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その頃拓は、体験型ミュージアムのミーティングに参加していた。
今日も前回のメンバーが集まり、最終的な打ち合わせをしていた。
拓の設計の修正はほとんど終わった。あとは着工を待つのみだ。
ミュージアム建築に向けての準備は全て整ったので、
メンバーは皆ホッとした様子で楽しく談笑していた。
「じゃあ今日は着工前の前祝いという事でどうですか? 居酒屋で一杯!」
大手建築会社の村山が言う。
「いいですねぇ…パーッと景気づけに行きましょうか!」
設計士の高部や他のメンバーも乗り気だ。
「じゃあ駅前の居酒屋に午後6時に集合という事で!」
それからメンバーは会議室を後にした。
この日拓は、久しぶりにカフェで昼食をとろうと思っていた。
他のメンバーが役所の食堂へ向かう中、一人出口へと向かう。
その時、小澤有希に呼び止められた。
「長谷川さん、今夜の飲み会には長谷川さんも行きますか?」
「そのつもりです」
「良かった。私も参加しますのでよろしくお願いします」
「はい、ではまた後で」
拓は有希にそう告げると、会釈をして出口へ向かった。
役所を出た拓は歩いてカフェへ向かう。
店に入るとコーヒーとサンドイッチを買ってからテーブル席に腰を下ろした。
そしてすぐに真子にメッセージを送る。
【お疲れ! 美桜ちゃん大丈夫だった?】
するとメッセージはすぐに既読になりすぐに返事が来た。
真子も今はお昼の休憩なのだろう。
【大丈夫だったよ。すっごく元気だった】
【へぇ…意外と立ち直りが早いな…】
【ちょっと色々あったみたい。詳しくはまた帰ったら話すね】
【了解! 俺今日飲み会になっちゃったからご飯いらない】
【承知しました! じゃあ私も美桜と飲みに行っちゃおうかな?】
【たまには羽を伸ばすのもいいんじゃない?】
【ありがとう。じゃあそうするね】
微笑みながら真子の返事に目を通すと、拓はスマホをテーブルの上に置いてサンドイッチを食べ始めた。
その後拓は一度真子のアパートに帰った後、夕方六時に居酒屋へ向かう。
今夜は真子も美桜と飲みに行くと言っていた。
拓が居酒屋へ着くと、ほとんどのメンバーは既に揃っていた。
「皆さん早いですねぇ」
「これの為に必死で仕事を片付けました」
市役所の田中が笑いながら言うと、細田も言った。
「そうそう、こういうのがあると私達仕事早いんですよー」
すると今度は大手建設会社の村山が言う。
「普段は残業手当狙いのノロノロ作業なのに―?」
するとどっと笑いが起きる。
拓が笑いながら席に着いた時、有希が遅れてやって来た。
「遅くなりましたー!」
「おー、紅一点の有希ちゃんいらっしゃーい!」
「お邪魔しまーす」
有希はそう言うと、空いていた拓の真向かいに座った。
そしてメニューを見て生ビールを注文する。
拓と有希のビールが運ばれて来ると、細田が乾杯の音頭を取った。
「えー、ではこれからいよいよ着工へ入る訳ですが、ここからが正念場です。予定通り無事にミュージアムが完成するよう皆様のお力も借りして、是非このプロジェクトを成功させましょう! ではカンパーイ!」
「「「カンパーイ」」」
グラスをカチンと鳴らして皆がビールを口に運ぶ。
そして、男性陣は一斉に、
「「「プハーッ!」」」
と声を上げた後、一斉に拍手をした。
「仕事の後のビールはうまいっすねー!」
「ほんとほんと」
「今日はとことん飲みましょう!」
そこからはざっくばらんな飲み会が始まった。
最初は仕事に関する話題が中心だったが、酔いが回ってくると段々プライベートの話で盛り上がる。
趣味の話、子供の受験の話で盛り上がっていたところへ、大手建設会社の若手の安藤が去年生まれた愛娘の写真を皆に見せ始めた。
「可愛いでしょー? もう娘にメロメロですよー」
安藤は目尻を下げて親バカ丸出しだった。
「どれどれ?」
「おー、なかなかの美人さんだねー」
「本当だ、目がぱっちりで美人!」
「奥さん似ですか?」
「そうだろう? きっと奥さんが美人なんだよな」
安藤は好き放題いじられる。
写真を見せてもらった拓は、その愛らしい女児の笑顔に思わず目を細める。
(俺と真子の子供だったらどんな顔になるのかな?)
