テラーノベル
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厳つい軍人の腕に抱かれて寝るなんて到底できるわけがないと思ったはずなのに、ぐっすりと眠ってしまった。
”無防備かっ”とツッコミたくなるくらい、がっつり眠ったベルは、翌朝、ベッドの上で寝そべったまま自分自身に呆れ果てていた。
部屋は薄暗いが、窓のカーテンの隙間から青白い夜明けの光が入ってきている。時刻はまだ早朝のようだ。
でもベルの眠気はすっかり消え去っていた。目の前に、レンブラントが居たからだ。
「おはよう……といっても、まだ早すぎるがな」
ベッドのすぐ横に椅子を置いてベルを見守っていたレンブラントは、窓に目を向けながらそう言った。
まるで昨日も、一昨日も、ずっとそうしてきたと思えるほど、彼はとても自然にそこにいた。
「人の寝顔を見ながらニヤニヤしていたんですか。変態もここに極まれりですね。……おはようございます、ロリコン軍人さん」
寝起きとは思えないほど滑らかに毒を吐いたベルに、レンブラントは視線を戻して目を細めた。
「良かった。安心した」
「は?」
「いつも通りのあんたで、安心したってことだ」
「……」
(なんだそれ)
ベルは大人の対応をしたレンブラントを苦々しい気持ちで睨みつける。
しかしレンブラントにとったら安心材料のようで、そぉっと手を伸ばしてベルの髪を撫でる。
すぐさまベルは、顔をしかめた。
「……あのう、変態軍人さん」
「変態はさすがにやめろ。で、なんだ?」
「大変申し上げにくいのですが……」
「だから、なんだ?」
「あなたが触っているそこ、昨日、クズト……いえ、クルトお兄さまに引っ張られたところで、痛いんですけど……」
「馬鹿っ、それを早く言え!」
ぎょっとした顔をして、レンブラントは慌ててベルの髪から手を離した。それから自分の手をまじまじと見つめる。
「あんた……痛いのか?」
「ええ。あなたの手が動く度に頭皮がヒリヒリして、得も言われぬ不快感が込み上げてきました」
「そうか。それは悪かったな。で、本当に痛いのか?」
「痛いですよ。ものすごく」
「本当か?」
「しつこいですね。痛いですよ。あと、せっかちでしつこいのは究極に面倒くさい人種だということをご理解ください」
「……ベル、口の中も切っているんだから、無理して喋らなくて良い」
「なら、こんなくだらないことを喋らせないでくださいよ」
「確かにそうだな。すまない」
ベルはむくりと起き上がって、さっきよりも強く睨んだ。
「それにしても、痛いと言って喜ぶなんて、とんだドS軍人なんですね」
「それも、すまない。あと、俺は嗜虐趣味はない」
「……今、そんなこと言っても信憑性ゼロです。嘘つき変態軍人さん」
「だから変態はやめろ」
苦い顔をしてそう言ったレンブラントだけれど、すぐに顔中をくしゃくしゃにして笑った。良かったと噛み締めるように呟きながら。
(……そこまで喜ばなくっても)
破顔したレンブラントの顔が眩しくて見ていられなくて、ベルは俯いてしまう。
向かい合ってしまうとつい憎まれ口を叩いてしまうから。そして、レンブラントがなぜそこまで喜んでいるのか、何となく気付いているから。
モジモジとシーツをいじりながらチラッとレンブラントを見れば、彼はなせか厳しい表情を浮かべていた。
「あ、あの……」
「ベル、動けそうか?」
「ええ、まぁ」
唐突な質問にベルが曖昧に答えれば、レンブラントは声を潜めてこれからの予定を伝えた。
ベルはその間一度も口を挟まず、最後は黙って頷いた。
「……じゃあ、俺は廊下にいるから準備が終わったら声を掛けてくれ」
「はい」
ベルがベッドから降りて、言われた通りに動き始めるのを確認したレンブラントは、ドアノブに手を掛ける。
けれど、ここでベルは彼を引き留めた。
「……レンブラントさん、あのですね……手当ありがとうございました」
「ご丁寧に、どうも」
「だから……えっと……だから……」
「ん?どうした」
怪訝な顔をするレンブラントから目を逸らしてベルは早口に言い捨てた。
「お礼に、これから私のことをベルって呼んでも良いですよ」
……。
……。
……。
時間にしてたっぷり一分。
なんの返答もなく、微動だにもしないレンブラントに不安を感じたベルが視線をそこに向ければ、口元に手を当て俯くロリコン軍人がいた。
「あんたは……俺を翻弄するのが上手い」
「はぁ?」
若干引き気味にベルが首を傾げれば、レンブラントは「じゃあ、遠慮なくっ」と言ってまるで逃げるように部屋を出て行った。
慌てて扉を開ける彼の耳は、ほんのりと赤かった。
コメント
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いやあ、もう冒頭からニヤニヤが止まりませんでした。ベルが「無防備かっ」と自分にツッコむところ、レンブラントが「安心した」って何度も言いながら髪を撫でるやりとり、全部が二人らしくて最高でした。「痛い」連呼に「本当か?」ってしつこく返すレンブラントの必死さも可愛いし、最後の「ベルって呼んでも良いですよ」からの耳が赤くなる展開、完璧です。ロリコン呼ばわりされても笑顔を崩さない彼が、ベルからの一歩に照れて逃げるギャップがたまらなかったです。続きが待ち遠しい!
日暮ミミ♪
542
臣桜
48,719
鷹槻れん

1,179
#ハッピーエンド
れもん データ飛んだ人
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