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ここから涼平さんとスタートだったんですね❣️ 真子ちゃんも拓くんも自然に話せる関係がナチュラルで好きです😊💓
涼平りょうへいとありますがダブりではないですか?
調剤薬局で薬を受け取った真子は、電車に乗り高校の最寄り駅まで移動する。
病院がある日はいつも駅の近くにあるカフェ・Moonbucks Coffeeでお昼を食べてから学校へ行く。
今日は病院が空いていたので、11時過ぎにカフェに着いた。
(二時間くらい勉強できるわ)
真子はカフェでの一人時間が好きだったので、長居できるのが嬉しかった。
店内から漂って来るコーヒーの香りで、先ほどまでの嫌な気分も癒される。
店に入ると、早速お気に入りのサンドイッチとカフェラテを注文した。
会計を済ませトレーを持ってどこに座ろうかと辺りを見回す。
まだお昼には少し早いせいか、店内は空いていた。
真子は窓際に空いた席を見つけるとそこへ向かった。
椅子に腰を下ろしホッと息をつくと、早速サンドイッチを食べ始める。
その時、聞いた事のある声が耳に響いてきた。
声の方を見ると、そこには長谷川拓がいた。
聞き覚えのある声の主は拓だった。
(長谷川君だ……)
真子はサンドイッチをもぐもぐしながら拓の方をチラリと盗み見る。
拓は30歳前後の男性と、楽しそうに話していた。
拓が話している男性は、グレーのパンツに白シャツを着た真っ黒に日焼けした筋肉質の男性だった。
一体どんな知り合いなのだろうか?
その時、真子と拓の視線がぶつかる。
その瞬間拓はびっくりした顔をしていたが、すぐにニッコリと真子に微笑んで会釈をした。
それと同時に、拓が話していた男性も後ろを振り返り真子に軽く会釈をする。
(あ、見つかっちゃった…)
真子も慌ててペコリと頭を下げた。
しかし拓は男性との会話をやめる気配がなかったので、なんとなく真子はホッとしていた。
サンドイッチを食べ終わった真子は、トレーをテーブルの隅に寄せると参考書を取り出した。
美大を受験すると言っても、実技だけでは受からない。
しっかり学科も勉強しておく必要がある。
真子は拓がいた事などはすっかり忘れて、勉強に集中した。
そしてしばらく英語の問題集に取り組んでいると、頭の上で声がした。
「よっ、偶然だね」
真子が顔を上げると、拓がが机の横に立っていた。
「あっ、こんにちは! あれ? さっきの人は?」
「うん、先に帰った。ここ座ってもいい?」
「え、あ、うん…いいよ」
真子はそう言うと、参考書を閉じてトレーを引き寄せる。
すると拓は、真子の空のマグカップを覗き込んでから言った。
「一杯奢るよ。何がいい?」
「え、いいの?」
「うん。俺ももう一杯飲んでから学校行きたいからさ」
「ありがとう。じゃあホットのカフェラテで」
真子は拓にそう伝える。
しばらくして拓は二つのカップを手にして戻って来た。
「はい」
「ありがとう」
真子はペコリとお辞儀をすると、早速一口飲んだ。
真子の前に腰を下ろすと、拓もコーヒーを飲んだ。
拓はコーヒーのブラック派らしい。
「今日は遅刻?」
「うん、病院があったから」
「そっか…宮田さん通院しているんだったね。どこの病院?」
「茅ケ崎医大病院」
「ふーん。どこが悪いの?」
「心臓」
「そっか…。大変だね」
「子供の頃からだから慣れたわ」
「そっか…」
拓はそう言ってからもう一口コーヒーを飲んだ。
そこで、真子は気になっていた事を聞く。
「さっきの人は知り合い?」
「うん。海で知り合った人。サーフィンを教えてもらってるんだ」
「えっ? 受験で部活を引退したのに、新たにサーフィンを始めたの?」
真子は驚いていた。
「うん、なんか勉強だけだと身体がなまっちゃってさ。それに、前からやってみたかったんだよね…」
「ふーん、凄いね。長谷川君は頭がいいからこの時期に遊んでも余裕なんだね」
「そんな事ないよ。ただあの人…凉平さんって言うんだけどさ…設計事務所で働いている建築士なんだ。だから建
築科について色々教えてもらってたんだ」
それを聞いて真子は納得する、
拓のような頭脳明晰でリーダーシップのある人間が、ただのお喋りの為にカフェで時間潰しをするとは思えなかったからだ。
(ちゃんと将来の事を考えてるんだ…)
そこで真子はもう一つ気になっていた事を拓に聞いた。
「この前言っていた、教えて欲しい事って何?」
そこで拓はすぐに思い出して言った。
「そうそうソレ! 『エスキース』ってなんなのよぉ?」
そこでオネエ言葉を発した拓に、思わず真子が笑ってしまう。
「オカマみたい」
「あらそうぉ? で、一体エスキースってなんなのよぉん」
拓は再びふざけて言ったので、真子は笑いが止まらなくなりクスクスと声を上げて笑った。