テラーノベル
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※朝、口論ぽい感じになるバージョン。
痛みで、目が覚めた。
喉の奥が焼けるように乾いていた。
太もも、脇腹、首筋……どこを動かしても軋む。
一晩寝たところで、何も治っちゃいない。
──けど、行かないと。
遥は布団からゆっくりと這い出し、制服に手を伸ばした。
右手の関節が腫れていて、シャツのボタンすらうまく留められない。
「ああ、クソ……」
ぼそっと吐き捨てながら、肩を叩いたその瞬間。
「どこ行くつもり」
低く、抑えた声。
振り返ると、日下部が部屋の入口に立っていた。
朝の空気とは思えないほど、冷えた視線。
「……学校だよ。他にどこ行くってんだ」
遥は睨み返すように言ったが、体は震えていた。
明らかに、まだ立って歩ける状態じゃない。
「まだ動けねえだろ。やめとけって」
「じゃあ、代わりに殴られてくれんのか?」
「……は?」
「オレが行かなかったら、今日の“分”が上乗せになる。それで済むと思ってんの?」
「昨日、“手加減しろ”って伝えた」
「伝えた? 誰に。どうやって。……なんで、そんなことできんの?」
沈黙。
遥の眉がわずかに動いた。
その表情に、疑いと怒りが混じる。
「なに、命令してんの? オレが行ったら、やれって言ってんの?」
「してねえよ。勝手に妄想すんな」
「じゃあ、なんで昨日の“内容”知ってんだよ」
「知らねぇよ。ただ、“想像”しただけだ」
日下部の言葉に、遥はひと呼吸遅れて目を伏せた。
「……ふざけんなよ」
「行きたきゃ、行け。俺は止めねえ」
日下部はそれだけ言って、踵を返した。
──その背中に、遥はかすれた声をぶつける。
「全部……おまえの仕込みだったら、笑えんだけど」
だが、返事はなかった。
閉まったドアの向こうに、沈黙だけが残った。
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