あれから私は彼の元を何度も訪れるようになった。とは言っても、病室に入れるのは和葉お姉ちゃんが一緒じゃないといけない。だから、彼の居る病室の窓から見守っている。
倒れた時よりは元気になっているが、やはりそれでも無理がたたったのは見て取れた。彼はきっと無理をしすぎてしまう性格なのだろう。周りの期待に応えたくて、むしろ期待以上のことをしたくて自分を蔑ろにしてしまう。その結果がコレだが……
恐らく彼が自分を蔑ろにしてまで仕事を頑張るのには、なにか理由があるはず。彼自身も自分の体調くらい管理できるし、持病なんかも把握してるはず。私は彼に今何が出来るのだろう…
同時刻とある山中にひっそりと佇む神社があった。そこには《巫女》と呼ばれるものが存在し、この世界の安定を保つ役割が課せられていた。人間社会でありえない現象に襲われた時、それは通常の人間では対処ができない。そこで彼女の出番なのである。彼女の役割はそんなありえない現象の対処だ。その大体が《妖怪》と言われるものや《妖精》のイタズラであったり、ましてや《幽霊》の仕業ってこともある。常人の理解が及ばないものの対処が基本的に彼女の役回りで、それによる金銭のやり取りが彼女の生活を支えているのだ。そんな彼女は長く巫女をやっているおかげか、変に彼女の感はよく当たるのだ。
「………ん?」
「なーんか妙ね……」
「こう……肌がピリつくというか、鳥肌が経つような感覚って言うのかしら?」
「多分近々良くない事が起きるかもしれない」
「こういう時の感はよく当たるから嫌いなのよね」
彼女の言う通りその嫌な予感は的中することになる
嫌な予感を感じた数日後、世間はクリスマスムードになっていた。変わらず彼女は境内の掃除をして、こたつでぬくぬく温まりながら茶とせんべいを嗜む「今日くらいは平和で過ごしたいわよねぇ」
「まぁ、私はお仕事の依頼が来ない時は大体暇だしゆっくりできるから、ありがたいことこの上ないけどもねぇ」
テレビを眺めながらそんな独り言を呟く。
ゆっくりしていると突然縁側の戸が開く。
「おい《幽無》(ユウナ)!何ぬくぬくしてんだ!」
「大慌てで入ってこないでくれる?あと、寒いから早く戸を閉めて」
「んな事どーでもいいんだよ!」
「私にとってはどうでも良くないの!」
「異変だよ異変!」
「はぁ?何を馬鹿なこと言ってるの?」
「お前は気づかないってのか?」
「気づかないも何も異変は起きてないもの」
「ほんとこのズボラ巫女様はよぉ……」
呆れる一人の少女、彼女は巫女である幽無(ユウナ)の友人で異変解決の手助けをしてくれるお節介焼きの魔法使い《魔理》(マリ)
「まぁ、落ち着いて今はゆっくり茶でもすすって」
「それもそうか…それじゃあお言葉に甘えて」
縁側の戸から中に入り、幽無の向かい側に座りコタツに足を入れてぬくぬくする。
そして、急須から入れられた暖かいお茶を受け取り、一口いただく。
「さみぃ体にあったけぇお茶はいいなぁ」
「コタツでぬくぬくしてる時に食べるアイスも格別よねぇ」
「おっ?せんべいあるじゃんひとつくれよ」
「醤油せんべいでもいい?」
「構わないぜ」
「はい」
「センキュー」
「茶をすすってせんべい食ってテレビ見てくつろぐ……………」
「て、そんなことしてる暇じゃねぇって!?」
「うるさいわね。いい?物事は急いてはいけないの。急がば回れって言葉知ってる?急いでる時ほど落ち着いて行動しなさいよ。そんな緊急なものじゃないでしょ…」
せんべいをポリポリ食べながら話すその姿に何故か説得力を感じられてしまったが、呆気に取られずここに来た要件を彼女は話す
「んじゃ今から言うこと聞いて驚くなよ?」
「えぇ。それはもちろんよ」
「今この25日が永遠に続いてる」
「ふーん。よくある事ね……」
「え?今なんて?」
「25日が永遠に続いてる」
「なんでそんなことが分かるのよ!?」
「昨日もこの光景を見なかったか?」
「今見てるテレビ番組も既視感があるだろう?」
「ただの再放送じゃなくて?」
「だとしたら連日やるか?」
「あっ……確かに言われてみればそうね」
「今何故かこの25日が永遠に続く現象に見舞われてる。これは明らかな異変では?」
「確かに異変ではあるわね…」
「しかもこのタイムリープは人によっては気づかない。てか、気づいてる方がおかしいんだけど」
「てことは何?ほとんどの人は違和感なく毎日過ごしてるの?」
「恐らくそうかな。現に私の周りの人にこのこと話したら、案の定バカにされたからな」
「まぁ、あんたの日頃の行いよね」
「うっせ」
「とにかく異変となると流石に私も動かないといけないわね」
「そういう割には頑なにコタツから出たがらないな?」
「まだ、お茶とせんべい残ってるもん」
「うだうだしてねぇで、さっさと調査を始めるぞ」
「ハイハイ……」
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※タイトルの「永世」の意味は永遠と対して変わりません