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泣き顔の跡を水道水で無理やり洗い流した翌日、僕はまた相談相手B子を呼び出した。 あんなに鋭い言葉を突きつけられたのに、僕の心はまだ、完全に諦めるための「理由」を探していた。
「……なんで、あんなこと言ったのかな」
放課後の誰もいない渡り廊下。僕はB子の顔を見ずに、遠くの校庭を眺めながら呟いた。 B子は困ったように、自分のブラウスの袖をいじっている。5年生のとき、二人の仲を面白がって応援してくれていた彼女の面影は、もうどこにもなかった。
「A子、本当に怒ってるのかな。それとも、僕が何か嫌なことした?」 「……[ ]くん」
B子が遮るように僕の名前を呼んだ。その声は、ひどく静かで、どこか突き放すような冷たさを含んでいた。 「もう、聞かないほうがいいよ。これ以上、私が何か伝えても、きっと誰も幸せにならない」
「でも、相談に乗ってくれるって言ったじゃん」 僕の声が、自分でも驚くほど子供っぽく響いた。 B子は一瞬、苦しそうな表情を浮かべて、それから視線を地面に落とした。
「相談相手」という役割が、いつの間にかB子にとっても重荷になっていたのだ。 僕が執着すればするほど、伝言を運ぶB子の立場も苦しくなる。僕がA子を想う気持ちは、今やB子をも巻き込んで、全員を少しずつ削り取っていく毒のようなものに変わっていた。
「……ごめん。私、もう何も言えない」
B子はそれだけ言うと、逃げるように僕の前から去っていった。 残されたのは、冷たい廊下の空気と、行き場を失った僕の質問攻めだけ。
かつては三人を繋いでいた「相談」という絆が、今は粉々に割れた硝子のように足元に散らばっている。 一歩動こうとするたびに、その破片が僕の足を深く傷つけた。
僕は悟った。 相談相手さえいなくなった今、僕とA子を繋ぐ糸は、文字通り一本も残っていないのだと。
#アラスター
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