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俺たちのエスキース

第23話 - 第23話

76

2024年07月08日

#恋愛

#大人の恋愛

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#第3回テノコン

#ハッピーエンド

#大人ロマンス

瑠璃マリコ

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瑠璃マリコ

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真子が北海道の岩見沢市へ引っ越してきて一ヶ月が経過した。

転校先の高校は私立の女子高で、真子はもうすっかり馴染んでいた。

この高校は三年のこの時期の転校を快く受け入れてくれた。そして真子の病気に対する理解も深い。

友人達もみな優しく、真子はストレスなく学校生活を楽しんでいた。

そして今日は岩見沢医科大学病院での二度目の診察日だった。

真子は学校を休んで母の英子と共に病院へ向かう。

今日は担当医から手術に関する話があるらしい。

真子を担当する医師は、心臓外科の名医と言われている岸本大輔という医師だった。

岸本は40歳前後のとても穏やかな医師だ。

初めて診察を受けた時、真子はそのあまりにも紳士的な態度に驚く。

杉尾医師とは正反対だった。

診察の際は、多感な年頃の真子に配慮して様々な配慮をしてくれた。

診療方針に関しても、常に真子の意志を尊重し真子の希望に真摯に耳を傾けてくれる。

真子は一度目の診察で、すっかり岸本を信頼するようになっていた。

人の誠実さというものは、例え女子高生でも本能ですぐにわかるものなのだ。

噂によると、岸本医師には現在婚約者がいて結婚の予定があるそうだ。

相手は同じ病院の同じ科に勤める村瀬瑠璃子という看護師だ。

村瀬は同僚や患者達から『瑠璃ちゃん』の愛称で親しまれているらしい。

「宮田さんが入院したら病棟で会えますよ」

岸本はそう言って微笑む。

その微笑みには、婚約者に対する愛情のようなものが滲み出ているように感じた。

だから真子はその『瑠璃ちゃん』に会えるのを楽しみにしていた。

その時、外来の待合室に座っていた真子は看護師に呼ばれた。

「宮田さんどうぞ」

「はい」

真子は母の英子と共に診察室へ入った。

「先生こんにちは。よろしくお願いします」

真子が挨拶をすると、岸本医師は穏やかな笑みを浮かべて言った。

「こんにちは。調子はいかがですか？」

「胸の違和感は相変わらずですが、学校には毎日行けています」

真子は明るく答えたが、横から母の英子が補足した。

「学校から帰るとかなり疲れているみたいです。顔色も悪いですし」

岸本医師は今二人から聞いた事をパソコンへ入力する。

そして入力の手を止めると言った。

「うーんそうですね……今日の検査結果を見たんですが、僕的にはそろそろ手術を考えてもいいのかなと。一応私の空いてい

る日程が三週間後の火曜日なんです。どうですか？　その日に思い切って手術を受けてみませんか？」

「そんなに早くしていただけるのですか？」

母の英子は驚いて岸本に聞いた。

「はい。善は急げってやつですね」

岸本医師はそう言って微笑む。

そこで真子と英子は顔を見合わせる。

「という事は先生、私受験に間に合うんですか？」

「もちろん。それもあるから、早めにどうかなと思ったんです」

「まぁ、良かった！」

「先生！　ありがとうございます」

真子は嬉しさのあまり声を張り上げて言った。

夏のうちに手術を受ければ、余裕で受験には間に合う。

最悪、浪人を覚悟していた真子にとっては朗報だ。

この日程なら秋には学校に復帰して、すぐに受験に向けて動き出せる。

「まああまり心配しないでいきましょう。この手術は僕の最も得意とする手術ですから安心して下さい」

岸本医師はそう言って穏やかに笑った。

病院からの帰り道、二人はファミレスでランチをして帰る事にした。

「でも本当に良かったわ。学校にもすぐ復帰できそうだし受験にも影響がないみたいだし。それに岸本先生ならなんだか安心

ね」

「うん、凄く信頼出来る先生だからやっぱり北海道に来て良かったかも」

真子は嬉しそうに笑う。

しかし母の英子は気づいていた。時折娘が寂しそうな表情を浮かべている事を。

きっと拓の事を考えているのだろう…そう思った。

娘の気持ちを思うと切ないが、今は心を鬼にして娘の治療を最優先にと思っていた。

（今はこの子の命を守る事が先決なのよ…）

英子はそう心に言い聞かせる。

その時真子が、

「お母さん、ドリンクバー行こうよ」

「え？　ああそうね」

二人は椅子から立ち上がると、ドリンクバーへ向かった。

そして手術日の三日前に真子は心臓外科病棟へ入院した。

入院中真子の担当になったのは、岸本医師のフィアンセの『瑠璃ちゃん』だった。

村瀬瑠璃子は背がスラッと高くて美人で愛嬌もある、とても素敵な女性だった。

瑠璃子は北海道に来る前は東京の病院で看護師をしていたようで、真子とは東京の話で盛り上がった。

そして真子の入院初日に、もう既に二人は仲良しになっていた。

四人部屋の他の患者達も、皆優しく楽しい人ばかりだった。

だから真子は退屈することなく賑やかな入院生活を楽しんでいた。