テラーノベル
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ドッペルゲンガーが楓子さんとデートに行く日曜日の朝、私は久々に派遣先の携帯ショップへと向かった。
憂鬱だ。隕石とか降って職場が消し飛ばないかな。
日曜日は平日より客が多い。
そのため今日は職場の人達が全員集まっている。
職場の人達は糸目和風美人顔のお局と金髪ギャルメイクの先輩とツインテ巨乳の同僚の三人だ。
始業前なのにもう皆仕事の準備をしている。
「………おはようございます。」
覇気のない声で職場の人達に挨拶する。普段ならスルーされていただろう。
だが今日は様子がおかしい。
「おいっすー。あれ?へるちん今日なんか顔色悪いね。」
金髪ギャルメイクの先輩が気さくに私に話しかける。
「あらあら地獄子ちゃん。体調管理も仕事の内ですよ。」
糸目和風美人のお局が頬に手を添え優しい口調で私を窘める。
「おせーぞ宍戸!!今日も契約取りまくるぞオラァ!!」
ツインテ巨乳の同僚が私の背中をバシバシ叩く。
何が起きているんだ?普段皆私のことなんてこれっぽっちも気してないのに。
………そうか、ドッペルゲンガーのしわざだ。あいつこの短期間で職場の人達と打ち解けたんだ。
恐るべきコミュ力、私には一生できない芸当だ。
携帯販売の業務が始まる。私はこの仕事に絶望的に向いてない。
まず笑顔で接客、これが無理。
無理矢理笑おうとすると表情筋が攣る、こんな風に。
「お、お客様ぁ………こちらが乗り換えプランになりまぁす。」
私から料金プランの説明を聞いてた女子大生の客が不安そうな顔で私の顔を見て
「やっ、やっぱり大丈夫ですぅ!!」
と慌てて店内を出る。
私は大きくため息をついた。
何故私がこんな向いてない仕事をしているかというと、コミュ障が原因で大学を中退したからである。
それで就活とかロクにせずに適当な転職サイトに登録したらあれよあれよと派遣社員としてここで働くことになったわけだ。
結局その日、私は一件も契約が取れなかった。
「どんまいどんまい。そーゆー日もあるってぇ。」
ギャルメイク先輩が私を労う。
「最近調子よかったのにどうしちゃったのかしら?」
お局が首を傾げる。
言えない、調子が良かった私はドッペルゲンガーでこれが本来の私ですだなんて絶対言えない。
締め作業のせいで残業。くたびれたスーツ姿で電車に乗り込み帰路につく。
ドッペルゲンガーももうデートから帰ってきている頃だろう。
アイツ夕飯食ったのかな?もしかしたらおなかを空かせているかもしれない。帰ったら炒飯でも作ってやるか。
「ただいま。」
「………おかえりなさい。」
アパートの狭い玄関でドッペルゲンガーが私を迎える。
「なんか元気ないわね。どうしたの?」
「………ご主人様、私、楓子にドッペルゲンガーだってことバレちゃったかもしれません。」
「………は?」
あまりの衝撃に頭の中の炒飯のレシピが吹き飛んだ。
私はひとまずドッペルゲンガーの話を聞くことにした。クッションを敷いて机を挟み向かい合う。ドッペルゲンガーが口を開いた。
「それは、楓子さんとデートで植物園に行った時のことでした。」
【以下、ドッペルゲンガーの回想】
「歩き回って疲れたでしょ?あそこのベンチで休憩しよう。」
「はい!!」
白のサマーニットを着たドッペルゲンガーと黒のロングワンピースを着た楓子が植物園の熱帯エリアのベンチに座る。
「楓子さん楓子さん!!このみかんソフトすっごくおいしいですよ!!楓子さんも一口食べてください!!」
ドッペルゲンガーがソフトクリームを差し出すと、楓子が長い黒髪をどかしながらソフトクリームを一口食べる。
「うん、おいしいね。」
楓子が大人びた表情で微笑む。
「それにしても静かでいいところですねー。こうして楓子さんと二人きりでソフトクリームが食べられて嬉しいです。」
顔を赤らめ、ドッペルゲンガーがちらちらと楓子の横顔を見る。
「ふふっ、君は本当に表情豊かだね。」
「そうですかぁ?」
ドッペルゲンガーがソフトクリームで顔を隠す。
「……そうだ、君に聞きたいことがあるんだ。ちょっと耳を貸してくれるかい?」
「はいよろこんで!!」
うきうきした様子でドッペルゲンガーが楓子に近づく。
「君、人間じゃないよね?」
楓子が耳元で囁く。
じめじめした空気がドッペルゲンガーの肌に纏わりつく。熱帯植物の影が楓子とドッペルゲンガーを覆っている。
「………楓子さんって面白い冗談を言うんですねー。私めちゃくちゃ人間ですよ?」
ドッペルゲンガーが努めて明るい声を出す。
「誤魔化さなくてもいいよ。初めて会った時からずっと人ならざる気配を感じていんだ。ちょっと失礼。」
楓子が透き通るような白い手でドッペルゲンガーを顎クイする。
「なっ⁉」
ドッペルゲンガーの手からソフトクリームが地面にこぼれ落ち、べちゃっと音を立てる。
「…..なるほど、ドッペルゲンガーか。これはまずいね。」
ドッペルゲンガーがベンチから立ちあがり後ずさる。
「あ、あなた一体なんなんですか⁉」
「安心して。私は君達の味方だよ。」
楓子さんが両手を上げて目を細める。
「私は黒瀬楓子、黒魔術師兼YouTuberをしているどこにでもいるお姉さんさ。一度君のご主人様、地獄子ちゃん本人に会わせてくれないかい?このままだと地獄子ちゃんの命が危ない。」
楓子さんが真剣な顔でそう言った。
トド村
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コメント
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この展開、めちゃくちゃ気になりますね!地獄子さんの職場の描写が生々しくて「コミュ障あるある…」と共感しつつ、ドッペルゲンガーのデートパートで柔らかい空気に切り替わる構成が絶妙。楓子さんがまさか黒魔術師兼YouTuberだったとは…「命が危ない」って不穏すぎます。二人の掛け合いも好きだし、続きが気になる!