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ruruha
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#大人ロマンス
瑠璃マリコ
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彼女が手にするシャンパンをまじまじと見つめ、夫は閉じられた扉の前で立ち竦んだまま動けずにいる。
ドクドクと不快な拍動を続ける私の心臓。
この光景は……一体なに?
何が起こっているの?
突然目の前に置かれた、信じがたいこの状況。
後ずさりして再び壁に背中を貼りつけた私は、大きな恐怖心に襲われ身を震わせる。
「……俺たちの祝い? ……何の話だ」
夫は警戒心を露わに、眉を寄せて訝しげな顔をしながら、低い声を這わせた。
「その話は後でゆっくりと。ねえ、私はこの家を訪れた客でしょ? こうしてお祝いの品も持ってきたんだし、そろそろ中に入れてくれませんか?
三人で乾杯しましょうよ。ねっ、亜紀先生っ」
空間を埋め尽くす重々しい空気などものともせず、憑きものがついたような言葉と共に、彼女は私に笑顔を向けた。
「何を言ってるの、あなたは……身の程を弁えず、よくもぬけぬけとそんなことを! この家には、絶対に上がらせない!」
ギリギリと拳を握りしめ、鬼の形相でキッと彼女を睨み付ける。
夫はそんな私を見つめ、何か言いたげな表情を浮かべながら顔を強張らせている。
「浅倉……今すぐ帰れ。お前とは、もう終わったんだ」
声を荒らげる私に痛切な視線を向けていた夫は、やがて私から目を逸らし、低い声を絞り出した。
「終わった? 遼一さん。私とあなたの素敵な未来は、これから始まるのよ」
「……何だと? どういう意味だ」
「ごめんなさい。あなたに報告する前に、亜紀先生に報告しちゃった」
楓はチラリと私に目配せして、まるで私を小馬鹿にするような笑みを顔に貼り付けた。
「前置きはやめろ。どういう意味だと聞いてるんだっ!」
威嚇するような怒鳴り声が響き渡る。
やめて……遼……。
「答えろっ、浅倉!」
遼……
楓ちゃんのお腹の中には、あなたの……。
「私、赤ちゃんができたの。あなたと私の赤ちゃんが」
さらりと言って、彼女は勝ち誇った笑みを浮かべた。
「……赤ちゃん? 俺の子供? まさか……」
愕然とし、途切れ途切れの声を落とす夫。
ああ……。
こんなことになるなんて……。
どうして……どうしてこんなことに……。
どうにもならない絶望感が、怒りを食い尽くす。
これですべてが崩れてしまう……。
私が今まで守り抜いてきたものは、一体何だったのだろう。
こんな無情な結末を迎えるために、苦しんできたんじゃない。
こんな小娘に奪われるために、夫を待つ毎日に耐えてきたわけじゃない。
私は一体、何のためにここに来たのだろう……。
茫然自失となり、言葉を失った私の目に悲しみの涙が浮かぶ。
「……嘘をつくな……そんなはずはない……」
夫は目を大きく見開いたまま、疑心暗鬼に声を漏らす。
「嘘じゃないわ。……これが証拠」
彼女は一度閉じたバッグからそれを引き抜き、夫の前に差し出す。
彼はその一枚のエコー写真を覗き込み、片眉を引き上げた。
「今は妊娠5週目。来週か再来週には赤ちゃんの心拍が確認できるって、産婦人科の先生が言ってた。よく見て、遼一さん。この子が今、私のお腹の中にいるのよ」
明るい声でそう言うと、彼女はお腹に手を当て、愛おしそうに撫で始めた。
「それに、そんなはずはないなんて酷い言い方ね。避妊もせずにセックスしたら子供ができるなんて、今どきの中学生でも知ってるんじゃない?」
差し出された写真を凝視し、おそらく私と同様に、そこに記された彼女の名前を見たのであろう。
見る見るうちに青ざめていく彼の顔。
私と共に絶望の淵へ沈められていく彼の姿を茫然と見つめながら、足の感覚までも失った私の身体が、壁を伝って崩れ落ちる。
