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白く冷たいものが触れた。ついこの前までの気温とは姿を変え、世間には冬が到来している。
もうこんな季節か。と心の中で綴る。楽観的に移ろっていく日々に置いて行かれてしまいそうだ。
……本当は、既に置いて行かれているのだけど。
アルビノという言葉を聞いたことがある。初めてそれを見たとき、「奇麗だ」と思った。
彼女は穏やかな人だった。誰よりも落ち着いていて、誰よりも優しかった。
雪の降る日、彼女はまるで同士を想うかのような表情を見せた。自分が長くないことなんて分かっていたのだろう。
冬も暮れ暖かい風が流れゆく頃、彼女がいた病室は空になっていた。シーツを替えて、次の人への準備をする。窓から外を見ると、もうすっかり白銀は融解していた。
帰路を歩くと、白の結晶が肌に触れた。辺りにはふわふわと雪が落ちている。
目線を地面に下げて歩く。結晶から目をそらす。
……いくら待っても、彼女は降ってこないし。