その頃、良輔は両親と車の中にいた。先ほどまで絵里奈の実家へ挨拶に行っていた。
良輔の両親は絵里奈の実家がその地域の地主だと知り、かなりご満悦な様子だ。
「凪子さんよりも若いし、何よりもあなたの子供を産んでくれるんだから返って離婚して良かったんじゃない? 漸く朝倉家にも良い運気が回って来たのかしら」
良輔の母親は、後部座席で嬉しそうに笑う。
すると助手席に乗っていた父親も言った。
「なんならうちを二世帯住宅にでも建て替えるか? 孫が出来たら俺達が世話してやれるからその方が便利だろう?」
「ハァッ? 俺は左遷されたばかりでローン組む余裕なんてないからな。ただでさえ慰謝料もあるっていうのに…」
「その慰謝料の一部を誰が払ってやると思ってるんだ?」
良輔の父親は急に圧を込めて言う。
「…………」
もちろん良輔は何も言えなかった。
そこで父親は満足したのか、またご機嫌な様子で言った。
「二世帯住宅に住んでくれるなら、建築費は全部父さんが出してやってもいいぞ」
「そうよ良輔、それがいいわ! そうしなさいよ」
母親もルンルンしてかなり乗り気のようだ。
「ハァーッ? そんなの勝手に決めないでくれよ。絵里奈に聞かないと勝手には決められないよ」
良輔は父親になる覚悟を決めていた。
向こうの親にバレてしまった以上、もう逃げる事は出来ない。
だから覚悟を決めるしかなかった。
絵里奈の実家は金持ちだった。そして絵里奈は一人っ子だ。
親の財産はいずれ絵里奈にくる。となると良輔の老後も安泰だ。
それに何よりも自分の親が孫が出来る事を心から喜んでいる。
当初は浮気をした良輔に対し実の両親もかなり手厳しかった。
しかし絵里奈が妊娠している事を知ると、急に手のひらを返したように優しくなった。
そして慰謝料の支払いの足りない分を出してくれるという。その上今度は家もだ。
これを利用しない手はない。こうなったら、あとは流れに身を任せるだけだ。
そう思い、良輔は父親になる覚悟を決めたのだった。
出向先の倉庫は、単調な仕事ばかりで楽と言えば楽だがやりがいは全く感じなかった。
ここで定年まで過ごすのかと思うと絶望的になる。
だから、絵里奈と家庭を持って落ち着いた後は転職活動をしようと考えていた。
自分には営業が向いているのだ。
営業マンとしてバリバリ働いていたあの頃の輝いている自分を思い出すと、なんとしてでもまた営業職へ戻りたいと強く思うようになっていた。
とりあえず今は両親や絵里奈の言う通りに大人しくしておいて、いずれ行動を起こそうと思っていた。
自分の蒔いた種とは言え、急にこんな状況になってしまったがよく考えればそれほど最悪な事態でもなさそうだ。
徐々に運気は自分に向いてきている。
(俺は必ず復活してみせる!)
良輔はそう心に誓うと、ニヤリと笑って運転を続けた。
コメント
3件
あぁ、本当にこの一族と縁が切れてよかった!
良輔〰️良く結婚出来たね~? しかも出来る女の代名詞の様な凪子と😓 両親との会話を見てもヘタレ過ぎて呆れる。 良輔の頭はお花畑ですね😮💨
やっぱり腹黒な良輔🐦⬛アホー 絵里奈と同じ穴のムジナでお似合いだわ🤣🤪 絵里奈の話を鵜呑みにして自分で確認や動かない良輔のどこに運気が巡ってきてるって感じるのか意味不明🌀 双方の親も親なら子も子で、色んな意味で釣り合っててお似合いです😏 早く凪子さんからの贈り物🎁届かないかなぁ〜♪