「……本当に俺の子供なのか?」
モノクロ写真を見つめたまま落とされた、夫の声。
「なにそれ……当たり前じゃないっ!」
一瞬にして曇る彼女の表情。
「お前みたいな軽々しい女、他にも関係を持つ男がいるんじゃないのか?」
彼は冷ややかにそう言って、彼女の手のひらごと写真を薙ぎ払った。
払われた彼女の手から離れた胎児の写真は、ヒラヒラと宙を舞いながら、冷たいタイルの上に落ちた。
「私の赤ちゃんがっ!」
血相を変え、慌ててそれを拾おうと床に手をつく彼女。
「……出ていけ。二度と来るな」
写真を両手で拾い上げる彼女の頭上に、冷たい声が落とされた。
想像を絶する夫の冷酷さ。
彼の酷薄な声が、私の心に突き刺さる。
もうやめて……。
「……酷い……遼一さん……どうしてこんなことを……私は本気であなたを……」
床にしゃがみ込んだまま彼を見上げる彼女は、目に涙をためて声を震わせる。
「今すぐ出ていけと言ってるだろっ!」
……もう、
「遼、やめてっ!」
「亜紀? ……」
「彼女はあなたを本気で愛してる。
あなただって分かってるでしょ? 分かってて、今まで彼女を抱いたんでしょ? あなただって、本当は彼女のことを……。
どうして目を背けるの? 彼女からも、私からも」
私は唇を噛み、涙の滲む瞳で夫をきつく見つめた。
妻に反抗的な視線を向けられた男は怪訝な顔をし、壁の力を借りて身体を起こしていく私をしげしげと見つめる。
楓が写真を拾う拍子に手から離したシャンパンのボトルは、赤いリボンを下敷きにして、扉の片隅に虚しく転がっている。
彼女は床にしゃがみ込んだまま口を引き結び、息を凝らすように私へ目を向ける。
「何だと? 俺が、お前たちから目を背けてる? ……一体何の話をしている」
夫は口元を歪め、苦々しい言葉を落とす。
「あなたはきっと、人を愛することが怖いのよ。だから本気で人を愛そうとしない。
……あなたが愛してるのは、自分だけ。常に人から求められる自分だけ。
優秀な医者としての自分さえ保っていれば、常に人から求められる人間でいられる。だから、冷酷なほどに野心的で身勝手なのよ」
私の声を聞きながら、眉間に深いしわを刻む彼。
諭すように言葉を連ねる私は、曇りのない目で彼を見つめている。
「何だと? ……この俺が、女から捨てられるのを、人から目を向けられなくなるのを怖がってるとでも言いたいのかっ!」
傷つけられた自尊心。逆上して放った声は、怒りに満ちている。
私はそんな彼に視線を向けたまま、悲痛な思いに目を細めた。
「……そうよ。あなたは、男女間の愛情だけでは安心感が得られない。だから、仕事のパートナーとなる私を伴侶に選んだのよ」
「……違う。そんなんじゃない……」
「そしてあなたは、安住の地となる私……『保険』だけでも満たされない。
だから、男である自分を満たしてくれる相手を求める。男として身を曝し欲情できる、欲情される相手がいないと不安になる」
「亜紀……やめろ」
「……あなたが女として愛情を注ぐのは、私じゃない。あなたが欲しいのは……」
「黙れっ!」
バンッ!!
――私の声を遮った、彼の怒鳴り声と扉を叩く音。
突然響いた攻撃的な音に驚き、私はビクッと肩を縮こまらせた。
コメント
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うわああ…第125話、読み終わったけど心臓バクバクしてる…!!😭💔 楓ちゃんが妊娠報告した瞬間の重すぎる空気、亜紀先生の絶望がひしひし伝わってきて息できなかった…。 それなのに遼一さんの「本当に俺の子か?」って冷たい言葉、そして写真を払い落とす冷酷さ…もう胸が張り裂けそう。 でも亜紀先生が遼一さんの本質をズバズバ言ったシーン、すごく刺さった…「あなたが愛してるのは自分だけ」って核心すぎて鳥肌たったよ…。 次の展開が気になりすぎる…! 柏木先生、この修羅場をどう収めるの…!? 続き待ってます🔥