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私は個人で絵のモデルをやっている。今日はちょっと変わったお仕事で、鉄道模型の大掛かりなセットをバックにヌードモデルをやることになった。普通に絵を描いたのではおもしろくないということで、そういう趣向をこらしたみたい。
大きな模型のあるお店を貸し切って、その中で私は裸になっていろいろとポーズをとった。うーん、それにしても模型がよく出来ている。ジオラマっていうんだっけ? この中にいると、自分が巨人になったみたい。
「さあ、小鳥遊さん。今度はその格好のままこっちへ来て」
依頼主さんがそう言って私を呼びつけた。今回の企画を考えた人だ。
「それじゃあ、うーん、今度はこの線路に跨って」
と言われて、線路に跨る。とても大きなセットなので、自分の力だけでは跨げないので、椅子を借りた。線路が股のすぐ下にあって、なんだかそわそわする。と、そこへアシスタントの人が、青い顔して駆けつけた。
「先生、まずいです、セット壊しちゃったかも」
「ええっ、このセット、壊しちゃうとすっごい金額だよ!? まいったな、小鳥遊さんごめん、ちょっと見てくるから、しばらくそのまま待っていて」
といってすっ飛んでしまった。ええっ、このカッコのままは大変だぁ。でも自分ひとりじゃここから動けないや。しかたないから、私はそのままの格好で待つことにした。
と、そこへちちゃな男の子が入ってきた。ええっ、どっからはいってきたの? ここは今日は関係者以外立ち入り禁止なのに! 困ったな、私は裸だし、線路をまたいでいるから動けない……。それに、子どもはほっとけないよね。
「ねえ君、どうしたの?」
私が聞くと、その子はちっちゃくて可愛い声で答えてくれた。
「ぼくね、ママとはぐれちゃったの。ねえ、ママどこぉ?」
とっても不安そうな顔をしている。うーん、迷子になちゃって、それでお店に入ってきたのかな? かわいそうだな。なんとかしてあげたいけど……。でも私は今、裸だから何もできないよぉ。どうしよう?
「あのね、お姉ちゃんはここで動けないんだよ。ほら見て。線路があるでしょう? ここに立ってるとね、そこから出られないの。だから今は君のお母さんを探しに行くことも出来ないんだ」
私はできるだけ優しく言った。すると、男の子は目に涙を浮かべながら言う。
「そんなぁ……」
ああ、泣かないでぇ。よし、こうなったらもうやるしかないぞ。私は決心した。
「いいかい坊や、よく聞いてね。私は今ここから動けない。でもね、安心して。きっとすぐに誰かが助けに来てくれるから。それまでの間、お姉ちゃんが一緒に遊んであげる!」
男の子は少しだけ元気を取り戻したようだった。よかったぁ。
「うん、わかった! お姉ちゃんと一緒に遊ぶ!」(続く)