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体育館の床は汗でわずかに湿っていた。バスケの練習中、遥はチームメイトのパスミスをフォローしようと必死に走った。狙いすましたかのように、男子が肘で肩をぶつけ、他生徒は後ろからボールを奪って笑う。
「おい、動き鈍っ!」
「見て、遥また必死!」
必死でパスを返すたび、周囲から嘲笑の波が押し寄せる。ただ仲間を助けようとしているだけなのに、それは「笑いと怒りの対象」と化していた。ボールを奪われ、床に押し倒され、手を軽く踏まれる。息が詰まるような痛みと羞恥が混ざり、体の中で焦燥が渦巻く。
放課後、体育館の隅に残された遥は、クラスの数人に囲まれた。笑いながら、持っていた体育用品で肩を突かれ、軽く足で蹴られる。善意で動いた身体の反応が、彼らの楽しみとストレス発散の道具に変わる。
「ねぇ、もっと本気出せよ、遥。面白くなるだろ?」
「うわ、必死にやっても意味ないじゃん。俺らの遊び道具だよな」
声に出さずとも、表情や体の動きで彼の必死さはすぐに見抜かれ、からかわれる。善意が逆手に取られ、体も心も捕らえられる瞬間。遥は震えながらも、かろうじて声を出した。
「……ごめん、もう……」
手を押さえられ、ボールで体を軽く叩かれ、汗と恐怖で視界が揺れる。善意を出した瞬間に受ける残酷な反応が、逃げ場のない屈辱と痛みの連鎖となって身体中に響く。逃げようと足を動かせば、さらに笑い声と突き押しが重なる。
この一連の攻撃は、善意を示すたびにエスカレートしていく。「助けようとした自分が、どんどん笑い物になり、暴力の対象になる」という残酷なループ。遥の胸の奥では、必死に生きようとする気持ちと、存在そのものを否定される痛みが交錯していた。
やがて、体を押さえつけられたまま、クラス全体の視線に晒され、善意を出すたびに嘲笑される状況に、遥はただ息をつくことしかできなかった。小さな声が漏れる。
「……俺、もう……」
善意の行動が、全員の娯楽と攻撃の道具に変わる。体も心も、完全に掌握されている感覚。逃げることも、反論することも許されず、遥の必死さだけが、さらに残酷に踏みにじられていく。