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有莉澄さんから届いたメッセージを何度も読み返していた。
──前みたいに話せたらいいなって思ってました。
──嬉しいです。
その言葉は、
ただの社交辞令ではなかった。
画面越しでも分かる。
有莉澄さんの言葉には、
“距離を戻したい”という
小さな、でも確かな温度があった。
スマホを伏せ、深く息をついた。
(……あの頃とは違うんだよな)
SNSで偶然救われた絵。
DMで交わした短い会話。
距離ができた時間。
そしてコンテストで再び出会った世界。
全部を知ったうえで、
有莉澄さんは“嬉しい”と言ってくれた。
その事実が、胸の奥で静かに灯り続けていた。
立ち上がり、部屋の窓を少しだけ開けた。
夜の空気が流れ込む。
机の上の白い花が、風に触れたように揺れる。
冷たくて、
でもどこか澄んでいて、
胸の奥の熱を少しだけ落ち着かせてくれる。
(……もう一度、ちゃんと話したい)
その思いは、
言葉になる前から
ずっと胸の奥にあった。
でも、“後輩”としてではない。
“審査員と応募者”としてでもない。
ただ、有莉澄さんの世界に救われたひとりの人間として。
スマホを手に取り、ゆっくりと画面を開いた。
指先が、メッセージ入力欄の上で止まる。
何を送ればいいのか、まだ分からない。
でも、送らなければ何も始まらない。
小さく息を吸い、ひとつだけ言葉を打ち込んだ。
『今度、少し話せる時間ある?』
送信。
その一行は、“前みたいに話せたら”という願いではなく、
今の距離から踏み出した僕自身の最初の一歩だった。