ふとそんな思いが浮かんで顔がニヤける。
その表情を見逃さなかった高部がすかさず拓に聞いた。
「長谷川さんはその後彼女さんとはどうなんですかー?」
その瞬間メンバーたちが一斉に拓を見る。
もちろん拓の前に座っている有希も気になっている様子だ。
「はい、先日プロポーズしました」
「ひゃっほー!」
「おめでとーう!」
「やるじゃん長谷川君!」
「覚悟決めたな―」
男性陣は酔った勢いで一斉に拓を冷やかすが、有希はじっと黙っている。
そして「おもしろくない」といった表情でムッとしていた。
そこで安藤が拓に聞いた。
「彼女さんは関東の人?」
「いえ…実はこの町に住んでいるんです」
それを聞いた全員が驚いていた。
「そうだったんだ?」
「へー、それって偶然なの?」
「いえ、彼女がこの町にいるとわかったので来ました」
「えー、長谷川君の設計事務所って確か社内コンペがあったんだよね? で、その結果長谷川君のが選ばれたって聞いたけれど?」
「はい、そうです。彼女に会いたくて死ぬ気で頑張りました」
そこでヒューッと誰かが口笛を吹いた。
「愛の為に頑張ったのかぁ」
「愛しい彼女に会うために仕事を勝ち取ったんだねぇ」
「なんかいいなー、純愛だなー」
「ほんとほんと、なんかそういうのっていいですよねぇ」
「いえ、そんな大それた事じゃないですから」
拓は恥ずかしそうに頭を掻く。
その時、有希が強い口調で言った。
「じゃあこの出張が終わったら遠距離になっちゃうんですね」
「え?」
「だって北海道と神奈川でしょう? 遠距離じゃないですか」
「まあそうだけど…」
「知ってます? 女ってね、距離が離れれば離れるほど不安になる生き物だって。だから遠距離恋愛で結婚まで行くカップルは、50%以下らしいですよ」
有希はすました顔で言う。
そこで慌てて高部が言った。
「有希さん、何も今そんな水を差すような事は言わなくても…」
「あら、現実は知っておいた方がいいでしょう? 皆さんは男性だから女性の気持ちはわからないでしょうけれど、女心って微妙なんですよー」
有希は勝ち誇ったように言った。
「まー確かに……俺学生時代に付き合っていた彼女と遠距離恋愛してたんですけど破局しましたから」
安藤が昔を思い出しながら言った。
「ほらね、やっぱり」
有希はほらみなさいといった顔で言った。
「安藤さんがそうだったとしても、みんながみんな同じって訳じゃないでしょう?」
今まで黙っていた村山が言う。
「じゃあお聞きしますが、この中で遠距離恋愛から結婚に至った人っていますか?」
そこで皆はしーんとする。
「やっぱりいないじゃない」
有希は更に得意気に言った。
その時、市役所職員の細田が言った。
「俺の妹は遠距離恋愛で結婚したよ。それも、北海道と九州で」
「すっげー、沖縄を除けば最長距離じゃないっすかー」
「本当ですね。会いに行く交通費半端ないでしょうねー」
「確かに。お金かかりそう」
その時黙っていた拓が漸く口を開いた。
コメント
2件
やっぱりイヤな女(T_T)
有希うるさいなぁ😡紅一点で3本の指に入る美人って話だけど、こんな調子でマウント取られたら男は引くわー😤 それに真子ちゃんと拓君は8年離れててようやく今くっついたんだからこの先の話は当事者でもない貴方には全く関係ない。 データは数字だけの話。 人と人の繋がりは本人同士にしかわからないんだよ😤💢😡‼️