テラーノベル
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なんて幸せな夢……。
「好きなんだ、すごく」
誕生日を凱人さんと過ごせただけでなく、素敵なプレゼントも貰えて、絶対罰が当たるんだろうなと思ったら、凱人さんに好きだと言ってもらえる夢まで見れた。
「キスは嫌じゃなかったんでしょう?」
「えっ!?」
嫌? 凱人さんとのキスが!?
反射的に「あ、はい」と言った後に「いえっ――」と付け足したのは、キスされて大喜びしているようで恥ずかしくなったから。
けれど、何を言おうとしたわけでもないその続きは、凱人さんの言葉に遮られた。
「――本当に少しも好きじゃなかったら、嫌だったはずだよね?」
少しどころか、すごく好きです!
心の中では拳を作って力強くそう言ったものの、口に出すのはいくら夢でも恥ずかしい。
「それは――」と言いかけて、彼にじっと見つめられていることに、改めて恥ずかしくなった。
夢なんだから、素直になってもいーのでは!?
いや、夢とはいえ、凱人さんにこれ以上の失礼はダメでしょ。
つい俯き、右手で左手を強く握る。
夢なのに、痛いな……。
すると、凱人さんの大きな手が私の右手に触れた。
私は右手の力を抜いて、握っていた左手から手を離す。
するとその手を、今度は凱人さんに握られた。
唇だけでなく、手の感触までやけにリアル……。
「もう一度してもいい?」
「はいっ!?」
「もう一度、キスしていい?」
凱人さんの顔が近づく。
彼の唇から目を離せない。
そして唐突に目が覚めた。
いや、とうに目が覚めていたのだから、正しくは夢心地から醒めたというべきか。
「ま、待って凱人さ――」
「――好きだよ、るりちゃん」
ちょうど二十九年の人生で、自分史上最も素敵な男性に好きだと言われていることに、現実感がないのに、確かに現実だと理解している矛盾。
そう、混乱しているのだ。
けれど、凱人さんは混乱して逃げ腰の私の腰を抱く。
「好きだよ」
待って待って!
腰! 肉! 掴まれちゃうっ!
更に腰を引くも、彼が立てていた膝を伸ばして私のお尻の後ろで足を交差させたから、逃げられない。
ほ、本気なの!?
わかっている。
凱人さんは私をバカにしたり、揶揄ったりするような人じゃない。
じゃあ、本当に――?
そんなことをぐるぐる考えているうちに、唇にふにゃりと柔らかな感触。
その瞬間、目を閉じた。
凱人さんの温かい唇が僅かに開き、私の下唇を食む。
彼氏がいたことはあって、ひと通りの経験もある。
が、そんな経験値など無意味。
食まれた下唇に生温かくてぬるりとした何かが触れ、私は目を閉じ続けることすらできなくなった。
「~~~っ!」
わかっている。
何度も言うが、ないに等しくても経験はある。
私の唇に触れているのは相棒で極上イケメンの舌で、これは俗に言うディープキスというもの、の前触れ。
わかってるけど――っ!
私は唇を閉ざした。
ピザッ! 食べたし!!
そう。
私はほんの数分前にピザを食べた。
つまり、ソースやチーズの味がする。
匂いもするだろう。
絶対、臭い……っ!
私はわずかほどもそれを彼に感じてほしくなくて、呼吸を止めた。
私もサラダを食べておけば良かった!
もう、遅い。
そして、限界。
私はジタバタしながら、凱人さんの肩を叩いた。
「るりちゃん?」
彼の唇が離れた瞬間、下を向いて酸素を取り込む。
「はぁ~っ、は~ぁっ」
「ちょ、どうしたの?」
「は~、はぁ~っ」
全力疾走した後のように、私は肩を上下させて深呼吸する。
「るりちゃん? もしかして、息してなかった?」
「ごめ――なさ――っ」
「え? 初めて?」
ブンブンと首を振る。
「そ……だよね。彼氏いたんだもんね」
深呼吸を繰り返しながら顔を上げると、凱人さんが心配そうに、悲しそうに私を見ていた。
「ごめんなさい。び、びっくり……しちゃって……」
「ううん。俺こそ、ごめん。止められなくて……」
急に気まずい空気が漂う。
肩を落とす彼に、ゴールデンレトリーバーのような金色でふさふさの耳と尻尾が見える。
どちらも元気なさげに垂れている。
「嫌……だった?」
「そんなっ! 嫌だなんて――っ」
「……」
嫌じゃなかった。それどころか、嬉しかった。
だけど……―――――。
「あの……」
「うん?」
「好きって――」
『本当ですか?』と聞こうとして、ハッとした。
そして、パッと俯いた。
聞いて、どうするの?!
「――本当だよ」
「え?」
忙しなく、今度は顔を上げる。
凱人さんが少し照れくさそうに、ぎこちなく微笑む。
「本当に好きなんだ、るりちゃんが」
ピクピクッと彼の口角が動き、同時に素早く何度も瞬きしたのを見て、緊張しているのではと感じた。
「付き合って……ほしい」
「……」
「俺の彼女になって……ください」
コメント
2件
更新嬉しいです✨️ありがとうございます! きゅんきゅんしながら、読ませていただきました(*ฅ́˘ฅ̀*)♡

久しぶりの更新ありがとうございます