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第十三章 繋がる願い
第十二話 確かめ合う想い
朝の柔らかな光が薄いカーテンの隙間から差し込んでいた。
薬草の匂い。
木造の部屋の温もり。
ーー帰ってきたんだ……。
ジントはゆっくりと目を開けた。
ぼんやりとした視界。
まだ身体のあちこちが痛む。
肩の辺りは特に熱を持ったようにズキズキしていた。
けれど周囲に人の気配がある。
そのことに、不思議な安心感を覚えた。
ゆっくり視線を動かす。
まず目に入ったのは、ベッドへ上半身を預けるようにして眠るダイチだった。
床へ座ったまま腕をベッドへ乗せている。
群青色の髪が朝日に照らされ柔らかく光っていた。
少し離れた場所では、ハヤトが椅子へもたれて眠っている。
ジュウタロウは壁に背を預け、腕を組みながら目を閉じていた。
そしてシュンタは、椅子に座ったまま今にも落ちそうな変な体勢で眠っている。
その光景を見た瞬間、ジントの胸がじんわり熱くなる。
……本当に、帰ってきたんだ。
そう思った。
ジントはゆっくり身体を起こそうとする。
「っ……」
肩へ鋭い痛みが走った。
小さく顔を顰める。
その気配に、ダイチがハッと目を覚ました。
「ジント!?」
慌てて身体を起こす。
「まだ痛むやろ!? 無理すんな!」
すぐにベッドへ手を添え、ジントの身体を支える。
寝起きとは思えない、素早い動き。
そしてダイチは近くに置いてあったコップを取り、そっとジントへ差し出す。
「ほら、水飲める?」
「……うん」
ジントはゆっくり口を付ける。
冷たい水が喉を通り、少しだけ呼吸が落ち着いた。
その声で三人も次々目を覚ます。
「……ん、……ジンちゃん……!?」
シュンタが飛び起きる。
ハヤトも安堵したように微笑んだ。
「大丈夫か?」
ジュウタロウも静かにジントを見る。
四人の視線を受け、ジントは少し俯いた。
「……みんな」
掠れた声。
「迷惑掛けて……ごめん……」
その瞬間、ハヤトが立ち上がる。
「迷惑なんかじゃない」
強い瞳だった。
「でも……」
ジントは視線を落とす。
「俺がいるから……みんなが危険になる」
「教会に追われて、また、巻き込んでしまう……」
小さな声だった。
けれどその言葉には、ずっと抱えていた不安が滲んでいた。
シュンタが眉を下げる。
「ジンちゃん……それ、俺らが決めることやろ」
ジュウタロウも静かに頷く。
「勝手に一人で結論を出すな」
ダイチはジントの顔を覗き込む。
「ジント、必死に一人で逃げてきたんやろ?」
「ようやったな」
その優しい声に、ジントの目の奥が熱くなる。
涙が込み上げそうになり、慌てて顔を背けた。
その様子を見て、シュンタがわざと明るい声を出した。
「もう遅いって!すでに全員巻き込まれとるから!」
「今さら一人で逃げようとしても無理やで!」
その言葉に、ジントは小さく目を見開く。
そして、ほんの少し笑った。
ジュウタロウが呆れたように息を吐く。
「言い方というものがあるだろう」
「ええやん、伝われば!」
部屋に少しだけ笑い声が戻る。
それからハヤトが優しい瞳でジントを見る。
「俺達は、みんなでジントを守るって決めたんだ」
「俺達がそうしたいから、そうする」
「ジントが何と言おうと、俺たちで決めたことだから」
その言葉に、とうとうジントの瞳から涙が零れ落ちた。
「……っ」
慌てて拭おうとする。
そこでシュンタが立ち上がった。
「もうダイちゃんもジンちゃんも泣きすぎやろ〜」
「俺が慰めたるからな!」
勢いよく抱きつこうとする。
だがその瞬間
「待てや」
ダイチがシュンタの顔を押し返した。
「むぅ!痛いやろ!」
「下がれ!」
「独占欲〜!」
「うるさい!」
久しぶりの騒がしいやり取りに、ジントは思わず笑ってしまう。
その声に気付いたのか、奥から足音が聞こえた。
マーサだった。
「まあ!」
ジントが起きている姿を見ると、マーサはホッと目を細める。
「まだあんまり動いたらダメだよ」
優しくそう言うと、穏やかに微笑んだ。
「今、食事の準備してくるからね」
そう言って台所へ向かう。
やがてハヤトが立ち上がった。
「俺達は一旦宿屋へ戻るよ」
「着替えも必要だしな」
ジュウタロウも頷く。
シュンタは名残惜しそうにジントを見る。
「また後で来るからな!」
三人は薬屋を後にした。
扉が閉まる。
急に静かになる部屋。
しばらく沈黙が落ちた。
やがて
「……ダイチ」
小さな声。
ジントがそっと呼ぶ。
ダイチが振り返る。
ジントは目尻を下げ、柔らかく微笑んだ。
「ダイチが来てくれて……ホントに嬉しかった」
その瞬間、ダイチの表情が崩れる。
「……俺」
震える声。
「めっちゃ怖かってん……」
「ジントが居なくなって……」
「もう、会えんかったらどうしようって……」
ダイチは俯く。
「守るって言ったのに、守れんかった……」
ジントはゆっくり首を横へ振る。
「違うよ」
「ダイチは来てくれた。俺を見つけてくれた」
その言葉に、ダイチの瞳が揺れる。
そして、そっと手を伸ばす。
それから、壊れ物を扱うようにジントを抱き締めた。
ジントもそっとダイチに腕を回す。
「……もう、離さない」
囁くような声。
その一言に、ダイチは息を止めた。
背中に回された、ダイチの服を掴む手に僅かに力がこもる。
ずっと一人で耐えてきたジントが、初めて誰かを求めている。
誰かに縋っている。
その誰かが、自分なんだーー。
「……うん」
震える声。
「俺が、守るから……」
焦がれるように熱い想いが胸から溢れていく。
それはきっと、二人同じもので。
互いにその想いを言葉にすることはできなくても。
今はそれをこうして確かめ合うだけで、十分だと思った。
重なる鼓動が、伝わる体温が、怖いくらい心地よくて。
二人はしばらくそのまま動けなかった。
だがやがて。
グゥゥゥ〜……
静かな部屋に、盛大なお腹の音が響く。
ダイチだった。
「…………」
「……ふふっ」
思わず顔を見合わせる。
そして同時に吹き出した。
「イテテテ……っ」
肩が痛み、ジントが顔を顰める。
だが笑いが止まらない。
「大丈夫か!?」
慌てるダイチ。
その慌てた顔がおかしくて。
また笑ってしまう。
ダイチもつられて笑った。
涙が出るほど笑った後。
ジントはふと思う。
——あぁ。幸せだ。
胸の奥が温かい。
失ったと思ったものが、ちゃんとここにある。
ジントはそっと目を閉じた。
もう一度だけ、この温もりを確かめるように。
コメント
6件
あの歌詞が自然に入っていてびっくりしました!comiさん天才すぎますよ😭✨️ダイチのおなかがなっちゃうところがダイチらしくて可愛かったです(*´`)
歌詞が自然に散りばめられていて天晴です…!二人の本心がそのまま言葉に込められて出てきたようで、胸打たれました。これからも応援してます!続きが楽しみです☺️

どうしてもあのセリフを言って欲しかった願望を叶えました😭
#恋愛
ばたっちゅ
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成瀬りん
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#怪異
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