テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
B子を呼び出したのは、彼女に「どうすればいい?」と答えをねだるためではなかった。 一人で泣いたあの夜、暗闇の中で何度も自問自答し、喉が枯れるまで考え抜いた僕なりの「答え」を、どうしても彼女に、そして彼女の向こう側にいるA子に届けたかったからだ。
「……B子。昨日、ずっと自分で考えてたんだ」
渡り廊下で向き合ったB子に、僕は用意してきた言葉を一つずつ置いた。 それは、誰のアドバイスでもない、僕だけの剥き出しの言葉だった。
「僕が会いに行こうとしたのは、ただのわがままだったかもしれない。でも、5年生の時のあの時間は、僕にとっては『じゃかしていい』ものじゃなかったんだ。だから……」
僕は、自分なりに考えた「これからの距離」や、今の僕にできる精一杯の誠実さを、B子に託そうとした。 相談相手という「窓口」を頼ってはいるけれど、話している内容は、僕が自分自身の心と戦って導き出した、純粋な決意だった。
けれど、僕が自分の頭で考え、真剣になればなるほど、B子の表情はこわばっていく。 「[ ]くん。自分で考えて、そう決めたのは分かった。でも……」
B子は、僕が必死にひねり出した「答え」を、受け取ることさえ怖がっているようだった。 僕がどれだけ一人で考え、どれだけ誠実に言葉を選んでも、一度拒絶の膜を張った世界には、その言葉はもう届かない。
「……もう、これ以上は無理だよ。私が間に入るのは」
B子の拒絶は、A子のものよりも静かで、だからこそ絶望的だった。 自分で考えて、自分なりに最善を尽くそうとした結果が、この完全な孤立だったのだ。
僕は、B子の背中を見送りながら、手の中に残った「自分なりの答え」を強く握りしめた。 一生懸命考えた言葉が、誰にも届かずに自分の手の中で冷えていく。 その感触は、ただ泣くことしかできなかった夜よりも、ずっと鋭い痛みを伴っていた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
#アラスター
8,998