テラーノベル
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それからしばらくして――。
うち、塚森キミカは高速道路を疾走するバイクの後部座席にすわり、ライダーの腰にしがみついていた。
バイクを駆るのは塚森コウ。
うちより六つ年上の従兄弟だ。
コウはわざわざ童ノ宮までやって来て、うちに知らせを届けてくれた。
数日前から家に戻らず、行方不明になっていたうちの親友、長谷川ユカリを発見したと
コウ曰く、ユカリは童ノ宮市と隣接する夢ノ宮市の境界に位置する山中の廃屋でボンヤリと佇んでいたらしい。詳しいことは知らないけれど、コウの外法は怪異と戦う以外にも、人や物を探すことにも長けているそうだ。
ユカリがそんな場所で何をしていたのかも不明らしいが――、ユカリが生きて見つかったことはうちにとって、いや、うちだけじゃなくて一緒にユカリを探してくれたクラスのみんなや街の人達にとってもすごく喜ばしいことだった。
それに間違いはないのだけど……。
親友が無事発見されたというのにうちは胸騒ぎがするのを拭えなかった。
不安だからだろうか。向かう先――、山の向こうに堕ちてゆく夕陽が何だかよくないものに見えてくる。空に滲む茜色が血の色のように思えてくる。
あまり物事を悪いふうに考え過ぎるなよ。
そう言ってうちらを見送ってくれたのはリョウだった。
お前はちょっと真面目すぎるから、すぐ思いつめてしまうんだろうな。
もっと肩の力を抜いて、ユカリちゃんに会って来な。
そう言って笑ったリョウの顔はいつもより何だか哀しそうに見えて……。
一段落ついたら、ちゃんとお礼言わなあかんな。
思えばリョウには塚森に貰われた時からずっと世話になりっぱなしやし。
なんか恩返しできること、うちにも何かないんやろか?
……少し考えてみたが、何も思い浮かばなかった。
「――ほら、到着だ。降りな」
バイクを停車し、コウが言った。
相変わらず偉そうな物言いだが、特に逆らう理由もないのでそれに従う。
ほんの数メートル先には病院の入り口。
山の麓から見た時より、遥かに立派な建物で病院というよりは完全会員制の高級ホテルか何かに見えた。実際、上階から見下ろす景色はなかなか圧巻だろうと想像がついた。
ここに今、ユカリがおるんや。
確か病院の名前は、コウは「白虎博愛会医療総合センター」とか言ってたっけ。
「なあ、コウちゃん。ここって……」
借りていたヘルメットを脱ぎ、それを手渡しながらうちは尋ねた。
「白虎博愛会って書いてるけど。……ここってひょっとして組織の関係施設?」
「ああ、そうだよ」
あっさりと従兄弟は認める。
「僕はあのユカリって子を見つけ出し、普通に救急車を呼んだだけだけどな。何がどうなってるのかはわからないけど、連中目ざといから」
「そうなんや……」
「そんな顔するなよ。あいつら胡散臭いけど、別に鬼畜生ってわけじゃない。僕のバイト先だし、そもそもレイジおじさん、お前のお父さんだって関係者だろ」
「いや、そうやなくて……。やっぱり、ユカリは怪異に悪さをされたんかなって……」
「それをはっきりさせるための検査入院だろ。……まあ、でもそう心配するなって。怪異がもたらす霊毒にもいろいろあって、ここは比較的軽い症状に対処する病院だからな」
うちはため息をついていた。確かにコウの言う通りだ。
本人と会いもしないうちにあれこれ悩んでも始まらない。
物事は前向きに考えんと……。
「それと――、この間はホンマにごめんな。コウちゃんはうちの後始末、ていうかうちの命を助けてくれたのに……。うち、あんな酷い事言うて……」
「……あー。そー言うのいらないから」
面倒臭そうにコウがさえぎる。
「あんなの、こういう稼業やってりゃ想定内の範疇だ。ましてやお前みたいな中学生が何を言おうと僕が気に病むわけないだろ。……本当に気にしたことなんてないからな」
喋っているうちに苛立ちが込み上げて来たらしい。
チッと舌打ちをしてコウは
「ガキのくせにいつまでも下らないこと引きずってんじゃないよ。中坊は中坊らしく、アホみたいに鼻水でも垂らしてろ」
「いや……中学生にもなったら、特に女子は鼻水垂らさへんやろ」
「いいから行けって。……バイクを止めたら僕もすぐに追いかけるから。受け付けロビーでいい子にして待ってろ」
#異能
#伝奇
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