テラーノベル
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私の名前は宍戸地獄子(ししどへるこ)。
パンクでロックな両親に育てられた二十三歳独身女だ。私は今、Youtubeで見た闇の眷属の召喚法を賃貸のアパートで試している。
「ロウソクよし。魔法陣よし。生きた鶏………は流石に無理だからスーパーの鶏肉で代用して………後は適当でいっか。」
儀式の準備を終え、呪文を唱える。
「レナ・ニリワカ・ノシタワ‼」
しかし何も起こらない。
「なんだよぉ。結局鶏肉を赤ワインでびちゃびちゃにしただけじゃん………勿体ないから焼いて食べよっと。」
私が鶏肉に手を伸ばした瞬間、部屋中に紫色の煙がぼわんと広がる。
「うわっ⁉」
思わず尻もちをつく。
「はじめまして、ご主人様。あなたのドッペルゲンガーです!!」
そこには私と同じ姿の全裸の女が堂々と立っていた。
「服を着させてくださりありがとうございます!!」
水色のパジャマを着たドッペルゲンガーが満面の笑みを浮かべる。同じ茶髪に同じ顔なのに表情が違うだけで別人みたいだ。
「そりゃすっぽんぽんのままいられても困るもの。」
それにしても妙だ。ドッペルゲンガーって見たら死ぬんじゃなかったっけ?
「本来はそうなのですが今回ご主人様がアクロバティックな方法で私を召喚したため、私、不完全なドッペルゲンガーになってしまったようです。」
「なるほど?」
「おかげでお互い死ななくてラッキーですね!!」
「随分ポジティブねあんた。………まぁいいわドッペルゲンガー。」
「何でしょうかご主人様!!」
「闇の眷属であるあなたに命じるわ。明日、私の代わりに派遣先の携帯販売店に行って仕事してきなさい。」
「はいよろこんで!!」
僥倖。これでしんどい労働ともおさらばよ。
翌朝。
「ではご主人様、いってきます。」
ピシッとレディースのスーツを着たドッペルゲンガーが敬礼する。
「ん、いってらっしゃい。」
タタタッと駆けていくドッペルゲンガーを見送った後ふーっと肺の空気を全部吐き出す。
久々の休暇だ。思えば人員が足りないとか研修がどうとかクレームがどうとかでずーっと休めてなかった。そりゃ黒魔術にも手を出すってもんだ。
アパートに敷いてある布団に寝ころびスマホを弄ってだらだら過ごす。ドッペルゲンガーは大丈夫だろうか?眷属だからってあんな過酷溢れる労働環境にいきなり放りこんで悪いことしちゃったな。シフォンケーキでも焼いて労ってあげよう。そうこうしてる内にすっかり夜になった。
「ただいま帰りました!!」
激務を終えたはずなのに元気いっぱいなドッペルゲンガーが帰ってきた。
「お疲れ様、どうだった。」
「ケータイの契約を二件取って、お客様とお付き合いすることになりました。」
「ふーん、契約を二件取っ手お客様と付き合うことになったのね。………はぁ⁉」
「わーおいしそうな匂い。なんですかこれ?」
「シフォンケーキは今いいから‼なんなのあんた私のいないところで何やらかしてくれてんの⁉」
「おいしー‼ご主人様は料理の天才ですね‼」
「話を聞けぇ‼」
呑気にシフォンケーキを食べるドッペルゲンガーの肩をぐらぐら揺らす。もうやだ。頭痛くなってきた。出会って一日で付き合うって何?
「………取り合えず、付き合うことになった相手と経緯を教えなさい。」
「楓子(ふうこ)さんです‼」
ドッペルゲンガーはスマホで楓子さんとやらのLINN写真を見せる。茶髪にボブヘアー。………すごい美人。
「ってか女の人じゃん⁉」
「何か問題でも?」
ドッペルゲンガーがシフォンケーキを食べながら首を傾げる。
くっ、こいつ。多様性を盾に取りやがって。
「地獄子って珍しい名前だねーって会話から話が弾んじゃって気づいたらデートの約束まで取り付けちゃいました。」
「そんなことある?」
私の知ってる世界のコミュニケーションと大分違うぞ?
ドッペルゲンガーは頬に手を当て身体をくねくねさせている。
「ってかデートって………どうすんのよ仕事は?」
「え?仕事とか適当な理由つけて休んだらよくないですか?」
「良くないわよ。それで契約切られたら私無職なんですけど?」
「いやです!!デート行きたい行きたい行きたーい!!」
ドッペルゲンガーはみっともなく駄々をこね続ける。自分と同じ姿したやつが駄々こねてる姿って見るに堪えないわね。
「はぁ………しょうがないわね。その日は私が仕事行くからあんたはその楓子さん?とやらとデートしてきなさい。」
「………いいんですか?」
「そのかわり、デートの日以外は私の代わりに働くこと。いいわね?」
ドッペルゲンガーが目を輝かせ、ゴールデンレトリバーのように私に飛びついてくる。
「ありがとうございます!!ご主人様大好き!!」
全くどうしてこんなことになったのだろうか。
ご主人様に仕事に行かせて自分はデートに行こうだなんて、こいつはドッペルゲンガー失格だ。
コメント
3件
第1話読みました!タイトルからして面白そうだなって思ってたけど、予想以上に自由すぎるドッペルゲンガーちゃんに爆笑しました😂 召喚シーンの「生きた鶏は無理だからスーパーの鶏肉」ですでにツボったのに、その後の全裸登場→あっさり着替えて仕事行く→契約2件取ってお客様(美人女性)と付き合うって…自由すぎんか?!笑 地獄子さんのツッコミも絶妙で、このコンビの掛け合いがめっちゃ好きです✨ シフォンケーキ食べながら「何か問題でも?」って首傾げるところとか完全に癒しキャラになってて可愛いし… 続きが気になりすぎます!トド村さん素敵な作品ありがとうございます🌸
きょうふ
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西瓜@不定期
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色々するオタク
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