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さすが真子ちゃん、澪ちゃんのことをよくわかってるから元気づけの方法も🍰と美味しい☕️と浮気した健次を見返すくらいに身も心も綺麗になろう🤩😍なんて❣️ 拓君に再会しなかったら出てこなかった言葉だよね🤭❣️ 女の友情はとても深いのだ‼️そして健次なんかよりももっと美桜ちゃんが美桜ちゃんらしくいれる相手がきっと現れるよ❤️
途中、美桜が好きなケーキ店でケーキを買っていく。
美桜はストレスがたまると甘い物を欲しがる癖があるからだ。
美桜のアパートへ到着しインターフォンを押すと、すぐに美桜が出て来た。
美桜は真子が来る事を予想していたのだろう。
ジーンズとTシャツに着替え、髪もメイクもきちんとしていた。
しかしその目は腫れて赤く充血している。相当泣いたのだろう。
「美桜……」
「真子ーーー!」
美桜は真子を見るなり抱き着いて泣き始めた。
真子はそんな美桜をギュッと抱き締めると、優しく背中をトントンと叩いた。
美桜は北海道の旭川市出身で、大学一年の頃からこの岩見沢市内で一人暮らしをしていた。
大学二年の時に健次と付き合い出してからは、健次が大学を卒業するまで半同棲のような状態だった。
美桜は弟が二人いる長女なので、とてもしっかり者だ。
いつも真子が悩んだり落ち込んだりしていると、すぐに傍へ来て励ましてくれた。
そんな姉御肌の美桜のあまりの弱りように、真子はショックを隠し切れなかった。
美桜が少し落ち着いたところで、真子は美桜をダイニングチェアに座らせる。
そして、キッチンでお湯を沸かし始めた。
美桜の家にはしょっちゅう遊びに来ているので、今では何がどこにあるかは把握済みだ。
お湯が沸いて紅茶を入れた真子は、買って来たケーキと共に美桜の前に置いた。
そして聞いた。
「で、別れる理由はなんだって?」
美桜は真子が入れてくれた紅茶を一口飲むと、ホッとした表情になる。
それから重い口を開いた。
「他に好きな人が出来たんだって…」
「そっか……それは職場の人?」
「うん。派遣で働いている若い子だって」
「若いって…いくつ?」
「24」
「そんなに若くないじゃん! それに健次さんって若い子にはあまり興味ないって感じだったのに……」
真子は憤慨していた。
真子が知っている健次は、人を年齢や見た目で判断するような人ではなかったはずだ。
美桜の見た目は華やかな可愛い系だったが、健次は美桜の外見だけに惚れた訳ではない。
健次は美桜の内面にとことん惚れ込んで付き合い始めたのだ。
だからこそ二人は長い期間交際を続けてきた。
それなのに同じ会社の若い派遣に目移りしたと聞いて、信じられない思いでいっぱいだった。
「その人の事、美桜は知ってるの?」
「うん……去年健次の職場のバーベキューパーティーに連れて行ってもらったでしょう? あの時に会ってたの。挨拶した程度だったけどね」
真子はその時、確か美桜からそんな話を聞いたなと思い出した。
「どんな感じの人?」
「うーん…あの時は特に何も感じなかったけれど、今思えば男に媚びるタイプだったかも。服装も露出が多くてメイクも男好きしそうな感じ? 派遣って二つにタイプが別れるじゃない? 謙虚で地味なタイプか、派手で男あさりをするタイプか? 彼女は後者だったかな…」
美桜はそう答えると、真子が買ってきたケーキを食べ始めた。
真子は、美桜がとりあえずケーキを食べてくれたのでホッとしていた。食欲があるなら安心だ。
「でもさ、健次さんが男に媚びるタイプの女性にひっかかるとは思ってなかったよ。だって、そういう女性が一番苦手って感じだったじゃん?」
「私だってそう思ってたわよ。だからバーベキューに行った時だって何も心配はしていなかったし……でもさ、私が最近あまり構ってあげられなかったから魔が差しちゃったのかなあって。そう思うと、私にも責任があるのかもしれない」
そこでまた美桜が泣きそうになったので、真子は慌てて言った。
「ほらほら泣かない! ケーキケーキ、美桜の身体は糖分必須でしょう? ケーキ食べたら元気になるから、ほら、食べて食べて!」
すると美桜はプッと笑った。涙を流しながら笑っている。
「ちょっとー、それどういう意味よー! 私の血はワインで出来ている的な? なんか昔の女優が言ってたやつじゃん!」
美桜は涙をティッシュで拭いながらも笑いをこらえきれない様子だった。
「だってそうじゃん。美桜のストレスは大抵甘い物で収まるんだから! それに…それによ、もし健次さんが魔が差したのなら、ある日ハッと目が覚めてまた美桜のところへ戻ってくるかもしれないよ。だからさ、ちょっと様子を見てみるのも手だよ」
「えーっ? 私潔癖症だから駄目! 一度こっぴどい振られ方をしたら二度とその男には戻れないわ。それが例え健次だったとしてもね」
美桜は鼻をフンと鳴らしながら捲し立てた。
(そうそうその調子……いつもの美桜が戻ってきた)
真子は内心ホッとしながら、
「じゃあさ、健次さんがお願いだから美桜もう一度俺の所へ戻ってきてくれーって懇願されるくらいイイ女になって見返してやれば? それで今度はこっちから振ってやるの!」
普段はおとなしい真子からの意外な言葉を聞き、美桜がパァッと顔を輝かせる。
そして言った。
「それ乗った! やるやる! もうね、そのくらいしてやんないと気が済まないわよ。だってさー、7年だよ7年! 女の一番いい時期を健次の為に捧げてきたんだよ? それをなんなのよ、今さらポイッて! もうあったまきたから絶対に見返してやるーっ」
「そうだそうだ頑張れー! 全力で応援するぞー!」
真子があまりにも大きな声で言ったので、次の瞬間二人は目を合わせて大声で笑った。
結局その日真子は、美桜の家で焼きそばを作り美桜と昼食をとった。
そして美桜が落ち着いたのを確認してから、午後は再び工房へ戻った。
美桜がなんとか少し元気になったのでホッとした真子は、午後から再び作品作りに取り掛かる。
布を染液につける長さの違いで、染め上がる色に微妙な差が生じる。
真子は何枚もの布をつけ込み、その色の差を確認した。
10枚ほど染め上げた後染めの作業を終える。
そして少し休憩をしようと、電気ケトルのスイッチを入れた。
その時、ドアをコンコンとノックする音が聞こえた。見るとガラスの扉の向こうに拓が立っている。
真子は慌ててドアの傍まで行き扉を開けた。
「どうしたの? 今日は札幌じゃなかったの?」
「うん、今戻って来た。今日は教室がないって言ってたから真子の職場を見学させてもらおうと思ってさ。アレ? お友達は?」
「あ、美桜は今日急に休みになって…」
「なんだー、せっかくだから挨拶しようと思ったのに」
拓はそう言って真子に菓子折を渡した。
それは真子が以前拓に話していた、美桜の大好物のクッキーだった。
拓はその事を覚えていて、わざわざ札幌で買ってきてくれたのだ。
「ありがとう。美桜喜ぶわ! 明日渡すね」
「うん。え? でも具合が悪いんだろう? 明日は出て来られるの?」
そこで真子は立ち話もなんだからと、拓に椅子に座るよう言った。