テラーノベル
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「あたしは、先生を信じてます」
ゆっくりと歩いてきたのは、リンリンだった。
内田凛音。あだ名は「リンリン」。
音楽が大好きで、先生からピアノを習っている。
いつもはおとなしい、真面目なタイプだ。
「うふふ……内田さん、どうぞ」
先生から差し出されたお盆の上から、
リンリンはひとつ、おにぎりを取った。
「先生、あの曲また弾いてほしい」
「だって、先生の音は、あったかいから」
先生の音は優しく、そして暖かい。
リンリンは理恵先生が抱えてる優しさと同じ音の記憶を持ってる。
先生の視線に負けないように、
まっすぐ見つめ返しながら……
その場でおにぎりを口に入れた。
リンリン、泣いている。
「ヒン……ヒン……先生……おいしいです」
先生は、リンリンの頭を、
そっと撫でた。
リンリンは心から理恵先生を信じていた。
「リンリン!! うめぇよな!!」
コマッちゃんが叫んだ。
夜になって、雨がわずかに弱くなった気がする。
みんなの声が、よく聞こえる。
「ぐうぅぅぅぅうううあぁぁぁ!!!」
大蔵省が叫ぶ。
「食うぞ!!! 先生を信じてるから!!」
バクッ……。
翔は思う。
俺が大事にしてる正義感って、必要なのか?
正しい行い? 何の意味がある?
生きるってのは、ただ決断力だけなんだ。
悔いのない人生を送るってのは、
人のせいじゃなく、自分の選んだ道が間違いじゃなかったと……
そういう生き方をすることなんだ。
適度に塩が効いたおにぎりを食べながら、
翔はそう考えていた。
大蔵省の良いところは、完全にプラス思考なところだ。とらわれずに、こういう考え方もあるのかとシフトチェンジして成長していける思考を持つ子。
「せんせーー、あたし! おなかペコペコだぁ!!」
マリンだ。
狭間りん。あだ名は、マリン。天然で明るいけど、空気を読めないときがあって、みんなマリンに振り回されている。
一年前、マリンと僕は飼育係だった。
マリンは昼休みになると、ウサギ小屋に入って、いつもウサギと一緒にご飯を食べてた。
ある日、弁当を忘れて来たマリンに、先生が給食室に行っておにぎりをマリンに作って渡していた。あの時のおにぎり……美味しかった……
「はい、狭間さん……お好きなのをどうぞ」
マリンは少しでも大きそうなおにぎりを選んでいる。
迷ったあげく、一番後ろにあるおにぎりを取った。
「いただきまーーす!!」
バクッ。
マリン。実は最後まで「怖い」「毒」「死ぬ」って言葉の意味をちゃんとは理解していない。いや、脳がしなくて良いと判断させているのか。恐怖を理解できないから、笑ってる。
感情の防御が無のまま笑顔で機能してる子。ある意味でコマッちゃんに似てはいるが、ノーガードっぷりでマリンにかなう子はいない。
あの時のウサギ……結局、
キツネか何かにやられて、死んじゃったなぁ……。
モグ、モグ。
これ、あの時のおにぎりと同じ味だ……
おいしーー……
でもあの時……誰がウサギ小屋の鍵と、
扉を開けたんだろう……
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