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それと…拓君が真子ちゃんとの事を正直に話してその話を有希がちゃんと聞いてくれて良かった。 そして8年間の重みや真子ちゃんを忘れられなかった事、広い砂浜の中から小さな桜貝を見つけるくらいとても大変な状況でも諦めずに真子ちゃんを探し出した事… すべてを真剣に聞いて有希が納得して諦めたのが本当に良かった。 相手の気持ちを考えれる人で良かったし、そんな有希と高部がうまくいくように祈ってしまった🙏
有希はこれまでの恋愛でチヤホヤされたり略奪なんかもあったのかな… 拓君も真子ちゃんと付き合う前と真子ちゃんが消えた後はもしかしたら有希と似たような恋愛もどき⁉️をしてたのかもしれないね。 だから有希の発言に対しても過去の自分が重なって拓君なりに落ち着いて対処できたのかも⁉️ そう考えると拓君と真子ちゃんは心と心が繋がってる運命の相手なんだよね🥰👩❤️💋👩💕 2人の結婚💒がとても楽しみ〜🥰🌸🌷💍
「実は俺と彼女は高校の時に一度付き合っていたんです」
その言葉に皆が拓を見る。
「その後、色々あって8年間別々の人生を歩んでいました。そしてこの町で再会したんです。その8年間、俺は彼女の居場所を知らなかったんですよ。で、今回の仕事の件で偶然彼女がこの町にいる事がわかって会いに来たんです」
そこで皆がホーッと感嘆のため息を漏らす。そして高部頷きながら言った。
「それは凄い運命的なものを感じますね」
「はい。俺は会えない8年の間、一日たりとも彼女の事を忘れた事はなかったんです。そしてやっとこの町で再会出来た。だからもう離れたくないと思って先日プロポーズしました。この後どういう流れで結婚に向かっていくかはこれから二人で相談しないとですが、俺は絶対に彼女からは離れないって決めています」
拓は言い終わるとビールをグイッと飲み干した。
そこで男性陣から拍手が漏れる。皆が拓の熱い思いを聞いて感動していた。
おそらく既婚者達は妻と出会った頃の事を思い出しているのではないだろうか?
拓の恋人への熱い思いを聞き、男性陣は純粋に感動していた。
一方、有希は愕然としていた。
自分が狙っていた男性が、恋人への思いを純粋に語るのを聞いて正直戸惑っていた。
イケメンで女遊びにも慣れていそうな都会の男が、8年前に別れた女性をずっと一途に思い続けていた。
居場所もわからず再会できる保証もないのにずっとだ。
その時有希の脳裏に過ったのは、
(私の入る隙は無い…)
だった。
8年もの長い月日を乗り越えて再会した二人の間に、まだ出会って日の浅い自分なんかが入り込む隙はない、そう思った。
そしてこんなにも思われている彼の恋人に対して叶う訳ない…とも思った。
彼にそんなにも思われている女性は、一体どんな人なのだろうか?
有希はその女性に興味を引かれた。
そして考える。自分は今まで一人の男性にそこまで思われた事があっただろうか?
有希は過去の恋愛を思い返してみるが、残念ながら一つもなかった。
有希はさっきまで拓を恋人から奪ってやろうと思っていた。
なんとかこの出張期間中に、奪って自分の恋人にしてみせる、そう意気込んでいた。
そしてその自信もあった。
しかし拓の恋人への思いを聞いて、その気持ちは一気に失せてしまった。
(フフッ、絶対無理、叶う訳ない…)
有希は心の中でそう呟くと、素直に負けを認めた。
そしてホッと息を吐く。
その時拓が有希に聞いた。
「小澤さんは人を好きになるってどういう事だと思いますか?」
突然そんな質問をされたので有希は一瞬言葉に詰まる。
それから思うままに答えた。
「今までは、相手を自分のものにしたい、自分だけのものにしたいって思っていたかもしれません」
それを聞いた拓は静かに言った。
「私も以前はそう考えていました。でもね、彼女と出会ってその考えが変わったんです。本当に人を好きになるっていうのは、相手の幸せを心から願う事なんじゃないかなってね。こうして欲しいとか、こうしてくれないと嫌だとかそんな考えはどうでもよくなるんです。とにかく相手にはいつも笑っていて欲しい、いつも傍にいてくれるだけでいい…そんな風に変わりました」
拓の言葉に、その場にいた全員が黙り込む。
もちろん有希もその言葉の重みを受けとめていた。
そして一呼吸おいてから拓に聞いた。
「それは長谷川さんの彼女に対する思いなんですね?」
有希がとげとげした言い方ではなく素直な気持ちで言ったので、拓は微笑んで言った。
「そうです。私は彼女にずっと笑っていて欲しいし、傍にいてくれさえすればそれでいいと思っています」
拓の晴れ晴れとした笑顔を見た有希は、自分が完敗した事を認める。
(二人のような恋愛を、私もいつか出来る時がくるのかな?)
有希はそんな事を思いながら吹っ切れたような笑みを浮かべる。
そして拓に聞いた。
「私にもいつかそんな相手が現れるでしょうか?」
「うん、きっと!」
拓は穏やかに微笑んだ。
拓の答えを聞いた瞬間、有希の心がスーッと軽くなるような気がした。
そして、今までの自分はなんと傲慢で愚かだったのかと悟る。
有希は拓のお陰で本来の自分の姿が見えたような気がした。
それまでの自分は、仮面を被り偽りの人生を歩んでいたのだ。
その事に気付けた今、有希は拓に対して感謝の気持ちでいっぱいだった。
(もう虚勢を張って生きるのはやめよう…素直な自分に戻ろう…)
有希は心からそう思った。
楽しい宴会は9時まで続き、その後お開きとなった。
店を出ると、一部のメンバーは二次会へ行く事となった。
拓と細田と安藤はここで失礼する事にする。
「じゃあ、また明日からよろしく」
「俺たちは三次会のカラオケまで行くぞー!」
「今夜は無礼講だー」
二次会へ行くメンバーは盛り上がっていた。
そんな中、有希が拓の傍まで来て言った。
「今日は色々お話し出来て凄く楽しかったです。また明日からは純粋な仕事仲間としてよろしくお願いします」
有希はそう言うとペコリとお辞儀をした。
すると拓は微笑みながら言った。
「こちらこそ! 明日からまた頑張りましょう!」
その言葉に有希はにっこりと微笑むと、二次会メンバーがいる方へ歩いて行った。
今まで有希の顔に表れていた勝気な表情はすっかり消え失せ、とてもナチュラルないい顔をしていた。
女性は考え方一つでこうも表情が変わるのかと拓は少し驚いていた。
その時高部が近づいて来て言った。
「彼女、長谷川さんの事諦めたみたいですねー」
「え?」
「ハハッ、みんな知っていましたよ。彼女が長谷川さんを狙っていた事を。でも諦めたみたいですね。一体どんな魔法をかけたのかな?」
高部がニコニコして拓に聞いた。
「いや、俺は何も……」
「まあ長谷川さんの恋人に対する熱い思いには僕達も感銘を受けましたから、きっと彼女も同じ思いだったのかな?」
「はぁ…」
「でも良かったです」
「え?」
「彼女が長谷川さんを諦めてくれて。僕がアタックできますから」
「え? それってつまり?」
「まあそういう事です。では、おやすみなさーい」
高部は拓に微笑んで会釈をすると、二次会組の後を追いかけて行った。
「お疲れ様でした」
拓は高部の背中に向かって声をかける。
それから歩き始めた。
歩きながら拓は、
「なんだ、そういう事か」
思わずそう呟いてフフッと笑った。