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美桜ちゃんと深谷君がお互いリベンジでまずは友達からスタート▶️ きっとお互いに無いところを補い合えてうまく付き合えそう🥰👍❤️ そして真子ちゃんと美桜ちゃんが本当に素敵な親友💓 お互いを思いやりながらでもちゃんと伝えることは伝える。とても大切な事だね ✨
漸く涙が落ち着いた頃、美桜は握り締めていた深谷のハンカチを見て言った。
「あ、汚しちゃったから今度洗って返すね」
そして最後にもう一度目を拭う。
そこで深谷が言った。
「浅沼さんなんかあった? 会った時から目が腫れて充血していたよね?」
美桜は智彦が気付いていた事にびっくりする。
気付いていたのに今まで何も言わなかったのだ。
(どこまで気遣いの人なんだか…)
美桜は思わず微笑む。
「実は私もね、昨日彼氏に振られたんだ。私より若い女の方がいいんだって」
深谷はかなり驚いていた。すぐに言葉が出ないようだ。
「…そっか……お互い色々あるよね…」
「うん。人生ってなかなか上手くいかないね」
「いや、そんな事はないでしょ? 浅沼さんはちゃんと自分の足で立ってるし…」
「ううん、まだ工房も不安定だしこの先どうなるか? そんな事を言ったら深谷君の方がしっかり頑張ってるじゃない。ちゃんとした所に就職してさ」
「ハハッ、僕は雇われの身だからな。サラリーマンなんてちっちゃい生き物だよ。それに比べたら浅沼さんには夢があるじゃないか」
「そんな事ないよ。それに男の人は安定してしっかりしてる方がいいんじゃない?」
「そうかな?」
「そうよ!」
「うん……ありがとう」
そこで二人の間に微妙な空気が流れる。
深谷は慌ててコーヒーを一口飲むと言った。
「アレだろう?」
「アレ?」
「うん、だから…浅沼を振った彼氏っていうのは大学時代のあの人だろう?」
「そうだよ。二期上の」
「随分長く付き合ったんだね」
「そう。7年間を棒に振っちゃったわ」
美桜が寂しそうに笑うと深谷は言った。
「おそらく彼氏は後悔すると思うよ」
「え?」
「だって7年もの長い月日を一緒に過ごしてきたんだろう? そんなにすぐに忘れられるもんじゃないさ」
「そうかな?」
「そうだよ。それにね、男って失った後に気付く奴多いし」
「そうなの?」
「うん、絶対」
そこでまた二人の間に微妙な空気が流れる。
そして二人は同時に言った。
「「あのっ」」
深谷が慌てて言う。
「あ、お先にどうぞ」
「ううん、深谷君からどうぞ」
「いや、君の方が少し早かったから」
「ううん、深谷君の方が早かったよ」
そこでまた妙な沈黙が訪れる。
しかし今度は深谷がその沈黙を破る。
「今度、ドライブでも行かないか?」
「え?」
「恋が終わった者同士って事で」
すると美桜はフフッと笑ってから言った。
「うん、いいよ、行こう!」
美桜がニッコリ笑って了承したので、深谷はホッとした表情になる。
「で、浅沼さんは何て言おうとしたの?」
「フフッ、今度札幌でご飯でも食べようよって言おうと思ったの」
「なんだ…同じか…」
「そうだね」
そこで二人は見つめ合う。
「今度SNSでメッセージとか送っても大丈夫?」
「あはは、もちろん! そんなのいちいち聞かなくてもいいよ」
「あ、そうか。でも今までは彼氏がいたし……」
「今はいないから大丈夫だよ」
美桜は声を出して笑った。
それからしばらく会話を楽しんだ後、二人は次の日曜日にドライブに行く約束をした。
深谷が岩見沢まで車で迎えに来てくれるらしい。
その後深谷とは商店街で別れた。
一人歩き始めた美桜は、
「捨てる神あれば拾う神あり…か…」
そう呟いてからフフっと笑うと、軽快な足取りでそのまま自宅へ戻って行った。
翌日、真子が工房へ行くと美桜は既に来ていた。
美桜の顔を見るといつもの美桜に戻っていてなんだかニコニコとご機嫌だ。
真子はホッとする。
「あ、真子おはよう」
「おはよう。元気な美桜に戻っていて良かった」
「うん、昨日はありがとう。心配かけてごめんえ。でも私もう大丈夫だから」
「え? もう? 立ち直るの早くない?」
「フフッ! 前の恋を忘れるのには新しい恋をするのが一番なのよ」
「えっ? まさか美桜、もう好きな人が出来たの?」
真子は信じられないといった表情で美桜を見た。
「うーん、まだ友達って感じだけどこの先進展あるかも? こういうのってすっごく久しぶりだからワクワクするわ」
「えーっ? 誰よ相手は?」
「ふふーん、まだ秘密。ある程度気持ちが固まったらちゃんと話すよ」
「う、うん……すっごく気になるけれど教えてくれるまで待つよ。でもその人ってどんな人? それくらいは聞いてもいいでしょう?」
「もちろん! えーっと、一言で言うなら、自分にはないものを持っている人かなぁ?」
その言葉を聞いて、真子は少し考えてから言った。
「あっ、わかった、冷静沈着型だ! 美桜はすぐにパーッと勢いで動いちゃうけれど、その真逆って言ったらそんな感じだよね?」
「ピンポーン! さっすが真子、鋭い!」
「ねぇねぇ、どこで知り合ったの? この町の人?」
「札幌に住んでいる人なんだ」
「へーっそっかぁ…うーん、やっぱり気になるー!」
真子はじれったそうに叫ぶ。
「また進展があったら教えるよ。それよりも真子の方はどんな感じ?」
「うん、今度の日曜日に婚約指輪を買いに行く事になったよ」
「え? って事はいよいよ婚約? マジで? うわーっ、おめでとう真子! なんか嬉しいよ…大学の時から色々聞いていただけに、まさかこんな展開になるなんてね。ちょっとうるうるしちゃう」
美桜はそう言って涙ぐんでいる。
美桜には、大学時代に拓の事は話していた。
遠い北のこの地でもう二度と拓に会う事もないだろうと思っていた真子は、美桜に全てを話す事で拓との事を良い思い出に変えようとしていた。
だから全てを知っている美桜は感無量だ。
「美桜、いろいろとありがとうね」
思わず真子も涙ぐむ。
すると美桜は目尻の涙を拭って言った。
「せっかく運命の再会を果たして結ばれたんだから、今度こそ絶対に離したら駄目だよ。前みたいに自分だけで勝手に判断して行動を起こさない事! 拓さんに言えないような事があれば私に言いなさいよ。私は何が何でも真子の結婚式までサポートするるからね!」
その思いやりに溢れた言葉を聞いて真子の頬に涙が伝う。
「うん、ありがと、美桜…本当にありがとう」
真子は思わず美桜に抱き着く。
そんな真子を美桜は笑顔で抱き締めて背中をトントンと叩いた。