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#和風ファンタジー
#異能
#和風ファンタジー
話者:山内トメ(女性・84歳・農家の主婦)
場所:童ノ宮神社近辺の遊歩道
日時:2025/6/30 5:30~
(遠方から響く鶏の鬨の声)
(カラン、コロンと言う下駄の鳴る音)
(ハァ、ハァというキミカの荒い息)
「あらぁ~。お稚児様の白をお召しだから、どなたかと思えば――、お早うございます、オツカレサマ。今日は御祭祀の最中ですか? いつもこの土地のために本当にありがとうございます」
(ボソボソと不明瞭なキミカの音声)
「ああ。ごめんなさいね。オツカレサマだなんて、古い呼び方をしてしまって。現代ではそんな呼び方はしない、ちゃんと本名で呼んで差し上げろって息子にも言われてたのに、つい。ええっと……」
(ボソボソと不明瞭なキミカの音声)
「そうそう! キミカちゃん、だった! ……もう、婆ちゃん歳だから物忘れが酷いのよ。許してやってねェ」
(数秒間の沈黙)
「それで……キミカちゃんは、お稚児様からどんなお勤めを頂いたの? 遠目からではずいぶん辛そうな歩き方だったけど、大丈夫?」
(パタパタというトメの足音)
「あら嫌だ! こ、これ――、おぶさりお化けじゃないの? おんぶして歩いていたということは、キミカちゃんも捕まっちゃったの?」
(ボソボソと不明瞭なキミカの音声)
「うん、婆ちゃんもね。今のキミカちゃんと同じ年頃の時、捕まったのよ。オブサリテェ、オブサリテェって……。そりゃ気持ちの悪い声でおぶさって来てね。しばらく離れてくれなくて。本当に生きた心地がしなかったのよ」
(ボソボソと不明瞭なキミカの音声)
「そうねぇ……。婆ちゃんの時は大きなツボがおぶさりお化けの正体だったわ。童ノ宮さんの先々代の宮司様がお稚児様のお力を借りて祓ってくださったの」
(数秒間の沈黙)
「じゃあ、キミカちゃんは今、百日間のおんぶ参りの最中なのね? ……婆ちゃんもそうだったわ。毎日、お日さまが昇るまで家と童ノ宮さんの間を何度も往復してねぇ。あんな大変な思いをしたのは生まれて初めてだったのよね」
(数秒間の沈黙)
「それと……これはその時の宮司様が教えてくれたことなんだけど。おぶさりお化けは年頃の女の子にだけ憑くお化けなんだって。……よく分からないけれど、やらしいお化けなのかもねぇ」
(数秒間の沈黙)
「キミカちゃんは今日で何日目? ……そう。まだまだ残っているのね。大変だとは思うけど、挫けずに頑張ってね。大丈夫。キミカちゃんはお稚児様のご眷属なんだから。万一の時はきっと守ってくださるから」
(ボソボソと不明瞭なキミカの音声)
「まあ、ダメよ。……お稚児様には――、神様には神様のお考えがあるんだから。塚森家の子がそんな罰当たりなことを言ってはダメ」
(数秒間の沈黙)
「じゃあね。婆ちゃんはもう行くね。……キミカちゃんもお勤め、挫けずに最後まで果たしてね」
(パタパタと音を立てて遠ざかって行くトメの足音)
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