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そんな時、先ほどの野崎幸夫が華子に愛人契約を持ち込んで来た。


野崎はクラブの常連客で、いつも華子を指名してくれた。

年齢は華子よりもだいぶ上で、外見もパッとしない男だったが金回りは凄くいい。

クラブ内の噂では、野崎は親から引き継いだ会社を複数経営し、

クラブの常連客の中ではかなり上位に入る上客だと言われていた。


野崎は華子に月50万の手当てを約束し、都内に所有している高級マンションに無償で使っていいと言ってくれた。

切羽詰まり喉から手が出るほど金が欲しかった華子は、その申し出を受ける事にする。


割り切って愛人をしつつ、陰でハイスペックな結婚相手を探せばいい。

愛人になれば、あの恐ろしい夜の世界からは抜け出せるのだ。


そんな軽い気持ちで野崎の愛人になる事を決めたが、

いざ愛人になると様々な憂鬱が華子を襲うようになる。


『愛人=自分の気分を常に良くする存在』と思っている野崎は、

華子に対し『常に俺の前では愛想良くしろ、俺を敬え』と言う。


華子のこれまでの交際経験では、常に華子が優位に立っていた。

だから、自分から男性のご機嫌取りをするなんてした事がない。


華子がそれまで付き合って来た男性達は、皆それなりに爽やか系のイケメンばかりだ。

外見に全く魅力のない野崎に対し、敬えと言ってもかなり無理がある。


表面だけで無理して敬うふりをしても、元々感情が顔に出やすい華子の演技はすぐにバレた。

そしてそこから野崎の説教が延々と始まるのも苦痛だ。


そして何よりも嫌だったのが、野崎とのセックスだ。


野崎とのセックスは、苦痛以外のなにものでもない。

まず、ビジュアル的に相当無理がある。

目を瞑っていても、野崎の顔を札束だと思うようにしても限界がある。

何よりも、野崎の丸みを帯びた汗ばんだ手で触れられたり、

荒い息を耳元に吹きかけられるだけで寒気が走る。


野崎は、セックスの最中も常に上位に立ちたがる。

女は自分に尽くして当然と思っているので、華子に様々な要求を押し付けて来る。


それは、時にコスプレであったり時にアダルトビデオの真似事を強要したりと、

かなりマニアックで下品な要求だ。


まだノーマルな範囲内なら、華子もなんとか堪えられただろう。

しかし野崎の要求は次第にエスカレートしていく。


野崎はある日、セーラー服を持って来て華子に着ろと命じた。


(このオヤジどうかしてるわ!)


そう思いながらも、華子は50万の為になんとか我慢して言う通りにした。

しかし、それが更に野崎をエスカレートさせる事になるとは華子も思いもしなかった。


野崎は今日、なんと小学生が着るような体操着とブルマーを用意して来たのだ。

華子は野崎とホテルへ入ってからそれを知った。


(もう無理!)


そう思い華子はホテルを飛び出した。

そして、追いかけて来た野崎に捕まり、急遽話をする為に二人で陸のバーへ立ち寄ったのだった。


華子の育った家庭環境は複雑だった。


小さい頃、父親が突然華子と母親を捨てて家を出て行った。

その後、母は華子を連れて実家へ帰る。


母・弘子の実家は、いくつもの料亭を経営する会社を運営しかなり裕福だったが、

祖父母はかなり厳格な人だった。

しかし華子から見ると、祖父母は母・弘子には甘いように感じた。


母・弘子は一緒に暮らしてはいたが、祖父母の会社の役員に名を連ねており、

たまに事務所に顔を出すだけでそこから給料を得ていた。

弘子はその金で、何かと理由をつけては出歩いていた。


華子の世話は、全て祖母やお手伝いさんに任せて弘子はいつも遊び歩いている。

代わりに華子の躾けは、全て厳しい祖母がしていた。


これは華子が大人になって気づいた事だが、

母・弘子は常に誰かと恋愛をしていないと駄目になってしまう人だった。

いわゆる恋愛依存症というものだろうか?


とにかく弘子の意識は、娘の華子より異性へと向いていた。

華子は子供心に、そんな母の様子を感じ取っていた。


その時、華子の頭の中には、

当時、友達や友達の母親から言われた言葉がこだまする。


『華子ちゃん、パパいないの? それは可哀想ね~!』

『華子ちゃんの父親参観には一体誰が来るの?』

『昨日華子ちゃんのお母さんが男の人と一緒にいるところを見たんだけれど、もしかして、あの人新しいお父さん?』

『華子ちゃんのママって再婚するの? 実はね、昨日駅前で華子ちゃんのママが男の人と手を繋いでいるのを、おばちゃん見た

のよ!』


その時、華子は小学生時代に戻っていた。


『ママが手を繋いでいた男の人って誰なの?』

『ママは誰と旅行に行っているの?』

『ママは華子の事が好きじゃないの?』

『ママは華子の事をいらないって思っているの?』


幼い頃何度も何度も自分に問いかけた言葉が、

ぐるぐると頭の中を駆け巡る。


そして、さらに重森に言われた言葉が浮かんだ。

この作品はいかがでしたか?

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