テラーノベル
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話者:塚森レイジ(男性・46歳・童ノ宮宮司、塚森キミカの養父、朱雀機関・嘱託D級捜査員)
場所:童ノ宮神社
境内 日時:2025/7/21 7:35~
(緩やかな風に揺られ、木々のざわめく音と小鳥が囀る声)
(カラン、コロンと言う下駄の鳴る音)
(ドサッと身体が倒れる音がして、キミカが苦しげに呻く声)
「お、おおっ……! キミカ、帰って来たか……!」
(ダダッと慌てたように駆け寄るレイジの足音)
「体調不良が続く中、大変だったね……! 本当によく耐えた。やっぱり、キミカはお父さんが思った通り、すごく強い子だよ。本当にエライ……!」
(グスグスとレイジが鼻をすする音)
(ボソボソと不明瞭なキミカの音声)
「あ、ああ……。そうだね、お父さんが泣いてる場合じゃなかった……。でもこれで百日のおんぶ参りも終わったわけだし、これで――」
(トサッとヌイグルミが地面に落ちる音)
(数秒間の沈黙)
(ボソボソと不明瞭なキミカの音声)
「いや……。ただのヌイグルミに戻ったわけじゃないね。……キミカが百日の間、一日も欠かさずおんぶし続けてあげたから満足し、鎮まってくれたんだよ。……できるだけそれが長く続いてくれるといいんだが」
(ボソボソと不明瞭なキミカの音声)
「うん。……この子はね、先代の宮司がある氏子さんからお預かりして、宝物殿で保管していたものなんだ。キミカに隠し事をしても意味がないからはっきり言うけど――、その氏子さんの亡くなった息子さんが遺したものなんだ。まだ赤ちゃんだったそうだ」
(数秒間の沈黙)
(ボソボソと不明瞭なキミカの音声)
「まだ甘えたい盛りの赤ん坊の魂が宿ったのか、持ち主を失い遊んでくれる相手がいなくなり、寂しさを覚えたヌイグルミが怪異となったのか……。神様じゃないお父さんにはわからないけれど――、この子がキミカに掴まったのは偶然じゃない。……キミカが優しくて、おんぶしてくれると思ったからだ」
(数秒間の沈黙)
「……じゃあ、そろそろ祈祷所に移動しようか。キミカもその子もお祓いをしておいた方が後々、安心だからね。……立てるかい?」
(数秒間の沈黙)
「おっと、危ない……! い、いや、大丈夫……。気にしなくていいよ。キミカは三か月以上、一人でこの子の重みを全部背負ってたんだ。急にいなくなって態勢を取るバランスが崩れただけだ。しばらく時間が経てば慣れてくるはずだよ……」
(数秒間の沈黙)
(シクシクと押し殺した声ですすり泣き始めるキミカ)
「……キミカ? そうか、あの子の重さが急に感じられなくなって悲しいんだね? ……でもね、あの子の重みは本来ならこの世にあってはいいものじゃない。いつまでも背負い続けたら、キミカの方が参ってしまう。だからあの子も離れてくれたんだよ?」
(すすり泣き続けるキミカの声)
「……それにキミカだっていつかは、キミカが背負うべき存在といつかは出会える。絶対だ。それまではお父さんや塚森家のみんながついているからね。……もちろん、お稚児の神様も」
(次第に息を整え、泣き止むキミカ)
(数秒間の沈黙)
「……うん。少しは落ち着けたかな。……取りあえず、今回のことお父さんと一緒に神様に報告と感謝を捧げておこうか。軽く目を閉じて……。ゆっくり深呼吸をして……」
(数秒間の沈黙)
(レイジとキミカ、二人で声をそろえ真言を詠唱)
オン アロマヤ テング スマンキ ソワカ。
オン ヒラヒラ ケン ヒラケンノウ ソワカ。
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