素人経営だったんだけれど、今は結構人気店になってる」
俊はそう言ってからスマホにそのカフェのホームページを表示させた。
「ほらこれ。口コミも割と評価が高いな」
雪子がスマホを覗くと、店はペパーミントグリーンの可愛らしい外観だった。
普通の戸建ての一部を店にしているようで、2階が自宅のようだ。
店内は雪子も好きなナチュラルカントリー風で、奥様の趣味なのか雑貨やドライフラワーが素敵に飾られていた。
「うわぁ、ステキ」
「この店もそうだけれど、結構自宅をそのままって感じで使ってる店多いよね。こういうのを見たら少しはイメージが湧くんじゃない?」
「はい。実はこの前もしうちがカフェになったらってちょっと想像してみたんです。一階の8畳間を2部屋繋げて店にするとか、庭にはウッドデッキを作ったらどうかとか? 考えるだけで凄くワクワクしました。ただ、やっぱり資金的なもが…….」
「もしやるって決めたら、資金はなるべく抑えられるように協力するよ。知恵やツテは無駄にいっぱいあるからね」
「ありがとうございます。大金をかけて失敗したらショックなので、やるとしたら無理なく小さくって感じになっちゃうと思いますが」
「うん、それでいいんじゃないかな? 自分の許容範囲を超えるような事は絶対にやめた方がいい。もしよければ今日帰りに家の中を見せてもらえませんか? やるやらないは別として、建物を見て俺なりに見積もりを出してみるよ。そうすればある程度の予算がわかるだろうから」
「えっ、でもプロの一ノ瀬さんにわざわざお見せするほどの規模でもないので…」」
「そんな事は気にしなくていいよ。さっきの自由が丘の友人の店、あれも最初は俺が概案を出したんだ。もちろん無償でね。だから自宅カフェ作りのノウハウは俺の中にはもうあるんだよ」
俊はそう言って微笑む。
そこで雪子は思い出した。俊が父の鉱物や写真を見たいと言っていた事を。
せっかくだから今日ついでに見て行ってもらおうと思った。
「わかりました。じゃあ帰りにうちへ寄って行って下さい」
雪子が笑顔で言うと、俊は「ありがとう」と言って微笑んだ。