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昇降口の壁に貼り出された、まだノリの匂いがするクラス名簿。 指でなぞるまでもなかった。僕の名前は「2組」の真ん中あたりにあって、彼女の名前は、そこから数センチ左の「1組」の三番目にあった。
たった数センチ。 けれどその境界線は、僕たちの「ほんの少し仲が良い」という、壊れやすくて名前のない関係を分かつには十分すぎる距離だった。
教室に入ると、窓から差し込む春の光が、埃を反射して薄い青色に透き通っている。 卒業まで、あと十一ヶ月。 カレンダーにすれば、たった十二枚にも満たない薄っぺらな束だ。
隣のクラスからは、僕の知らない誰かと笑う彼女の声が聞こえてくる。 机に突っ伏して、僕は心の中で毒づいた。
「……あと十一ヶ月しかないのかよ、あーあもう」
壁一枚隔てただけで、あの子が急に遠い世界の住人になった気がした。 この薄い青い光の中に、あと何度、彼女の姿を捉えることができるだろう。 一回目のチャイムが、容赦なく「最後の一年」の始まりを告げた。