テラーノベル
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ラッセル達が地下で誓いを分かち合った数時間後。
首相官邸の薄暗い医療室。消毒液の匂いと規則的なモニター音の中、リヴァンの指先がかすかに震えた。やがて、瞼が開き青白い光が宿る。氷のように澄んだその光は、一瞬だけ人間としての魂の残響を思わせた。しかし、瞳の奥に黒い影が走り朱と闇が滲み出す。青白の光は音もなく呑み込まれ赤黒い渦が眼底に広がっていった。
《お前は死を超えた。わが力で生き延び、さらに強くなれ。憎悪を集めよ。それがお前の存在理由だ》
モニターが荒く波打ち、リヴァンの身体に痙攣のような震えが走る。彼は苦悶とも決意ともつかぬ声を押し殺し、ゆっくりと上半身を起こした。
「私は、まだ終わっていない。もっと……強くならねば」
「リヴァン様!」
マラーが駆け寄り支える。その眼差しには畏怖ではなく、ただ深い安堵と揺るぎない忠誠が宿っていた。
リヴァンは答えず、ただ前を見据えていた。
「ギル・グラギラスは失敗に終わりました。しかし、戦闘データはすべて収集済みです」
「……よろしい。それで十分だ」
低く呟いた瞬間、モニターが不規則に波打った。
天井の蛍光灯が、かすかに明滅する。
赤黒い光が室内を染め、リヴァンの瞳の奥で妖しく脈動した。
彼は窓の外へと視線を這わせる。
エルフ・バリアに照らされた王都リュカ街の灯が、夜空に散る宝石のように瞬いていた。
「古い秩序は滅びる」
赤黒い瞳が、静かに輝く。
「その先に、新しい世界が生まれる」
薄暗い医療室に、不気味な余韻だけが残った。
――同じ頃。
王立科学アカデミー研究所、特別研究区
薄暗い研究室に、三人の男が立っていた。ラマズドは操作端末を閉じると、二人へ視線を向けた。
「マルヴィン。カリム」
「はい」 二人が同時に答える。
「これより、お前たちには新たな研究を命じる」
ラマズドの背後に、赤黒い眼を持つリヴァンの映像が浮かび上がった。
「リヴァン様の“赤黒い眼”――その暴走を制御する方法を更に探れ」
マルヴィンの表情が、わずかに強張った。
カリムも、映像から目を逸らさない。
「赤黒い眼の制御……ですか」
「そうだ」 ラマズドは満足げに頷いた。
「感情、脳波、エルフエナジー。すべてを解析し、完全なる制御系を完成させるのだ」
カリムの拳が、ゆっくりと握り締められた。
「しかし、先ほどの実験では……」
カリムは思わず口を開いた。だが、マルヴィンが横目でカリムを見る。
その眼差しには、今は言うな。そう告げるような、かすかな制止があった。
カリムは言葉を飲み込んだ。
「何もございません……失礼しました」
ラマズドは二人を見つめ、口角を上げる。
「犠牲を恐れるな。失敗は進化の糧だ」
「…………」
二人は答えなかった。
「返事は?」
「……承知しました」
マルヴィンが頭を下げる。
続いてカリムも、ゆっくりと頭を下げた。
ラマズドが満足げに頷き、研究室を出ていった。
カリムはしばらく俯いたままだった。
「……マルヴィン」
「分かっている」
「俺たちは……このままラマズドに利用され続けるのか?」
マルヴィンは答えなかった。
ただ、閉ざされた扉を見つめていた。やがて、マルヴィンは小さな拳を作った。
「……今は、従うしかない」 その声には、かすかな震えがあった。
夜更けのリュカ街。
久しぶりに戻ったスメラは自宅のリビングに灯りがともると、そこは埃に覆われ、時の止まったままの静けさに包まれていた。壁にかけられた一枚の写真が、淡いランプの光に照らされる。
そこには、かつて共に国の未来を語り合った頃の自分と、リヴァンの姿があった。若く、真っ直ぐで、まだ歪みを知らぬ眼差し。その隣に立つ自分の笑顔もまた、あの頃の希望を映していた。
スメラは額縁にそっと指を触れ、長く息を吐く。
「……リヴァン。あの頃のあなたを、私は忘れないから」
窓の外では、オーロラのように揺らめくエルフ・バリアが夜空を染め、その向こうで星々が静かに瞬いていた。
スメラは目を閉じ胸に手を当てた。涙ではなく、固い決意が静かに宿っていく。
やがて瞳を開きその光を見つめながら小さく頷く。
「必ずあなたを救うから、たとえ、希望の光が消えたとしても……」
「ラッセル、カーン、そして、私で……」
誓いを聞き届けるように、夜空をひとすじの光が横切った。
壁に掛けられた鳩時計が、オルゴールの音色とともに静かに時を告げる。
止まっていた時間が、再び動き始める。
スメラはゆっくりと写真から手を離し、窓の外を見た。
夜空には、エルフ・バリアの光が揺れていた。
窓の外で、王都の灯が瞬く。
その光は、まだ誰も知らない未来を静かに照らしていた。
ばたっちゅ
20,092
コメント
1件
うわあ第32話…!!!リヴァン復活のシーン、めっちゃ不気味でゾクゾクしたよ😭💦 赤黒い瞳に呑まれる感じとか、もう完全にラスボス感ヤバい…。でも個人的にはマルヴィンとカリムがラマズドに従わされてるところがすごく胸に刺さった…「今は、従うしかない」の震え、わかるよその気持ち…。ラストのスメラの誓いも静かでエモすぎて泣ける。。ラッセル達との絆、絶対活かしてほしいな…!!!!次話も楽しみにしてるよ🌟