昼下がり、クラスの数人に誘われて公園に向かう。
「おい、遅えぞ、椿が待ってるぞ」
声の端に笑みが混ざる。遥は走りながら、心臓が早くなるのを感じる。誘われたのは嬉しい。でも、うまくやれなければまた馬鹿にされる――そんな不安も消えない。
公園に着くと、椿が腕を組んで待っていた。
「さあ、始めようか、今日はちょっと特別に遊んでやる」
椿の目が鋭く光る。周囲の仲間も笑みを浮かべて、遥を囲む。
「こっちに座れよ」
「手、ここに置け」
次々に指示が飛ぶ。遥は迷いながらも、体を動かす。失敗すれば笑いものになる。
「……こう?」
小さく呟く声はすぐに仲間の嗤い声にかき消される。
椿が近づき、冷たい視線で言う。
「それじゃ、全然だめじゃん。もっと見せろ、ほら」
遥は頷く。必死に指示通りに動く。顔が熱くなり、手は震える。心臓が押し潰されそうだ。
「おい、顔まで真っ赤だぞ、恥ずかしいの?」
周囲の笑い声がさらに増す。遥は羞恥と自己否定で息が詰まる。
「俺、全然だめだ……」
内心、何度も繰り返す。誰かを責める気はない。ただ、自分が不完全で、うまくできないことだけが悪いのだ。
仲間たちは椿の合図でさらに命令を増やす。荷物を運ばされ、段差に座らされ、変な姿勢を強いられる。遥は必死に応えるが、立ち位置や動きのわずかなズレが笑いを呼ぶ。
「そこの手、もっとこうだろ」
「動きぎこちねえ、犬みたい」
椿の言葉は残酷に、しかし楽しげに響く。遥は心の中で、「もっと頑張らなきゃ……でも全然だめだ」と叫ぶ。必死で体を動かしても、羞恥と自己否定が深まるだけだ。
「じゃあ、次はちょっと特別なゲームだ」
椿がにやりと笑う。仲間たちは息をひそめ、次の指示を待つ。遥は恐る恐る従う。どんな命令も、失敗すれば笑われる。どんな小さなミスも、羞恥に変わる。
内心、遥は自分を責め続ける。
「どうして俺は、こんな簡単なこともできないんだ……」
必死に応え、手を動かし、顔を伏せる。羞恥と屈辱が体にまとわりつき、仲間たちの嗤い声に押し潰されそうになる。椿の目がさらに鋭く光り、周囲の仲間たちがそれを楽しげに煽る。
公園の空気全体が遥を中心に回る。小さな声で「……はい」と答えるたび、仲間の笑いと椿の冷笑が重なる。必死で動く体は、自分でも気づかぬうちに羞恥の象徴となり、周囲の視線に晒される。
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